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◇
翌朝、苦しそうにもがく相川の声で目が覚めた。
「本城さんっ、起きてください、ちょっとっ」
「んん……何」
「何じゃないですよっ、放してください、本城さん!」
「ん? ……ああ、お前、そんなとこで何してんだ」
ふと腕の中を見ると、相川が顔を真っ赤にして暴れていた。
「はぁっ? こっちのセリフですよっ、もうっ」
ごそごそと腕の中から抜け出した相川が、慌てたように薫から距離を取る。その、股間に目がいった。何故か、臨戦態勢になっている。
「お前……たまってんのか。シャワー使っていいぞ」
「!! □%●△$¥※!!」
相川は何か叫びながら、バスルームに駆け込んだ。
「……朝から騒々しい奴だな」
薫が大きく伸びをすると、枕元のスマートフォンが着信を知らせた。見ると、姉からだ。
「はい、もしもし」
『ああ、薫? もう、昨日何回も掛けたのに、何で出ないのよ』
「昨日は仕事だったんだよ。何?」
『何、じゃないでしょ! あんたが昨日変なこと言うから、心配してるんじゃない』
「変なこと?」
『そうよ、弟は元気か、なんて……あんたに弟なんか、いないじゃない!』
「ああ……うん。ごめん」
そうだ、弟なんて、いない。姉と2人姉弟だ。
『お母さん、もう心配しちゃって。今朝なんて福美さんにお百度踏みに行こうとするの、必死で止めたんだからね!』
福美神社は、昔から本城家がお世話になっている近所の神社だ。子供たちの受験など事あるごとにお百度参りをしてきた母は、近年足腰が弱ってきている。
「ああ、ごめんって。あれは、その……ソラのこと、聞いたんだよ」
『え? ソラって、あんた……思い出したの? ソラのこと』
「うん……昨日夢を見て、それでちょっとごっちゃになっちゃって……子供の頃、ずっと一緒だったなって」
電話の向こうで、姉の小さなため息が聞こえた。
『そうよ。あんた、ずっと一緒に兄弟みたいに育ったんだから。でも、どっちかって言うと弟はあんたの方よ、あんたが生まれる前からソラはうちにいたんだから』
「うん」
『あんた、やっぱり今年は帰って来なさい。ソラのこと思い出したんなら、見せたいものもあるから』
「うん……帰るよ」
翌朝、苦しそうにもがく相川の声で目が覚めた。
「本城さんっ、起きてください、ちょっとっ」
「んん……何」
「何じゃないですよっ、放してください、本城さん!」
「ん? ……ああ、お前、そんなとこで何してんだ」
ふと腕の中を見ると、相川が顔を真っ赤にして暴れていた。
「はぁっ? こっちのセリフですよっ、もうっ」
ごそごそと腕の中から抜け出した相川が、慌てたように薫から距離を取る。その、股間に目がいった。何故か、臨戦態勢になっている。
「お前……たまってんのか。シャワー使っていいぞ」
「!! □%●△$¥※!!」
相川は何か叫びながら、バスルームに駆け込んだ。
「……朝から騒々しい奴だな」
薫が大きく伸びをすると、枕元のスマートフォンが着信を知らせた。見ると、姉からだ。
「はい、もしもし」
『ああ、薫? もう、昨日何回も掛けたのに、何で出ないのよ』
「昨日は仕事だったんだよ。何?」
『何、じゃないでしょ! あんたが昨日変なこと言うから、心配してるんじゃない』
「変なこと?」
『そうよ、弟は元気か、なんて……あんたに弟なんか、いないじゃない!』
「ああ……うん。ごめん」
そうだ、弟なんて、いない。姉と2人姉弟だ。
『お母さん、もう心配しちゃって。今朝なんて福美さんにお百度踏みに行こうとするの、必死で止めたんだからね!』
福美神社は、昔から本城家がお世話になっている近所の神社だ。子供たちの受験など事あるごとにお百度参りをしてきた母は、近年足腰が弱ってきている。
「ああ、ごめんって。あれは、その……ソラのこと、聞いたんだよ」
『え? ソラって、あんた……思い出したの? ソラのこと』
「うん……昨日夢を見て、それでちょっとごっちゃになっちゃって……子供の頃、ずっと一緒だったなって」
電話の向こうで、姉の小さなため息が聞こえた。
『そうよ。あんた、ずっと一緒に兄弟みたいに育ったんだから。でも、どっちかって言うと弟はあんたの方よ、あんたが生まれる前からソラはうちにいたんだから』
「うん」
『あんた、やっぱり今年は帰って来なさい。ソラのこと思い出したんなら、見せたいものもあるから』
「うん……帰るよ」
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