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第一章 異世界に来ちゃった
神官長とドラゴン
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「殿下…っ、頭を上げてください!!」
俺から離れて慌ててレイアゼシカに駆け寄ったパーピュアが言うけれど。
「婚約者のした事は私の責任でもある。本当に申し訳ない」
ハッ、となったパーピュアも慌てて俺に頭を下げた。
王族に謝罪をさせる、それがどういう事なのか俺でも何となくわかる。だって本来そんな軽々しく頭を下げるべき人達じゃないもんな。レイアゼシカが“オレ”から“私”に言い替えたのは私的じゃなく公式に謝られてるんだ。
だから俺も真剣に答えた。
「頭を上げてください。俺は俺に出来る事をやっただけ。その機会をくれたパーピュアに怒る事なんてないから、謝らなくてもいいんです。この先もみんなが危険なら、俺は喜んで同じことをやります」
そうやって返せば、レイアゼシカはふ、と優しく微笑んだ。
あれ、やっぱりいい人そう…?
「貴方の寛大な心に感謝する、神子スナオ」
もう一度パーピュア共々頭を下げて、次顔を上げた時にはまた掴み所のない笑みを浮かべるレイアゼシカにちょっと脱力感を味わった。
だって王族だよ?俺は庶民だよ?身分は絶対的に向こうの方が上なのに頭下げられるとかもう小心者の俺は心臓バックバクだったよね!良かったわ。もうちょっと続けられたら口から心臓出るところだった!
「さて、それで?あの話は済んだのかい?」
「あの話?」
「ん?聞いてない?スナオの番の話だよ!」
「…んん?番…?」
何の話だ?
パーピュアもティエもハッ、とそっくり同じ顔をしてる。こうしてると双子だなぁ、って感じ。性格とか髪や目の色が全然違うけど、表情がそっくりな事多いもんな。
で。番って何の事だ?
「で、殿下…っ、それは…」
「あれ?まだ言ってなかった?ごめーん!うっかり!」
てへぺろ、みたいな顔をしないで欲しい。何か雰囲気がさっきより緊張してるじゃん!!
「あの、どういう事…?」
「それはワタシから話すわ。でもここじゃダメ。後でね」
にっこり微笑んで頭を撫でられたら、もうそれ以上どういう事だー!とは言えず黙る。
でも、何か…予想がついてきたかも知れない…。前にティエが言ってた番の話…、昨日急にティエが欲しくなった事、お風呂でも匂いについて訊かれたし。
…うん。後にしよう。とりあえず置いておこう。ちょっと考えるのが怖くなってきたから後だ、後。
「先に…何でみんなが死にかけてたのか訊いてもいいかな?」
どうしてもこれは確認しておきたい。俺を結界に閉じ込めてまで、みんなは何をしてたんだろう。
全員ディカイアスを見るから、俺もディカイアスに目を向けた。
しばらく黙って目を閉じていたディカイアスがそのアイスブルーの瞳を開けるまで体感的には結構待ったような気がする。
でもそこからまたしばらくの間。それからぽつ、とようやく口を開いた。
「…お前を誘拐したパワハルを追っていた」
あのクソ眼鏡!あいつ、まだ捕まってなかったのか!
途端にぞわ、と鳥肌がたって震え出す体を横に座ったティエが抱き締めてくれる。
ぎゅ、としがみついた体から漂うカモミールの匂いを吸って心を落ち着かせようと何度も深呼吸した。その間ディカイアスは黙って待ってくれたし、ティエも何も言わずに背中をさすってくれた。
大丈夫。大丈夫だ。俺にはみんながいる。一人じゃないから、大丈夫。
「ごめん…。大丈夫」
「無理しないで良いのよ?」
「ううん。聞いておかないと…」
何か知ってるのと何も知らないのとでは不測の事態に陥った時のパニック度が違うからな。
でもやっぱり怖いから、隣のティエの手をぎゅ、と握った。大きな手が握り返してくれて、だから震えずにディカイアスに続きを促す事が出来る。
「あの神官長がやったのか…?」
「…命を下したのは奴だろうな。あの場に現れる筈のないドラゴンに部隊は総崩れだった」
「ドラゴン…」
え、ちょっと見てみたい気もする…!
そわっ、となったけど、でもそのドラゴンの所為でみんな死にかけたんだ。めちゃくちゃ危険生物なのでは?
「何とか追い払う事に成功したが…結局パワハルを捕らえる事は出来なかった」
詳しく聞けば、探索魔法とやらで俺が連れ込まれそうになっていた廃神殿の隠し通路から逃げて森の奥に隠れていたパワハルを見つけ出したのだけど、魔法で抵抗しまくるパワハルにてこずってる内にドラゴンが現れてみんなを攻撃し始めたらしい。
第一騎士団は物理重視。第三騎士団から応援は来てたけど、ドラゴンはこの世の理を超越するもはや神に近い生き物。魔法も物理もその厚い鱗で弾き、倒す術は喉元にある竜の逆鱗の破壊以外にはないらしく。第三騎士団が魔術で牽制し、第一騎士団が喉元に飛び込むという捨て身の戦法で戦ったけど追い払うだけで精一杯だったんだって。
「…良くみんな死ななかったね…!?」
騎士団寮に戻るまでに死人が出ててもおかしくなかったでしょ!?
