【本編完結】農民と浄化の神子を並べてはいけない

ナナメ

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第三章 神子

命を懸ける R18※他CP注意

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地下牢に似つかわしくない、爽やかな香りにグリニッジは頭がクラリと揺れるのを感じた。同時にほんの少し前まで不憫な虜囚だと思っていた相手に燃え上がる程の愛しさと劣情を感じて、ようやくこの匂いが何なのかを察する。

「お前…!」

メムだけが意図的に発する事が出来るつがいの誘引香。この香りに抗えるイオはほぼいない。
それでもグリニッジはエテュセから距離を取る事でなんとか抗おうとした。
ここで衝動のまま体を繋げたら。この先エテュセはグリニッジ以外の者に愛される事が出来ない。番を得たメムが他のイオを受け入れる事は今のすなおと同じ状態になるという事だ。
そしてグリニッジもエテュセを失えばいずれは喪失感で狂ってしまう。今のマグアイーズのように。

それをわかっていて、それでも尚エテュセは濃い香りを振りまく。

「どういうつもりだ…!意味がわかってやっているのか!?」

「わからずにやる程純粋に見えるのか?」

お前が本当にマグアイーズを裏切れるのか確証がない以上、こっちも保険をかけさせてもらう、と、そう言って笑う。
本気で抗えるのならば今すぐここから離れたらいい話。こうしてここに留まっている事が既に敗北を認めている事に他ならないのに、まだ抗うふりをする愚かなイオを嘲笑った。

「お前が私達を裏切れば、私はこの首を掻き切って死ぬ。お前は番を失った喪失感で狂いながら死ね」

「どうしてそこまで…」

「スナオ様は私達の為に命をかけてくださった」

本来何の関係もないこの世界の為に浄化の旅に出た。それは成り行きで、なし崩し的に、と朴は言うけれど、拒否する事が出来なかったわけではないのだ。最初レイアゼシカは朴が神子とは決まっていないと言い、騎士団も同様に朴の存在を隠した。でも朴は自分の所為でみんなが悪く言われるのは嫌だからと名乗り出た。朴にとっては自分の所為で誰かが責められる罪悪感に耐えられないから、という理由だったのかもしれないけれど、その後命の危機にさらされたって、彼は一度もやめたい、と言わなかった。神子になんてなったからこんな目に遭う、と弱音を吐いたこともなかった。ただそれで皆が助かるならやるよ、と笑っていた。逆の立場だったら、自分はきっとそんな風には言えない。

「…この世界に来てすぐ炎で焼き殺されそうになって、火は苦手だったんだ」


それを何度も吐いて、気絶して、それでも努力して操れるようになった。そんなの本当に強くないと出来ない事だとエテュセは思う。あの時教えているパーピュアですら火を操るのは諦めろ、と言っていたのに。一つでも多く魔法を使えるようになって、今度は俺がみんなを守りたい、と言っていた。

「スナオ様が私達を守るために手を尽くしたなら、今度は私があの方の為に命をかける」

だからグリニッジが踏み込まない最後の一歩を踏み出して、その襟首を掴むとぶつかるようにキスをした。





地下牢の草臥れた粗末なベッドが今にも壊れそうな音を立てている。明らかに情事が行われているとわかるこの音について外の見張りに何て言い訳をするのだろう、とか、もう随分長い事繋がっている気がするけれど、あの狂った王がグリニッジの所在を突き止めたりしないんだろうか、とか。そんなとりとめのない事を考えながら自分を組み敷く相手を見上げた。
抗えない誘引香に溺れながら、しかし苦しそうな顔をしている。それがおかしくてエテュセは笑った。

「…ッ、ん…っ」

初めて誰かを受け入れる後孔は相手が番だからか溢れる程に濡れて痛みはない。それどころか子種を強請るかのように奥へ奥へと引き込んで搾り取るように蠢いている。相手が憎いと思っているのに体がそれを裏切って、愛しい、と叫んでいる。

「あ…ッく…ぅ!」

甘えるような声が出そうになって唇を噛み締めた。

「…噛むな。傷になる」

「うるさい…!」

「体で落とすつもりなら、もっと可愛くしたらどうだ」

「誘引香につられた馬鹿が、指図するな…っ」

グチュ、と濡れた音と共にいつの間にか知られた弱い所を突かれて弱々しい喘ぎが漏れる。
気持ちよくて、もっとして欲しくて、でも同時に心の底から憎らしい。

「ン…っ、そこ、ばっか…しつこいんだよ…ッ」

「そうか?お前の中はもっとしてくれって言ってるが」

「そんなわけあるか…!下手くそ!」

「可愛くねぇな」

そんな事を言いながらグリニッジの唇がエテュセの額に触れて、頬に触れて、そして唇に押し付けられる。噛んでやろうと思ったのに柔らかく上唇を吸われ、体がゾクゾクと快楽を拾って思わず腰を揺らした。

「あ…!は、ぁ…ッ」

唇から下に滑らせ、首筋を舐め、そのまま辿り着いた胸の粒を優しく吸われ予期せぬ刺激にまた体が撓る。

「ん、や…!」

騎士らしく逞しい肩を押し返そうとするが当然びくともしない。エテュセの抵抗など子供の戯れ程度にしか感じないのだろう。グリニッジは笑ってその手を粗末なシーツに押し付けてゆるゆると緩慢に動かしていた腰を一度ギリギリまで引いて、そして強く最奥へ押し付けた。

「あぁぁーーーッ!!」

それだけでもう何度目かの白濁を飛ばすエテュセを尚も攻め立てて、可愛くない悪態ばかりついていた唇から甘い喘ぎしか聞こえなくなるまで何度も絶頂させて。

「お前の覚悟はよくわかった」

やがてくたり、と気を失ったその体を強く抱きしめる。
神子の為に全てをかけると言うのなら、自分も国の為に全てをかけよう。

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