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第三章 神子
懐かしいお茶の味
うわぁ…、何か羊と牧羊犬にモフモフされる夢みたわ…。モフモフ最高だな!早くモフモフに囲まれた生活したいなぁ。…ホントにそんな生活が出来るかどうか謎ですが。
「起きたか」
額にかかる前髪をそっと指で避けてくれるディアに手を伸ばしたら小さく笑って抱き起してくれた。モフモフも癒しだけど、今はみんなにくっついてるのが一番癒される…。
「おかえりー」
「熱は下がったか?」
「全然~」
でも離れたくないから怠いけどそのまま首に抱き着いた。微笑んだローゼンが上着をかけてくれて、ついでに頭も撫でてくれる。今は子供みたいだって思われてもいいから全力で甘えていたい。
「スナオ様、腹は減ってませんか」
いつもの問いにくすくす笑った。
「減ってないけど、ローゼンのご飯食べたい」
わかりました、とまた微笑んで出ていくローゼンを見送って部屋の隅にあるポットみたいな魔道具からお湯を注いでお茶の用意をしてるティエを眺めてたら、
「パーピュアから薬も預かっている。何か腹に入れてから飲むと良い」
片手で軽々俺を抱えたディアにも頭を撫でられてまたその首に縋った。俺の体が熱い所為だろう。ディアの体は少しひんやりしてて気持ちがいい。頬に擦り寄って、その長い銀髪を指に絡ませた。一瞬頭を過る濃紺の髪はギュッと目を閉じて記憶から締め出して、ソファーに腰かけるディアの膝の上で窓の外を眺める。外はもう真っ暗で窓枠には白い雪が積もってる。
「…朝陽…早く助けに行かないと」
「この雪では騎士団は動けない。早くとも雪解けの一月後だ。お前もその状態で旅に出られると思うか?」
「…思わない」
出たところできっとこうして熱ばかり出して足手まといになって迷惑をかけてしまう。何の役にも立てないのについて行っても意味がない。
「アンリエッタさんが暴走しないかな」
「騎士団から監視をつけているが、本人も雪が深い時には動けないとわかっている。今はルシアム家でアルベールといるそうだ」
「そっか」
自分が側にいる方が危ない、とアンリエッタさんが言ったのだと聞いた。だから大切な朝陽との子供を置いてグレイブ・アンヘルに戻っていたのだと。
朝陽の話が本当ならアンリエッタさんはアルベール君と一緒に死んでしまう。もしかしたら自分でもその内我が子を手にかけてしまうかもしれない恐怖があったのかな。だけどアルベール君だけでも生きて欲しいと思ったからわざわざ引き取ってくれそうなルシアム家を選んだのかな。でもそのアルベール君の元に自分から戻っていったのならきっとアンリエッタさんも希望を取り戻したんだろう。後はその希望が消えないように、朝陽がもう諦めなくていいように、早く体力戻して助けに行くからね。
ただ唯一気になるのはあの夢の人。夢の中はいつも雷が鳴ってた。そして朝陽は雷が鳴る、って言ってた。それってあの場所の事なんだろうか。だったら、朝陽を連れ去ったのはあの人?
「スナオ、このカップは持てる?」
考え込んでたらティエの声がして、ハッと我に返る。いつものどんぶりみたいじゃない、俺の良く知るサイズのカップを差し出されてた。
「ん…」
受け取って中を覗くと薄っすら緑色の緑茶みたいなお茶が入ってる。しかも香りも緑茶っぽい。緑茶が紅茶カップに入ってる見た目が違和感半端ないけど、懐かしい匂いだ。
「これ…、俺のいた世界のお茶と同じ匂いがする」
「そうなの?スナオがご飯を食べられなかった時にピュアから預かってたの。これならスナオも飲めるかも知れない、って」
一口飲むと口に広がる懐かしい味。実家では食後決まって緑茶が出てきた。俺はあんまりお茶は好きじゃなかったけど、出されたからにはと渋々飲んでた記憶が蘇る。一人暮らしの時はコーヒーだったな。でもきっと両親が生きてて、俺がこの世界に来なかったら今でも実家に戻った時は緑茶を渋々飲んでたんだろうな。もう絶対出来ない事を想像してうっかり涙ぐんでしまった。
「どうした?」
すぐ気付いたディアに訊かれ誤魔化すようにもう一口。
「…このお茶って売ってるの?」
「ナフィーリアにあるそうよ」
「そうなんだ!」
結局まだ行けてないんだよな。レオニスはいつでも歓迎するって言ってくれたけど、ナフィーリアって結構内乱が起こる事が多いらしいし。下剋上狙いで王族は狙われやすいんだとか。けど今はレオニス達が強いから比較的平和みたいだけど。だからこそあの時アークオランに攻めて来たんだし…。基本的に血の気が多い、って言ったのはティエだったっけ?
