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第三章 神子
無事で良かった
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しばらく3人に代わる代わる抱き締められて、流石に俺がくたびれてきたのに気付いたらしいディアが俺をローゼンの腕に託した。うぅ…体力落ちてるなぁ…。こんなに起きてるのが辛いなんて…。
「私は殿下に報告に行く。…スナオ、また後でな」
額にちゅ、っとキスしてから転移陣に消えていくディアを見送ってティエに視線を移すと、ティエは何か葛藤を繰り広げてた。
「…ティエ…?」
どうした。そんなしかめっ面初めて見るよ。
「…このまま仕事をサボってスナオと一緒にいたい自分と戦ってる」
ローのドヤ顔がめっちゃ腹立つ、とローゼンの足を踏みまくってるティエの頭を撫でた。
「あの…俺、ちゃんと大人しく待ってるから…早く仕事終わらせて帰ってきてね。俺ももうみんなと離れたくないんだ」
本当はこのままみんなと一緒に部屋に帰りたいんだよ。それでずっとくっついていたい。だけどそれは俺の我儘だから、ちゃんと仕事が終わるまで我慢する。
「…んあぁぁーーー!最速で終わらせてくるから!」
葛藤を叫びで振り払ったらしいティエがそう言って、頬にキスして窓辺に足をかけ、そのまま消えた。…出ていくのもそこからなんだ…?え、大丈夫なの?どうなってるの?
「全くあいつは…」
苦笑いしたローゼンが俺を抱えたまま窓を閉めにいったから恐る恐る下を覗くけどそこにティエの姿はもうなかった。早!!っていうか、一体どこから来てどこに帰って行ったんだ…?地面には足跡なかったけど。
困惑している俺にも苦笑いしつつ、もういいですか?と確認して窓を閉めたローゼンが俺をしっかりと抱えなおした。
「…スナオ様、腹は減ってませんか?」
「ん…減った。ローゼンのご飯が食べたい」
いつもの問いにそう答えたら、またローゼンに強く抱きしめられたけど自分でもわかる。きっとほとんど食事摂ってなかったんだって。元々みんなに比べたら細かった腕はさらに細くなってるし、なんだかカサついてるし。足にも力が入りにくくて体は酷く怠い。胃も痛いし。
(あ…そういえば)
モゾモゾと腕の中で動く俺を歩きながら不思議そうに見ていたローゼンが、あ、と小さく呟いた。
俺のぺったんこになった腹に、ぼんやりと覚えてるあの不気味な紋様の姿がない。本当に父さん達が持っててくれてるんだ。
「…紋様が…」
やっぱりみんなにも見られてるよね。
「…夢であった事、みんな揃ったら話すね。ーーー朝陽にも関わる事だから、アンリエッタさんも呼んで欲しいんだ」
わかりました、ってそれ以上訊かなかったローゼンはやっぱり大人だなぁ、と思いながらその腕に揺られてるうちに一瞬寝てたようで、ハッと気付いたらローゼンの部屋のベッドだった。目を開けたら目の前には今にも泣きそうな顔のエテュセがいて。
「ス、スナオ様…ッ!!」
「エテュセ…。無事で良かった」
顔を覆って泣き出してしまったエテュセの頭を撫でる。
そうだった。エテュセにも嫌な物を見せて悲しませてしまったんだった。相変わらず俺の中では遠い過去の出来事みたいなぼんやりした記憶だけど、エテュセにとってはつい最近の事だ。
「僕…、スナオ様をお助けできなくて…!!」
あ。“僕”に戻ってる。
ゆっくり体を起こそうとしたらエテュセが慌てて背中に手を添えて起こしてくれる。その体をぎゅっと抱き締めた。
「ごめんね、エテュセ。辛い思いさせて」
「いいえ…っ!スナオ様こそお辛かったでしょう…!お側にいる事も出来ず、申し訳ありません…!!」
ぎゅうぎゅう抱き着いて声をあげて泣くエテュセの頭を撫で続ける。今は記憶がぼんやりしてる俺より、全部覚えてるエテュセの方がよっぽど辛い筈だ。俺だって目の前でエテュセが傷つけられて、自分は何も出来なかったら辛いし悲しい。
「エテュセ、俺は大丈夫だから」
そんなに責任を感じないで欲しい。人質を取られたあの状態ならどうにもならなかったし。あれが俺とエテュセしかいない状態だったらまだ何かやりようはあったけど、後ろには子供達がいたし。
そこでハッと気付く。そうだ。子供達は、アルベール君は無事なんだろうか。
「…エテュセ、あの村の子供達は?」
「全員無事だと聞いております。スナオ様の人魚の涙が子供達を守った、と」
そうか。やっぱりアイツ俺がついていっても全員殺すつもりだったんだな。最低だ。
「しばらくは騎士団寮で保護していましたが、今は孤児院に引き取られたそうです。アサヒ殿のご子息はまだ乳母が必要なのでルシアム家で保護されているそうですが」
アルベール君もちゃんと生きてる。
朝陽の話では前4回の人生ではこの時期もうすでに朝陽は死んでる。あのモンスターの襲撃があった日を超えて生きてるのは今回が初めてらしいし、さっきアンリエッタさんも、って言った時にローゼンは普通に応じてくれたからきっとまだ生きてる筈だ。
だったらまだ間に合う。朝陽が人生を諦めなくて良いようにまだ俺に出来る事がある。
エテュセの涙を袖で拭ってやると、スナオ様の服が汚れます、と慌てて自分で擦るエテュセに言う。
「ただいま、エテュセ。エテュセが無事でホントに良かった」
「…はい…ッ、おかえりなさい!スナオ様…!」
「私は殿下に報告に行く。…スナオ、また後でな」
額にちゅ、っとキスしてから転移陣に消えていくディアを見送ってティエに視線を移すと、ティエは何か葛藤を繰り広げてた。
「…ティエ…?」
どうした。そんなしかめっ面初めて見るよ。
「…このまま仕事をサボってスナオと一緒にいたい自分と戦ってる」
ローのドヤ顔がめっちゃ腹立つ、とローゼンの足を踏みまくってるティエの頭を撫でた。
「あの…俺、ちゃんと大人しく待ってるから…早く仕事終わらせて帰ってきてね。俺ももうみんなと離れたくないんだ」
本当はこのままみんなと一緒に部屋に帰りたいんだよ。それでずっとくっついていたい。だけどそれは俺の我儘だから、ちゃんと仕事が終わるまで我慢する。
「…んあぁぁーーー!最速で終わらせてくるから!」
葛藤を叫びで振り払ったらしいティエがそう言って、頬にキスして窓辺に足をかけ、そのまま消えた。…出ていくのもそこからなんだ…?え、大丈夫なの?どうなってるの?
