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第二章 浄化の旅
2日目 怒りのティエ
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朝になって仕事に行きます、って言うローゼンにいってらっしゃいのチューをしてから、そういやここはどこなんだ、と今更ながら思った。
やたら広い部屋の中、大きなベッドに時期じゃないからかファイアースクリーンで仕切られた暖炉、茶色の革張りのソファーにはふかふかクッションが並べてある。窓辺には昨日遅めの晩御飯を食べた小さめの白いテーブルと椅子のセット。壁には綺麗な花の絵が飾ってある。
ベッド真正面のドアはバスルームに繋がってたから、もう一つあるドアが出入口なんだろう。
…うん。どこだここ。
本当は出入口開けて廊下を覗いたり、窓から外を覗いたりしたいんだけど…腰がダルくて動きたくありません。
ローゼンはティエと引き継ぎするって言ってたからもうしばらく来ないだろう。体は割りと動くようになったけどまだ頭ぼんやりしてるし、ダルいし、ゴロゴロしておこう。ーーー正直このままソッと逃げたいけど、逃げた後が怖いしな。
なんて思いながらゴロゴロしてたらいつの間にか寝てしまっていたようで、髪を梳かれる感覚にふ、と目を覚ましたら目の前にイケメンのアップがありました。
「わぁ…ティエさんいらっしゃいませー」
「いらっしゃいましたよー」
にっこりと微笑まれ、一気にドバッと冷や汗が噴き出す。やめて…!その暗雲バックに背負ってにっこりしてくるのホントやめて…!!
「スナオくーん?ワタシはね、ブラッキル領でスナオに言われたこと、ちゃんと考えたのよ」
「はい」
思わずベッドで正座になる俺の側にティエが腰かけながら言う。
「だから多少の無茶は目を瞑らないとって思ってるの」
「はい」
「でもねぇ…ワタシ達が戦って死にかけたのを知りながらドラゴンの目の前にいるっていうのはどういう了見なのかなぁ?スナオ君」
「はい。あの、それはですね。俺もまさかあそこでドラゴンが出てくると思ってなくてですね。予想外だったと申しますか」
いや、だって最初はね?普通にメイディ達助けたら全速力で逃げるつもりでいたんですよ。それがまさかのドラゴンでしょ?しかも俺を狙ってくるでしょ?さらにもう一匹出てきたでしょ?全部予想外だよね。というかあのもう一匹は朝陽達が倒してくれたんだよな?クソ眼鏡に捕まった時には周り静かになってたし。
「予想外な事は戦場では茶飯事だものね?」
「はい、そうですね」
あ、ティエがブルブルし始めた。怒鳴られそう!
「お前はバカかー!!」
「はい!バカです!!」
あまりの剣幕に思わず肯定してしまった。
「…訂正します!バカじゃないです!」
なので訂正してみた。
そしたらティエは俺の両頬をぶにっとつまんで横に引っ張って、さらにグルグル回しやがる。
「いひゃい~!」
「痛くしてるんだよ!バカ!!あの時俺が間に合わなかったら死んでたぞ!わかってんのか!!」
う。確かに一瞬足がすくんで動けなくなったあの時、後ろからティエが引っ張ってくれなかったらあの牙に噛み砕かれて最悪死んでた。その後の攻撃も全部ティエが守ってくれた。だから今俺は生きてるんだと思う。
でも、それでもあの時俺がパーピュアもメイディも連れて逃げてたらアンリエッタさん以外でドラゴンのブレスを止められる人はいたんだろうか。
「もしあそこに俺がいなかったら、ティエ達は無傷で帰ってこれた?」
無言になってしまったのが答えだ。あそこに俺達がいなかったらあの金色ドラゴンのブレスは止められなかった。そしたらまたみんな俺が初めて治癒魔法使った時みたいな大怪我してたかも知れない。もちろん“かも”ってだけで、本当にそうなったのかはわからないけど。
「俺もみんなが怪我するのは嫌だって言った。誰か一人でも欠けるのは嫌だって」
しばらくじっ、と見つめあって、先に目を逸らしたのはティエの方。頭をガシガシと掻いてそれはそれは大きなため息をついた。身体中の酸素なくなったんじゃない?ってくらいのため息を。
「わかってるわよ。あそこにスナオがいなかったら、きっと皆助からなかった」
ぎゅっ、と抱き締めるティエの手はやっぱり震えてて。
「でも怖いのよ。スナオを失うのが、とても怖いの」
「俺だって同じだよ!怖いのがティエ達ばっかりだと思わないで欲しいです」
俺は守られてばかりだけど、もしも俺を守って誰か失ったらって思うと怖い。俺の知らない所でまたあんな大怪我してたら、と思うと怖い。俺だけ守れたらいい、みたいなのはやめて欲しい。
「俺を失いたくないって言うなら、ティエ達も俺の前からいなくならないで」
ブラッキル領で話したのとほとんど同じ事でまた言い合ってしまうのは、お互いにまだ折り合いがついてないからだろう。俺が弱いからティエ達も不安になるんだ。俺も戦力の一つだって思ってもらえるようにもっと頑張らないと。
「スナオのバカ」
今度のバカは苦笑いと共に言われた。そのままちゅ、ちゅ、と軽くキスされてベッドに押し倒されて、あ、やっぱりヤるんですね?なんて思ってたら。
「…ティエさん?その手の物はなんでしょうか?」
「手枷ですよ、スナオさん」
「何に使うんでしょうか?」
「もちろんスナオさんに使いますね」
「…ちょっとー!!?さっきまでのしおらしさどこやったの!?拘束プレイですか!!?ふざけんなバーカ!!」
「ついでに目隠しもしますのでー」
さっきの話とこれはまた別よ、と言われて俺は絶望した。お仕置き回避したと思ったのにー!!!
