【本編完結】農民と浄化の神子を並べてはいけない

ナナメ

文字の大きさ
61 / 203
第一章 異世界に来ちゃった

トラウマの大神殿

しおりを挟む
ディカイアスの乗る馬に揺られて連れて来られたのはあの日の大神殿と呼ばれる場所だ。あんな事がなければこの綺麗な外観はさぞや感動ものだっただろう。でも俺にとってここはトラウマだ。
ちら、と後ろを見たらこれまたトラウマな真っ白な鎧の兵士。
それをわかっていて連れてきたディカイアスの眉間には深い皺が刻まれている。

「…ディカイアス…」

「…すまない、スナオ。今は耐えてくれ」

「…うん…」

ローゼンの部屋にディカイアスが戻って来た時何が起きてるのか説明は受けた。
俺に拒否権はないんだろう。それにここで拒否をしたらそれこそ王様の前に引き立てられかねない。だったらディカイアスがいいに決まってる。
それでもちょっと怖くて縋る俺の背中を宥めるように撫でてくれる。

「これが終わればすぐにでも旅に出よう」

「わかった」

本当はまだ本調子じゃない俺を気遣って先延ばしにしてくれてたんだって。ホントにディカイアスは知らないところでいつも俺を守ってくれてるんだな、ってそう思ったらこんなの何でもない。
怖いのは怖いけど。あと人に見られながら、っていうの、めちゃくちゃ嫌だけど。でもディカイアスの為なら我慢するよ。

辿り着いた大神殿で数人の神官達に囲まれて、王宮から来たどうやら俺の専属らしい侍従さん達にいつもの様に磨き上げられる。いつもキャッキャと話しかけてくる侍従さん達も流石に泣きそうな顔をしてた。嫌なことさせてごめんな。後で菓子折り持って行くね。

丁寧に磨き上げ、いつもの香油で肌を整えてシルクのガウンを着せられる。でももちろん下着は取り上げられてしまった。
そのまままた神官達に取り囲まれてあの日の部屋に着く。
ホントは逃げたかったよ。この人達殴り倒してでも、ここから逃げたい。でもそれをしたらディカイアスの立場が悪くなってしまうから我慢しなきゃ。
だけどあの日、この場所であのクソ眼鏡にされた事を思い出しぞくり、と鳥肌が立つ。無駄に整えられたシーツが気持ち悪い。

ただ、今ベッドで俺と同じようなガウンを着て待ってるのはディカイアスだ。あいつじゃない。
そう言い聞かせる為に立ち止まる俺の背中を押した神官の手を、思わず振り払った。

「俺に触るな!!!」

「スナオ」

神官が何かしらの文句を言う前にディカイアスの腕に抱き上げられて。そしたらもう我慢できなかった。

「ひっ、うぅ…っ」

ボロボロボロボロ涙が零れてくる。
ディカイアスとするのが嫌なわけじゃないよ。だけどこんな形でやらないといけないなんて、あんまりじゃない?
ディカイアスは待ってくれる、って言ったのに俺のせいで巻き込んでしまった。それが申し訳なくて涙が止まらない。

「ごめ、なさい…っ巻き込んで…っ」

「逆だろう。私達の事情にお前を巻き込んでいるんだ。お前が謝る事は一つもない」

「でも…っ、俺が…っ」

俺がもっとしっかりしてたら。
俺がもっと強かったなら。
そしたらこの人にこんな悲しそうな顔をさせたりしないのに。

「スナオ」

ちゅ、と唇に暖かくて柔らかい感触。いつも頬とか額とかに触れていた唇が初めて俺の唇に触れている。

「出来るだけ奴らにお前が見えないようにする。お前は私だけ見ていろ」

ほとんど唇が触れているような距離でこそ、と言われてキスで答えた。

「んん…っ」

そのままベッドに寝かされた後は直ぐ様顔の横についたディカイアスの両腕で囲われて隅に控える神官達は見えなくなる。
あの人達はとにかく俺がディカイアスのアレを中に出されたかどうかを知れれば良いんだろうし、物凄い近くに来ないのだけが救いだ。めっちゃ側に来られたら絶対気になってたもんな。

とにかく今は忘れよう。あれは銅像…銅像だ。

頭の中でそう唱えていると、するり、とガウンの腰の紐をほどかれてて目が飛び出るくらいびっくりした。け、気配なく動かないでくれ!!というか俺が緊張し過ぎて何も見えてないだけだと思うんだけど。

「ディカイアス…っ」

そういやティエとしたのもつい数日前。風呂の後にした時にティエがめちゃくちゃ跡つけてた気がするんです!

「気にするな。複数のつがいがいる、と言うのはこういう事だ」

「うぅ…俺が居たたまれないんです…」

「慣れる事だな」

くす、と笑ってキスしてくれる。
多分俺の緊張を解そうとしてくれてるんだ、って思ったから俺もディカイアス以外目に入れない。

それにしても近くで見るとホントに…っ、ホントにさぁ…!!

「まだ怖いか」

「違う…!ディカイアスの顔が良くて目が潰れる…っ」

顔を覆った俺に心配そうな声が聞こえたけど、ホントに違うんです。
いや、怖いのは怖いよ。でもディカイアスの為に今は忘れる。二人だけの世界を作ってやる。

「良くわからんが、顔ならお前の顔の方が愛らしくて好ましいな」

「ふぐぅ…っ」

やめろ!いきなりその神々しい微笑みに乗せて甘い言葉を囁くのはやめろー!俺の心臓が口から飛び出すわー!!

なんて思ってたら目深にフードを被った神官の一人が側に寄ってきて、俺はびくり、と固まった。
ディカイアスは側に来た神官に鋭い視線を向ける。

「何の用だ」

「我々は閨の睦言を聞きたいわけではない」

言いながらぽん、と放り投げられた瓶が転がる。どろりとした液体が瓶の中で揺れた。

しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...