【本編完結】農民と浄化の神子を並べてはいけない

ナナメ

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第一章 異世界に来ちゃった

爽やかペパーミント臭

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 ふ、と目を覚ますとまず厚い胸板が目に入った。
 おっとこれはもう見慣れてきたぞ。ローゼンのムチムチなお胸様だな?女の子みたいに柔らかいわけじゃないけど、むっちり膨らんだ胸板に額を擦り付けてみる。
 ローゼンはいつもこの香水をつけてるのかペパーミントっぽい爽やかな香りがしてて癒されるんだよな~。というか、いつもは何度も俺がソファーで、と言っても頑なに却下して、ソファーで寝てるローゼンが一緒のベッドで寝てるのは久々だ。このベッド広いし、何だったら一緒に寝た方がローゼンも休めるんじゃないか?今夜そう言ってみようかな。いやこの抱き枕状態は恥ずかしいけど。
 むむむ、と唸っていたら、頭上からふ、と笑い声が。

「!ローゼン、起きてたな!?」

 がばり、と身を起こせば直ぐ様その太い腕に捕まってベッドに引き戻されてしまう。

「まだ寝てないとダメですよ。逆上せて倒れたの忘れましたか?」

「……逆上せて……?」

 ん?そういえば昨日風呂入った後くらいからの記憶がないな……。確かにちょっと逆上せたなー、って思った気がする。あれ?でもその後何かなかったか……?あれれ???おかしいな……?

「俺……倒れた?」

「……ええ。パルティエータが見つけてここへ運んでくれたんです。その時に足を捻ったようで腫れているので、今日は動いてはダメですよ」

「ティエが……」

 足首を確かめると、確かに左足首に鈍い痛みがある。すでに手当てはされてひんやりする布と包帯が巻かれていた。どういうこけ方したらこんな事になるんだ……?ハッ!物理防御ペラペラ効果なのか……!?

「えっと……良く覚えてないんだけど……迷惑かけました」

 眉毛ハの字になってたローゼンが、ほっ、と肩の力を抜いてどこか安心したように微笑んでいる。そんなに酷いこけ方してたのかな……?気を付けよ。

「スナオ様、腹は減ってませんか」

 途端にぐー、と鳴る正直な腹を思わず押さえると、何故かローゼンがぎゅう、と抱き締めてきた。
 えぇぇぇ……!何の抱擁……!!?

「ローゼン……!?」

「すみません、少しだけこのままで」

 別に良いけど……何事……??
 少しだけ、と言いつつ俺の体感的には結構長い間抱き締められていた気がする。ローゼンのトクトクという心音に耳を傾けながら頭の中はクエスチョンマークだらけの俺。仕方ないからローゼンのペパーミントっぽい香りを堪能する事にした。
 うーん……爽やかでしつこくなくていい匂い。何て言うか……ずっと嗅いでいたくなるような、安心するような、何かそんな匂いだ。
 気付けばローゼンの腕は緩んでるのにいつまでもスンスンと香りを嗅いでる変態みたいになってしまってた。

「わぁ!?ごめん!!」

「あの……俺臭いますか……?」

 あぁ!また眉毛ハの字……!!

「違う違う!!クサイとかじゃなくて!ローゼンの香水、いい匂いだな、って!」

 慌ててそう言ったらモゾモゾ起き上がったローゼンが首を傾げた。

「香水……?」

「うん。いつもペパーミントっぽい、いい匂いがするから」

「……香水は……つけていませんが……」

 え?と思ったけど、まるで催促するかのようにまたぐー、と鳴った腹の虫にくすくす笑ったローゼンが

「飯にしましょう」

 と立ち上がってしまったので、話しはそこで終わってしまった。
 香水……じゃないの……?なら何……?服の匂いか……?柔軟剤とか洗剤とか?え、まさか体臭?こんな爽やかな体臭ある?あ!それか石鹸とかかな??そういえば大浴場に備え付けてある石鹸も独特な草っぽい匂いしてたもんな。ドクダミみたいな。ローゼンはオリジナルの石鹸とか持ってるのかもな。俺が最初の頃この部屋の風呂使わせてもらった時は大浴場と同じドクダミみたいな香りの石鹸が置いてあったけど、ローゼン用に何かあるのかも。うんうん。きっとそうだ。
 一人納得してうんうん頷いてる俺に首を傾げながらよいしょ、と体を屈めたローゼンはそのまま……

「ひえぇぇぇ!」

 俺を姫抱きにしたもんだから思わず変な悲鳴をあげてしまった。

「な、な、何……!?俺!歩けるよ……!!?」

「駄目です。大人しくしててください」

「えぇぇぇ!!何でー!」

「何ででもです」

 何か今日は強引……!
 あれ、でもこのゆらゆら揺れる感じちょっといいな。電車の揺れって何故か眠くなるけど、あの感じに近い。うーん、それにやっぱりこの匂い……癒される……。
 ぎゅ、と首筋にしがみついてまたもスンスン嗅いでいる変態と化した俺に苦笑い気味のローゼンが

「あまり嗅がれると恥ずかしいんですが」

 なんて言いながら逆に俺の首筋を嗅いでくる。

「くすぐったい!」

「お返しですよ」

 そんなやり取りをしながらキッチンに辿り着くと、今日もテーブルにはこんもりとパンが積んであった。俺を椅子に降ろしたローゼンはしばらく鍋の中身を温めてから、相変わらずボウルのような入れ物に何かをよそって俺の前に置く。

「これは?」

「パン粥です。倒れた後夜中に目を覚ましましたが吐いていたので、今日は軽いものから食べましょう」

「吐いた……」

 全く記憶にございません!
 そうか……吐いたのか……。何かまたものすごい迷惑かけたんだな。申し訳ない……。

「あの、いつもありがとうございます……。迷惑かけてごめんなさい」

「良いんですよ。俺が好きでやってる事ですから。それよりまた敬語になってます」

 ハッ!つい!年上にタメ口とかやっぱ慣れないな……。
 ……いい匂いが漂ってくるし、ひとまず今は何も考えず食べよう!

「いただきまーす……」

 じぃ、っと見てくるローゼンの視線が痛いんだけど……それより何これ!旨い!
 カボチャのポタージュっぽい味のスープに浸されてやわやわになったパンは、口の中で溶けてなくなってしまう。固形じゃないからちょっと物足りないけど……微妙な甘さも丁度良く、あっという間に完食してしまった。……おかわり欲しいな……。
 ちら、と見るとローゼンはどことなくほっとした顔でまだ俺を見つめてる。何故……?

「まだ食べられますか?」

「いいの?もう少し欲しい!」

「胃に負担がかかるので、あと少しだけですよ。明日はもう少し違うものを作りましょう」

 頭を撫でておかわりを用意してくれて、やっとローゼンも自分のご飯を食べ始める。今日も相変わらず手品のように食材が消えていった……。すげぇ。

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