ブライダル・ラプソディー

葉月凛

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 背中に心地良い体温を感じながら、奈津は再び、うとうとと目を閉じた。体にくすぶっていた睡魔に導かれ、程なく呼吸は深くなってゆく。

 ──しばらくすると、奈津を覆っていた右手がゆっくりと動き出し、するするとお腹のあたりを撫でてきた。眠りに落ち掛けていた意識が、一瞬で引き戻される。

「………」

 その手はパジャマの裾をじわじわと、しかし明確な意図を持って手繰り上げ、やがて直に肌に触れてきた。乾いた手の感触が、ゆっくりと体を這う。

 うなじに熱い唇が押し当てられ、奈津の体がぴくりと反応する。押し当てられた唇の隙間から、ちろりと濡れたものが肌に触れた。

「んっ」

 身じろぐ奈津を抱きしめる、背後からの腕に力がこもる。

 体をまさぐっていたあやしい手は、やがて胸の小さな尖りに辿り着いた。指先で弾くように、くるくると転がしてくる。こんなことをされては、とてもじゃないけど眠れない。

「………」

 奈津は黙って、その手を掴んで、ゆっくりと引き下ろした。

 大人しく下ろされた手は、しばらくするとまたごそごそと胸の尖りに戻ってゆく。また奈津は、その手を掴んで引き下ろした。

 と、また戻る。また下ろす。
 戻る。下ろす。……無言の攻防が始まった。

 戦いは次第に激しくなり、哀れな胸の尖りがキュッと力任せにつねり上げられたかと思うと、その手は容赦なく叩き落とされた。苛烈する攻防戦にもがく奈津の足の間を、成瀬の右の太ももが、ぐっと押し上げる。あっと思った瞬間にうなじに噛みつかれた。

「うぁっ」

 怯んだ隙を突かれた奈津の両手は、ひと掴みに成瀬の左手に捕らえられてしまった。

「俺の勝ちだな」

 耳元で囁き、うなじをぺろりと舐められる。自由を得た成瀬の右手は、思う存分、小さな尖りを嬲り始めた。

 逞しい太ももに擦り上げられて、股間のものも主張を始める。奈津は、息が荒くなるのを止められなかった。

「……さっき、あんなに、したじゃないですか……」

 奈津の訴えはもっともで、ほんの数時間前に、2人は存分に愛し合っていた。その行為のあまりの激しさに、奈津は終わると同時に気絶するように眠りに落ち、さっき目が覚めた時にここがどこか分からなくなるくらい短時間で熟睡してしまっていた。

 仕事終わりの疲れもあるとは思うが、それとは比較にならない程に体力を消耗してしまっている。

 男性同士のこうした行為に随分慣れたとはいえ、まだまだ初心者の自分をもう少し気遣ってくれてもいいのではないだろうか。成瀬はいつも容赦がないように思う。

 というか、なんでこの人は、こんなに元気なんだ。

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