やたら広い部屋の中、大きなベッドに時期じゃないからかファイアースクリーンで仕切られた暖炉、茶色の革張りのソファーにはふかふかクッションが並べてある。窓辺には昨日遅めの晩御飯を食べた小さめの白いテーブルと椅子のセット。壁には綺麗な花の絵が飾ってある。
ベッド真正面のドアはバスルームに繋がってたから、もう一つあるドアが出入口なんだろう。
…うん。どこだここ。
本当は出入口開けて廊下を覗いたり、窓から外を覗いたりしたいんだけど…腰がダルくて動きたくありません。
ローゼンはティエと引き継ぎするって言ってたからもうしばらく来ないだろう。体は割りと動くようになったけどまだ頭ぼんやりしてるし、ダルいし、ゴロゴロしておこう。ーーー正直このままソッと逃げたいけど、逃げた後が怖いしな。
なんて思いながらゴロゴロしてたらいつの間にか寝てしまっていたようで、髪を梳かれる感覚にふ、と目を覚ましたら目の前にイケメンのアップがありました。
「わぁ…ティエさんいらっしゃいませー」
「いらっしゃいましたよー」
にっこりと微笑まれ、一気にドバッと冷や汗が噴き出す。やめて…!その暗雲バックに背負ってにっこりしてくるのホントやめて…!!
「スナオくーん?ワタシはね、ブラッキル領でスナオに言われたこと、ちゃんと考えたのよ」
「はい」
思わずベッドで正座になる俺の側にティエが腰かけながら言う。
「だから多少の無茶は目を瞑らないとって思ってるの」
「はい」
「でもねぇ…ワタシ達が戦って死にかけたのを知りながらドラゴンの目の前にいるっていうのはどういう了見なのかなぁ?スナオ君」
「はい。あの、それはですね。俺もまさかあそこでドラゴンが出てくると思ってなくてですね。予想外だったと申しますか」
いや、だって最初はね?普通にメイディ達助けたら全速力で逃げるつもりでいたんですよ。それがまさかのドラゴンでしょ?しかも俺を狙ってくるでしょ?さらにもう一匹出てきたでしょ?全部予想外だよね。というかあのもう一匹は朝陽達が倒してくれたんだよな?クソ眼鏡に捕まった時には周り静かになってたし。
「予想外な事は戦場では茶飯事だものね?」
「はい、そうですね」
あ、ティエがブルブルし始めた。怒鳴られそう!
「お前はバカかー!!」
「はい!バカです!!」
あまりの剣幕に思わず肯定してしまった。
「…訂正します!バカじゃないです!」
なので訂正してみた。
そしたらティエは俺の両頬をぶにっとつまんで横に引っ張って、さらにグルグル回しやがる。
「いひゃい~!」
「痛くしてるんだよ!バカ!!あの時俺が間に合わなかったら死んでたぞ!わかってんのか!!」
う。確かに一瞬足がすくんで動けなくなったあの時、後ろからティエが引っ張ってくれなかったらあの牙に噛み砕かれて最悪死んでた。その後の攻撃も全部ティエが守ってくれた。だから今俺は生きてるんだと思う。
でも、それでもあの時俺がパーピュアもメイディも連れて逃げてたらアンリエッタさん以外でドラゴンのブレスを止められる人はいたんだろうか。
「もしあそこに俺がいなかったら、ティエ達は無傷で帰ってこれた?」
無言になってしまったのが答えだ。あそこに俺達がいなかったらあの金色ドラゴンのブレスは止められなかった。そしたらまたみんな俺が初めて治癒魔法使った時みたいな大怪我してたかも知れない。もちろん“かも”ってだけで、本当にそうなったのかはわからないけど。
「俺もみんなが怪我するのは嫌だって言った。誰か一人でも欠けるのは嫌だって」
しばらくじっ、と見つめあって、先に目を逸らしたのはティエの方。頭をガシガシと掻いてそれはそれは大きなため息をついた。身体中の酸素なくなったんじゃない?ってくらいのため息を。
「わかってるわよ。あそこにスナオがいなかったら、きっと皆助からなかった」
ぎゅっ、と抱き締めるティエの手はやっぱり震えてて。
「でも怖いのよ。スナオを失うのが、とても怖いの」
「俺だって同じだよ!怖いのがティエ達ばっかりだと思わないで欲しいです」
俺は守られてばかりだけど、もしも俺を守って誰か失ったらって思うと怖い。俺の知らない所でまたあんな大怪我してたら、と思うと怖い。俺だけ守れたらいい、みたいなのはやめて欲しい。
「俺を失いたくないって言うなら、ティエ達も俺の前からいなくならないで」
ブラッキル領で話したのとほとんど同じ事でまた言い合ってしまうのは、お互いにまだ折り合いがついてないからだろう。俺が弱いからティエ達も不安になるんだ。俺も戦力の一つだって思ってもらえるようにもっと頑張らないと。
「スナオのバカ」
今度のバカは苦笑いと共に言われた。そのままちゅ、ちゅ、と軽くキスされてベッドに押し倒されて、あ、やっぱりヤるんですね?なんて思ってたら。
「…ティエさん?その手の物はなんでしょうか?」
「手枷ですよ、スナオさん」
「何に使うんでしょうか?」
「もちろんスナオさんに使いますね」
「…ちょっとー!!?さっきまでのしおらしさどこやったの!?拘束プレイですか!!?ふざけんなバーカ!!」
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