ブライダル・ラプソディー

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　クリスマスの朝は、この冬一番の冷え込みになった。

　ゲストハウス・メルマリーは今週クリスマスイベントを行っており、レストランではクリスマスディナーを提供している。

　奈津は23、24、25日の３日間、メルマリーのレストランにピアノを弾きに来ていた。今日はその３日目、最終日のクリスマス当日だ。

　クリスマスディナーは子供向けのメニューも用意されていて、レストランは家族連れが多く賑わっていた。明るい店内はキラキラとしたモールで飾られ、子供が喜びそうな可愛いサンタやトナカイたちが、あちらこちらに散らばっている。

　奈津も、子供受けしそうな分かりやすいクリスマスソングをピアノで弾いた。

　あまりに子供を意識した飾り付けに、もしかして成瀬は子供が好きなのかと聞いてみると、

『別に好きでも嫌いでもない。需要があるから応えたまでだ。うちは、地域密着型だ』

　と、そっけない返事が返ってきた。ここは少し行ったところに小学校があり、意外に子供が多い。
　ブルームーンのような大人向けのバーラウンジもいいけれど、こんな風に明るいレストランもいいな、と奈津は思った。

　ブルームーンといえば、あんなことがあったので、せっかく取ったレギュラーだけどやっぱり辞退した方がいいかとも思ったのだが……

　あの翌日、成瀬との長風呂から出てくると、奈津のスマートフォンに興奮した櫻井からメッセージが入っていた。

『やったわね、相川！　さっき高嶺さんから電話があって、レギュラー確定だって！　あんたには昨日のうちに伝えたって言ってたわよ？　何でさっさと報告しないのっ！　まぁいいわ、とにかくおめでとう！　しっかりやんのよっ』

　……高嶺は、いつでも先手を打つ。

『いいんじゃないか？　あの人はこれ以上、何もしないよ』

　相変わらず丸聞こえの櫻井の声に、笑いながら成瀬が言った。

『基本、嫌がることはしない人だから。大丈夫だ』

　──十分、された気がするが。その認識は、成瀬限定ではないだろうか。