「全くあいつは…」
苦笑いしたローゼンが俺を抱えたまま窓を閉めにいったから恐る恐る下を覗くけどそこにティエの姿はもうなかった。早!!っていうか、一体どこから来てどこに帰って行ったんだ…?地面には足跡なかったけど。
困惑している俺にも苦笑いしつつ、もういいですか?と確認して窓を閉めたローゼンが俺をしっかりと抱えなおした。
「…スナオ様、腹は減ってませんか?」
「ん…減った。ローゼンのご飯が食べたい」
いつもの問いにそう答えたら、またローゼンに強く抱きしめられたけど自分でもわかる。きっとほとんど食事摂ってなかったんだって。元々みんなに比べたら細かった腕はさらに細くなってるし、なんだかカサついてるし。足にも力が入りにくくて体は酷く怠い。胃も痛いし。
(あ…そういえば)
モゾモゾと腕の中で動く俺を歩きながら不思議そうに見ていたローゼンが、あ、と小さく呟いた。
俺のぺったんこになった腹に、ぼんやりと覚えてるあの不気味な紋様の姿がない。本当に父さん達が持っててくれてるんだ。
「…紋様が…」
やっぱりみんなにも見られてるよね。
「…夢であった事、みんな揃ったら話すね。ーーー朝陽にも関わる事だから、アンリエッタさんも呼んで欲しいんだ」
わかりました、ってそれ以上訊かなかったローゼンはやっぱり大人だなぁ、と思いながらその腕に揺られてるうちに一瞬寝てたようで、ハッと気付いたらローゼンの部屋のベッドだった。目を開けたら目の前には今にも泣きそうな顔のエテュセがいて。
「ス、スナオ様…ッ!!」
「エテュセ…。無事で良かった」
顔を覆って泣き出してしまったエテュセの頭を撫でる。
そうだった。エテュセにも嫌な物を見せて悲しませてしまったんだった。相変わらず俺の中では遠い過去の出来事みたいなぼんやりした記憶だけど、エテュセにとってはつい最近の事だ。
「僕…、スナオ様をお助けできなくて…!!」
あ。“僕”に戻ってる。
ゆっくり体を起こそうとしたらエテュセが慌てて背中に手を添えて起こしてくれる。その体をぎゅっと抱き締めた。
「ごめんね、エテュセ。辛い思いさせて」
「いいえ…っ!スナオ様こそお辛かったでしょう…!お側にいる事も出来ず、申し訳ありません…!!」
ぎゅうぎゅう抱き着いて声をあげて泣くエテュセの頭を撫で続ける。今は記憶がぼんやりしてる俺より、全部覚えてるエテュセの方がよっぽど辛い筈だ。俺だって目の前でエテュセが傷つけられて、自分は何も出来なかったら辛いし悲しい。
「エテュセ、俺は大丈夫だから」
そんなに責任を感じないで欲しい。人質を取られたあの状態ならどうにもならなかったし。あれが俺とエテュセしかいない状態だったらまだ何かやりようはあったけど、後ろには子供達がいたし。
そこでハッと気付く。そうだ。子供達は、アルベール君は無事なんだろうか。
「…エテュセ、あの村の子供達は?」
「全員無事だと聞いております。スナオ様の人魚の涙が子供達を守った、と」
そうか。やっぱりアイツ俺がついていっても全員殺すつもりだったんだな。最低だ。
「しばらくは騎士団寮で保護していましたが、今は孤児院に引き取られたそうです。アサヒ殿のご子息はまだ乳母が必要なのでルシアム家で保護されているそうですが」
アルベール君もちゃんと生きてる。
朝陽の話では前4回の人生ではこの時期もうすでに朝陽は死んでる。あのモンスターの襲撃があった日を超えて生きてるのは今回が初めてらしいし、さっきアンリエッタさんも、って言った時にローゼンは普通に応じてくれたからきっとまだ生きてる筈だ。
だったらまだ間に合う。朝陽が人生を諦めなくて良いようにまだ俺に出来る事がある。
エテュセの涙を袖で拭ってやると、スナオ様の服が汚れます、と慌てて自分で擦るエテュセに言う。
「ただいま、エテュセ。エテュセが無事でホントに良かった」
「…はい…ッ、おかえりなさい!スナオ様…!」
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