「隊に損害が出過ぎていたからな。緊急時にしか使わない転移魔法で皆を寮まで転移させた」
一度使うと向こう半年は使えなくなる大規模転移魔法陣は各騎士団長が保管している。状況次第で団長が判断し使うんだって。
それで寮に戻って、みんなを治療してる所へ俺が来て、って感じだったらしい。
とりあえずみんな助かって良かったよね…。
だけど。
「パワハルは逃げた。またお前の元に現れるだろう」
ですよねー。
俺から離れて慌ててレイアゼシカに駆け寄ったパーピュアが言うけれど。
「婚約者のした事は私の責任でもある。本当に申し訳ない」
ハッ、となったパーピュアも慌てて俺に頭を下げた。
王族に謝罪をさせる、それがどういう事なのか俺でも何となくわかる。だって本来そんな軽々しく頭を下げるべき人達じゃないもんな。レイアゼシカが“オレ”から“私”に言い替えたのは私的じゃなく公式に謝られてるんだ。
だから俺も真剣に答えた。
「頭を上げてください。俺は俺に出来る事をやっただけ。その機会をくれたパーピュアに怒る事なんてないから、謝らなくてもいいんです。この先もみんなが危険なら、俺は喜んで同じことをやります」
そうやって返せば、レイアゼシカはふ、と優しく微笑んだ。
あれ、やっぱりいい人そう…?
「貴方の寛大な心に感謝する、神子スナオ」
もう一度パーピュア共々頭を下げて、次顔を上げた時にはまた掴み所のない笑みを浮かべるレイアゼシカにちょっと脱力感を味わった。
だって王族だよ?俺は庶民だよ?身分は絶対的に向こうの方が上なのに頭下げられるとかもう小心者の俺は心臓バックバクだったよね!良かったわ。もうちょっと続けられたら口から心臓出るところだった!
「さて、それで?あの話は済んだのかい?」
「あの話?」
「ん?聞いてない?スナオの番の話だよ!」
「…んん?番…?」
何の話だ?
パーピュアもティエもハッ、とそっくり同じ顔をしてる。こうしてると双子だなぁ、って感じ。性格とか髪や目の色が全然違うけど、表情がそっくりな事多いもんな。
で。番って何の事だ?
「で、殿下…っ、それは…」
「あれ?まだ言ってなかった?ごめーん!うっかり!」
てへぺろ、みたいな顔をしないで欲しい。何か雰囲気がさっきより緊張してるじゃん!!
「あの、どういう事…?」
「それはワタシから話すわ。でもここじゃダメ。後でね」
にっこり微笑んで頭を撫でられたら、もうそれ以上どういう事だー!とは言えず黙る。
でも、何か…予想がついてきたかも知れない…。前にティエが言ってた番の話…、昨日急にティエが欲しくなった事、お風呂でも匂いについて訊かれたし。
…うん。後にしよう。とりあえず置いておこう。ちょっと考えるのが怖くなってきたから後だ、後。
「先に…何でみんなが死にかけてたのか訊いてもいいかな?」
どうしてもこれは確認しておきたい。俺を結界に閉じ込めてまで、みんなは何をしてたんだろう。
全員ディカイアスを見るから、俺もディカイアスに目を向けた。
しばらく黙って目を閉じていたディカイアスがそのアイスブルーの瞳を開けるまで体感的には結構待ったような気がする。
でもそこからまたしばらくの間。それからぽつ、とようやく口を開いた。
「…お前を誘拐したパワハルを追っていた」
あのクソ眼鏡!あいつ、まだ捕まってなかったのか!
途端にぞわ、と鳥肌がたって震え出す体を横に座ったティエが抱き締めてくれる。
ぎゅ、としがみついた体から漂うカモミールの匂いを吸って心を落ち着かせようと何度も深呼吸した。その間ディカイアスは黙って待ってくれたし、ティエも何も言わずに背中をさすってくれた。
大丈夫。大丈夫だ。俺にはみんながいる。一人じゃないから、大丈夫。
「ごめん…。大丈夫」
「無理しないで良いのよ?」
「ううん。聞いておかないと…」
何か知ってるのと何も知らないのとでは不測の事態に陥った時のパニック度が違うからな。
でもやっぱり怖いから、隣のティエの手をぎゅ、と握った。大きな手が握り返してくれて、だから震えずにディカイアスに続きを促す事が出来る。
「あの神官長がやったのか…?」
「…命を下したのは奴だろうな。あの場に現れる筈のないドラゴンに部隊は総崩れだった」
「ドラゴン…」
え、ちょっと見てみたい気もする…!
そわっ、となったけど、でもそのドラゴンの所為でみんな死にかけたんだ。めちゃくちゃ危険生物なのでは?
「何とか追い払う事に成功したが…結局パワハルを捕らえる事は出来なかった」
詳しく聞けば、探索魔法とやらで俺が連れ込まれそうになっていた廃神殿の隠し通路から逃げて森の奥に隠れていたパワハルを見つけ出したのだけど、魔法で抵抗しまくるパワハルにてこずってる内にドラゴンが現れてみんなを攻撃し始めたらしい。
第一騎士団は物理重視。第三騎士団から応援は来てたけど、ドラゴンはこの世の理を超越するもはや神に近い生き物。魔法も物理もその厚い鱗で弾き、倒す術は喉元にある竜の逆鱗の破壊以外にはないらしく。第三騎士団が魔術で牽制し、第一騎士団が喉元に飛び込むという捨て身の戦法で戦ったけど追い払うだけで精一杯だったんだって。
「…良くみんな死ななかったね…!?」
騎士団寮に戻るまでに死人が出ててもおかしくなかったでしょ!?
「隊に損害が出過ぎていたからな。緊急時にしか使わない転移魔法で皆を寮まで転移させた」
一度使うと向こう半年は使えなくなる大規模転移魔法陣は各騎士団長が保管している。状況次第で団長が判断し使うんだって。
それで寮に戻って、みんなを治療してる所へ俺が来て、って感じだったらしい。
とりあえずみんな助かって良かったよね…。
だけど。
「パワハルは逃げた。またお前の元に現れるだろう」
ですよねー。
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