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第一章 異世界に来ちゃった
side パルティエータ・イリツォーネ
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団長執務室前で聞こえた
「私はスナオに、好ましいと思っている事を伝えた」
というディカイアスの声にパルティエータはノックをしかけていた手を止めた。
一瞬耳を疑って、しかし思い当たる節もある事に気付く。
最初にローゼンの部屋で倒れた時、朝一番で朴の様子を見に行ったり、ローゼンとパルティエータが揃って任務の日には朴の護衛を志願し一緒に出掛けたり。
マクシノルト公爵家の次男であるディカイアスには昔から見合いの話は山程あったと聞く。しかしどれも断って独り身を貫いてきた彼が特定の誰かに寄り添った事は一度もない。
(そう言えば年長組が団長に春が来たって飲み騒いでたわね…)
だからと言ってパルティエータとて退いてやるつもりはないから、やや乱暴に部屋をノックした。
報告事項は探索は明日から可能であると伝えるのみ。
早口で伝え、了承の返答を得てそれでも動かないパルティエータを上司二人がじっ、と見ている。
「さっきの話、聞いてしまいました」
それでも二人は頷いたのみで、先を促すかのよう。
「ワタシも、スナオには好意を抱いていますから」
「だろうな」
二人揃って、うん、と頷く。知ってたのかよ!と素で突っ込みそうになって辛うじて堪える。
「二人が上司だからって遠慮はしない」
「…護衛のお前が一番近くにいる。何かあった時は頼りにしている。が、私も退く気はないからな」
「…スナオ様の意思を尊重しますが…俺としても諦めるつもりはない」
全ては朴次第だ。
そう、思っていたのに。
「スナオ…っ!!寝るな!スナオ!!」
パーピュアの呼び掛けにももう答えない朴の顔色は蒼白を超えて、もはや白い陶器のよう。唇の端から溢れ落ちる血がなければ人形かと思う程だ。
その体はパルティエータの腕の中でどんどん体温を失い冷えていく。
「…魔力切れです。このまま放置したら魂を引っ張られずとも死んでしまう!」
メイディの言葉に、一瞬悩む素振りを見せたパーピュアは離れた場所にあった箱へ駆け寄り、中から液体を2つ取り出した。一つはさらさらとした液体、もう一つはどろりと粘度のある液体だ。
それを、パルティエータの手の平に押し付ける。
「もうこれしかない…」
「…何でこんなもの用意されてるの…?ピュア、あんたまさか」
「スナオが助かった後でならいくらでも殴られてやる!今はそれを持って部屋に行け!」
こっちはティエが、こっちはスナオに、と軽い説明の後でパーピュアはバッと振り返りこちらを見る上司へ言った。
「…良いですね?」
「嫌だと言いたいところだが、私には事後処理がある」
「…俺もまだ動けそうにない」
ローゼンの腹に空いた穴はもう見る影もなく綺麗に塞がっている。しかし流した血は完全に戻っていないのか、顔色は酷いものだ。
「…お前にだから任せられる」
だけど同時に、任せて申し訳ない、と二人は言った。
本来ならこんな形で手に入れたい物ではない事を二人もわかっているのだ。
しかし、もう一刻の猶予もない。パルティエータは一瞬だけ悩むけれど他に手はなく、ここで彼を失うわけにもいかない。
朴を腕に抱いて立ち上がったあとは、もう後ろも見ず足早にその場から消えた。
「私はスナオに、好ましいと思っている事を伝えた」
というディカイアスの声にパルティエータはノックをしかけていた手を止めた。
一瞬耳を疑って、しかし思い当たる節もある事に気付く。
最初にローゼンの部屋で倒れた時、朝一番で朴の様子を見に行ったり、ローゼンとパルティエータが揃って任務の日には朴の護衛を志願し一緒に出掛けたり。
マクシノルト公爵家の次男であるディカイアスには昔から見合いの話は山程あったと聞く。しかしどれも断って独り身を貫いてきた彼が特定の誰かに寄り添った事は一度もない。
(そう言えば年長組が団長に春が来たって飲み騒いでたわね…)
だからと言ってパルティエータとて退いてやるつもりはないから、やや乱暴に部屋をノックした。
報告事項は探索は明日から可能であると伝えるのみ。
早口で伝え、了承の返答を得てそれでも動かないパルティエータを上司二人がじっ、と見ている。
「さっきの話、聞いてしまいました」
それでも二人は頷いたのみで、先を促すかのよう。
「ワタシも、スナオには好意を抱いていますから」
「だろうな」
二人揃って、うん、と頷く。知ってたのかよ!と素で突っ込みそうになって辛うじて堪える。
「二人が上司だからって遠慮はしない」
「…護衛のお前が一番近くにいる。何かあった時は頼りにしている。が、私も退く気はないからな」
「…スナオ様の意思を尊重しますが…俺としても諦めるつもりはない」
全ては朴次第だ。
そう、思っていたのに。
「スナオ…っ!!寝るな!スナオ!!」
パーピュアの呼び掛けにももう答えない朴の顔色は蒼白を超えて、もはや白い陶器のよう。唇の端から溢れ落ちる血がなければ人形かと思う程だ。
その体はパルティエータの腕の中でどんどん体温を失い冷えていく。
「…魔力切れです。このまま放置したら魂を引っ張られずとも死んでしまう!」
メイディの言葉に、一瞬悩む素振りを見せたパーピュアは離れた場所にあった箱へ駆け寄り、中から液体を2つ取り出した。一つはさらさらとした液体、もう一つはどろりと粘度のある液体だ。
それを、パルティエータの手の平に押し付ける。
「もうこれしかない…」
「…何でこんなもの用意されてるの…?ピュア、あんたまさか」
「スナオが助かった後でならいくらでも殴られてやる!今はそれを持って部屋に行け!」
こっちはティエが、こっちはスナオに、と軽い説明の後でパーピュアはバッと振り返りこちらを見る上司へ言った。
「…良いですね?」
「嫌だと言いたいところだが、私には事後処理がある」
「…俺もまだ動けそうにない」
ローゼンの腹に空いた穴はもう見る影もなく綺麗に塞がっている。しかし流した血は完全に戻っていないのか、顔色は酷いものだ。
「…お前にだから任せられる」
だけど同時に、任せて申し訳ない、と二人は言った。
本来ならこんな形で手に入れたい物ではない事を二人もわかっているのだ。
しかし、もう一刻の猶予もない。パルティエータは一瞬だけ悩むけれど他に手はなく、ここで彼を失うわけにもいかない。
朴を腕に抱いて立ち上がったあとは、もう後ろも見ず足早にその場から消えた。
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