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第三章 神子
ただいま
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「朝陽!」
ハッと目を開けると、そこは見覚えがあるようなないような場所で。
あれ…ダティスハリアの部屋じゃない…??
どこだここ?
「あいたた…」
ギシギシ煩い関節を撫でつつ体を起こす。部屋は何か空調が効いてるのかじんわり暖かくて、ゆっくりと布団から出た。
「うわ…、と…」
立とうとしたらよろよろと体がふらついてベッドに尻もちをついてしまう。
おかしいな。足に力が入らない。それでも気合いを入れ直して何とか立ち上がる。
もう一度周りを見回して、ようやく家具とか何もないけど雰囲気がローゼンの部屋に似てるな、って気付いた。まぁローゼンの部屋はここより広くてキッチンとかもついてたけど。
ふと見たカーテンがボロボロで、それでようやく思い出す。ぼんやりしてるけど…多分あれ、俺がやったやつ…だよな。油断すると力が抜けそうな膝を叱咤して窓に近寄ったら窓枠に雪が積もってて。
「雪だぁ…!」
でも窓は開かないように細工されてるみたいで雪に触れなくて、ちょっと残念。それに多分この窓…俺が飛び降りたりしないように、だよな…?薄ぼんやりとだけど怖くて騒いだ記憶はあるんだ。子供の頃の記憶かってくらいぼんやりとしか思い出せないんだけど。
部屋から出てみようかな?鍵かかってるかな?なんて振り返った先で、ガラン、とタライみたいな入れ物を落としたのはローゼンだった。幽霊を見た!的な驚愕の表情で固まってる。
しばらく無言で見つめ合って、ちょっと居たたまれなくなってきたから
「え…っと、…お、おはよう…?」
なんて言ったら物凄い早さで側に来たローゼンに無言で抱き締められた。
その早さが一瞬怖かったんだけど、痛いくらい抱き締められて、ローゼンのペパーミントみたいな匂いが鼻を擽って、ああ、帰ってきたんだな、って。俺もローゼンの首に抱き付く。
「ローゼン、会いたかった」
本当に会いたかったんだよ。もう一度会えて本当に嬉しい。
そんな言葉を言いたかったけど、溢れた涙に邪魔されて喋れなくて。だから無言でローゼンにしがみついた。
ローゼンも無言で俺を強く抱き締めてくれる。肩がじんわり濡れてる感覚がするからローゼンも泣いてるみたいで申し訳なくなった。
「ごめんなさい…」
心配かけて。迷惑かけて。自分の体一つ守れなくて。
「…ごめんなさい」
「謝らないで良いんです。貴方は何も悪くない」
顔を上げたローゼンはやっぱり泣いてて、だけど俺を安心させるように優しく笑ってくれて、そのままキスしてくれた。
ああ、久しぶりのローゼンのキスだ、って思ったらもう涙が止まらなくて。
「会いたかった…!」
「俺もです」
またしばらくお互いに抱き合って、それからローゼンは俺を抱え直す。
「…ろーぜん?」
すっかり鼻声になってしまった…。
「捕まっていてください」
団長とパルティエータは仕事ですから、と言われて頷く。
本当は仕事中邪魔したら駄目だろう。でも俺は早く二人にも会いたかったから黙ってローゼンにしがみつく。ローゼンは片手で器用に自分の上着を脱いで俺に被せると物凄い勢いで走り出した。
うわわわわわ!!!何かのアトラクションか…!!!?早いーーー!!
