ブライダル・ラプソディー

葉月凛

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 男が、見えない誰かに渡されたボトルを傾け、手のひらに液体を取る。

 劉が右足を開くように持ち直し、私のピアスに手を伸ばした。

「先生は今、日本にいるんだよ」

 劉が耳元で囁く。

「今、この部屋にいる」
「っ!」

 私の躰が驚きで揺れた瞬間、左足を開いて押さえていた男の指が隘路に入ってきた。

「玉蘭に会いたがってる」
「………」

 男は観客に私の陰部が見えるよう、躰の横から手を差し入れている。開いた足の間から見晴らす観客席のどこかに、本当にあの先生がいるのだろうか。

 刷り込まれた畏怖の念が、怖気を纏ってぞくぞくと背骨を這った。

「ほら。あそこで見てる」

 劉がピアスから手を離し、私の顎を持ってそちらに向けた。

「っ、……」

 劉が示す視線の先──一番奥のソファーに、ベネチアンマスクを着けた銀髪の紳士が真っ直ぐにこちらを見ていた。
 その膝に、小さな子供がステージに背を向けて跨り、腰が前後に揺れている。両脇に置いた男児が、彼にしなだれ掛かっていた。

 先生は、子供が好きだ。それも1桁か、大きくても十代前半の美しい男児。それ故、私の成長は彼を相当に悲しませた。

 先生の視線が呪詛のように絡み付く。
 私は、動けなくなる。

 男が足を放し、私の陰茎へと手を伸ばした。いつしか増えていた指を隘路から引き抜き、するすると陰茎を擦られる。

「んっ、」

 尿道の先端に痛みを感じて視線を落とすと、銀色に光る細い棒が今まさに沈むところだった。

「あ、……あ、」

 ぷつぷつと連なった小さな珠が、自身の中に沈んでゆく。思わず閉じそうになった足を、劉が後ろから開いた。

「好きだろ? これ」

 劉が、くくっと笑う。
 尿道プジーは苦手だ。せり上がる快感の捌け口がない。

 小さな珠が擦れるたびに、熱を伴った刺激が走る。小刻みに抜き差しされながら持ち手の輪の部分まで深く差し込まれ、男の手は離れた。

 見えない誰かが男に、くねったT字型の黒い物体を渡す。……エネマグラだ。

「あ、あ、」

 ぬるりと差し込まれた無機質なそれは、私の中でじわじわと存在感を増してゆく。入れてすぐは、何ともない。徐々に私自身が、私を追い詰めてゆくのだ。

 男が、プジーが刺さったままの私の陰茎を緩やかに扱き出した。

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