バンッ!!と凄まじい勢いでドアを蹴り開けたローゼンに、中にいたディアが流石に驚いて顔を上げた。で、バッチリ俺と目が合ってさらに驚愕の表情になる。やっぱり幽霊を見た!的な顔だ。
「あの…ディア…、心配かけてごめんなさい」
ガタン、と立ち上がったディアも素早く側にやって来て、その勢いにびくり、と飛び上がったんだけど。ローゼンの腕から俺をそっと抱き上げて、それから抱き締めてくれる。その間にローゼンは、パルティエータを呼んできます、とまた猛然と去っていった。
「スナオ…!」
ディアのこんな声初めて聞いた。ぎゅ、って力強く抱き締めて、何度も名前を呼ぶディアにしがみつく。
「会いたかった」
「私もだ」
「…俺の事嫌いにならないで」
「なるわけないだろう」
ディアが泣いてるのも初めて見るなぁ。アイスブルーの瞳からぽろり、ぽろり、と落ちる涙が綺麗で、ギシギシ痛む関節に気合いを入れて濡れる頬を両手で包む。
「暖かい」
「ああ」
「…夢じゃない…?」
「私も同じことを訊きたい」
額に、頬に唇を押し当てられて、最後に唇にキスしてくれるのがたまらなく嬉しくて。唇が離れるとまたお互い強く抱き合う。
ディアの甘いバニラの匂いを一杯吸い込んで思いっきり抱き付いてたら…窓がドバァン!!と物凄い音を立てて開いた。
因みに騎士団棟の窓は全部強化ガラスでちょっとやそっとじゃ割れないらしい。いや、それにしたって激しすぎないか、とびっくりして振り向いたら、雪まみれで大きく目を見開いたティエがいた。
「…スナオ…?」
「ティエ…!」
「スナオ!!!」
移動する風で書類が舞うくらいの勢いのまま俺の側に来たティエは、それでもディアと同じように俺をそっ、と抱き上げる。
片腕に乗せて、反対の手で俺の頬に触れて、体に触れて、それからくしゃり、と顔を歪めた。
「スナオ…!」
「ティエ…、ごめんね」
「良かった…!スナオ…!」
ボロボロ泣いて何度も俺にキスするティエに俺も泣きながらしがみついて。ティエにも、会いたかった、って何度も伝える。
ローゼンが戻ってきて、俺は二人にも手を伸ばして三人分の手をまとめて握った。本当は抱き締めたかったけど顔ムギュ、ってなっちゃうから手で我慢する。
会いたかったよ。みんなの事忘れても、ここに帰りたかったんだよ。どこに行けばいいかわかんなくなって、悲しくて、苦しくて、でもずっとみんなの所に帰りたかった。
「みんな…、ただいま…っ!」
おかえり、ってみんなそれぞれ言ってくれて、もう一回ずつキスをした。
ハッと目を開けると、そこは見覚えがあるようなないような場所で。
あれ…ダティスハリアの部屋じゃない…??
どこだここ?
「あいたた…」
ギシギシ煩い関節を撫でつつ体を起こす。部屋は何か空調が効いてるのかじんわり暖かくて、ゆっくりと布団から出た。
「うわ…、と…」
立とうとしたらよろよろと体がふらついてベッドに尻もちをついてしまう。
おかしいな。足に力が入らない。それでも気合いを入れ直して何とか立ち上がる。
もう一度周りを見回して、ようやく家具とか何もないけど雰囲気がローゼンの部屋に似てるな、って気付いた。まぁローゼンの部屋はここより広くてキッチンとかもついてたけど。
ふと見たカーテンがボロボロで、それでようやく思い出す。ぼんやりしてるけど…多分あれ、俺がやったやつ…だよな。油断すると力が抜けそうな膝を叱咤して窓に近寄ったら窓枠に雪が積もってて。
「雪だぁ…!」
でも窓は開かないように細工されてるみたいで雪に触れなくて、ちょっと残念。それに多分この窓…俺が飛び降りたりしないように、だよな…?薄ぼんやりとだけど怖くて騒いだ記憶はあるんだ。子供の頃の記憶かってくらいぼんやりとしか思い出せないんだけど。
部屋から出てみようかな?鍵かかってるかな?なんて振り返った先で、ガラン、とタライみたいな入れ物を落としたのはローゼンだった。幽霊を見た!的な驚愕の表情で固まってる。
しばらく無言で見つめ合って、ちょっと居たたまれなくなってきたから
「え…っと、…お、おはよう…?」
なんて言ったら物凄い早さで側に来たローゼンに無言で抱き締められた。
その早さが一瞬怖かったんだけど、痛いくらい抱き締められて、ローゼンのペパーミントみたいな匂いが鼻を擽って、ああ、帰ってきたんだな、って。俺もローゼンの首に抱き付く。
「ローゼン、会いたかった」
本当に会いたかったんだよ。もう一度会えて本当に嬉しい。
そんな言葉を言いたかったけど、溢れた涙に邪魔されて喋れなくて。だから無言でローゼンにしがみついた。
ローゼンも無言で俺を強く抱き締めてくれる。肩がじんわり濡れてる感覚がするからローゼンも泣いてるみたいで申し訳なくなった。
「ごめんなさい…」
心配かけて。迷惑かけて。自分の体一つ守れなくて。
「…ごめんなさい」
「謝らないで良いんです。貴方は何も悪くない」
顔を上げたローゼンはやっぱり泣いてて、だけど俺を安心させるように優しく笑ってくれて、そのままキスしてくれた。
ああ、久しぶりのローゼンのキスだ、って思ったらもう涙が止まらなくて。
「会いたかった…!」
「俺もです」
またしばらくお互いに抱き合って、それからローゼンは俺を抱え直す。
「…ろーぜん?」
すっかり鼻声になってしまった…。
「捕まっていてください」
団長とパルティエータは仕事ですから、と言われて頷く。
本当は仕事中邪魔したら駄目だろう。でも俺は早く二人にも会いたかったから黙ってローゼンにしがみつく。ローゼンは片手で器用に自分の上着を脱いで俺に被せると物凄い勢いで走り出した。
うわわわわわ!!!何かのアトラクションか…!!!?早いーーー!!
バンッ!!と凄まじい勢いでドアを蹴り開けたローゼンに、中にいたディアが流石に驚いて顔を上げた。で、バッチリ俺と目が合ってさらに驚愕の表情になる。やっぱり幽霊を見た!的な顔だ。
「あの…ディア…、心配かけてごめんなさい」
ガタン、と立ち上がったディアも素早く側にやって来て、その勢いにびくり、と飛び上がったんだけど。ローゼンの腕から俺をそっと抱き上げて、それから抱き締めてくれる。その間にローゼンは、パルティエータを呼んできます、とまた猛然と去っていった。
「スナオ…!」
ディアのこんな声初めて聞いた。ぎゅ、って力強く抱き締めて、何度も名前を呼ぶディアにしがみつく。
「会いたかった」
「私もだ」
「…俺の事嫌いにならないで」
「なるわけないだろう」
ディアが泣いてるのも初めて見るなぁ。アイスブルーの瞳からぽろり、ぽろり、と落ちる涙が綺麗で、ギシギシ痛む関節に気合いを入れて濡れる頬を両手で包む。
「暖かい」
「ああ」
「…夢じゃない…?」
「私も同じことを訊きたい」
額に、頬に唇を押し当てられて、最後に唇にキスしてくれるのがたまらなく嬉しくて。唇が離れるとまたお互い強く抱き合う。
ディアの甘いバニラの匂いを一杯吸い込んで思いっきり抱き付いてたら…窓がドバァン!!と物凄い音を立てて開いた。
因みに騎士団棟の窓は全部強化ガラスでちょっとやそっとじゃ割れないらしい。いや、それにしたって激しすぎないか、とびっくりして振り向いたら、雪まみれで大きく目を見開いたティエがいた。
「…スナオ…?」
「ティエ…!」
「スナオ!!!」
移動する風で書類が舞うくらいの勢いのまま俺の側に来たティエは、それでもディアと同じように俺をそっ、と抱き上げる。
片腕に乗せて、反対の手で俺の頬に触れて、体に触れて、それからくしゃり、と顔を歪めた。
「スナオ…!」
「ティエ…、ごめんね」
「良かった…!スナオ…!」
ボロボロ泣いて何度も俺にキスするティエに俺も泣きながらしがみついて。ティエにも、会いたかった、って何度も伝える。
ローゼンが戻ってきて、俺は二人にも手を伸ばして三人分の手をまとめて握った。本当は抱き締めたかったけど顔ムギュ、ってなっちゃうから手で我慢する。
会いたかったよ。みんなの事忘れても、ここに帰りたかったんだよ。どこに行けばいいかわかんなくなって、悲しくて、苦しくて、でもずっとみんなの所に帰りたかった。
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おかえり、ってみんなそれぞれ言ってくれて、もう一回ずつキスをした。
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