「食事をお持ちしました」
一気に飲むと胃が痛くなりそうだったからちびちびと飲んでた所へローゼンが戻ってくる。後ろに続いた燕尾服に体がびくり、と飛び上がるけど見上げた顔はあの厳しくも悲し気な顔をする丸眼鏡の人じゃなく、優しい顔立ちの初老の人だった。
「お初にお目にかかります。執事のオーマイアと申します」
「初めまして…。えっと、朴と申します」
急な執事の登場に驚きすぎてしどろもどろに自己紹介するとオーマイアさんはにっこりと人の良さそうな顔で微笑んだ。笑うと目元に寄る皺も何だか優し気な風貌に一役買っている。
「存じております。奥様」
…今、なんと?あれ、俺耳おかしくなったかな?
「起きたか」
額にかかる前髪をそっと指で避けてくれるディアに手を伸ばしたら小さく笑って抱き起してくれた。モフモフも癒しだけど、今はみんなにくっついてるのが一番癒される…。
「おかえりー」
「熱は下がったか?」
「全然~」
でも離れたくないから怠いけどそのまま首に抱き着いた。微笑んだローゼンが上着をかけてくれて、ついでに頭も撫でてくれる。今は子供みたいだって思われてもいいから全力で甘えていたい。
「スナオ様、腹は減ってませんか」
いつもの問いにくすくす笑った。
「減ってないけど、ローゼンのご飯食べたい」
わかりました、とまた微笑んで出ていくローゼンを見送って部屋の隅にあるポットみたいな魔道具からお湯を注いでお茶の用意をしてるティエを眺めてたら、
「パーピュアから薬も預かっている。何か腹に入れてから飲むと良い」
片手で軽々俺を抱えたディアにも頭を撫でられてまたその首に縋った。俺の体が熱い所為だろう。ディアの体は少しひんやりしてて気持ちがいい。頬に擦り寄って、その長い銀髪を指に絡ませた。一瞬頭を過る濃紺の髪はギュッと目を閉じて記憶から締め出して、ソファーに腰かけるディアの膝の上で窓の外を眺める。外はもう真っ暗で窓枠には白い雪が積もってる。
「…朝陽…早く助けに行かないと」
「この雪では騎士団は動けない。早くとも雪解けの一月後だ。お前もその状態で旅に出られると思うか?」
「…思わない」
出たところできっとこうして熱ばかり出して足手まといになって迷惑をかけてしまう。何の役にも立てないのについて行っても意味がない。
「アンリエッタさんが暴走しないかな」
「騎士団から監視をつけているが、本人も雪が深い時には動けないとわかっている。今はルシアム家でアルベールといるそうだ」
「そっか」
自分が側にいる方が危ない、とアンリエッタさんが言ったのだと聞いた。だから大切な朝陽との子供を置いてグレイブ・アンヘルに戻っていたのだと。
朝陽の話が本当ならアンリエッタさんはアルベール君と一緒に死んでしまう。もしかしたら自分でもその内我が子を手にかけてしまうかもしれない恐怖があったのかな。だけどアルベール君だけでも生きて欲しいと思ったからわざわざ引き取ってくれそうなルシアム家を選んだのかな。でもそのアルベール君の元に自分から戻っていったのならきっとアンリエッタさんも希望を取り戻したんだろう。後はその希望が消えないように、朝陽がもう諦めなくていいように、早く体力戻して助けに行くからね。
ただ唯一気になるのはあの夢の人。夢の中はいつも雷が鳴ってた。そして朝陽は雷が鳴る、って言ってた。それってあの場所の事なんだろうか。だったら、朝陽を連れ去ったのはあの人?
「スナオ、このカップは持てる?」
考え込んでたらティエの声がして、ハッと我に返る。いつものどんぶりみたいじゃない、俺の良く知るサイズのカップを差し出されてた。
「ん…」
受け取って中を覗くと薄っすら緑色の緑茶みたいなお茶が入ってる。しかも香りも緑茶っぽい。緑茶が紅茶カップに入ってる見た目が違和感半端ないけど、懐かしい匂いだ。
「これ…、俺のいた世界のお茶と同じ匂いがする」
「そうなの?スナオがご飯を食べられなかった時にピュアから預かってたの。これならスナオも飲めるかも知れない、って」
一口飲むと口に広がる懐かしい味。実家では食後決まって緑茶が出てきた。俺はあんまりお茶は好きじゃなかったけど、出されたからにはと渋々飲んでた記憶が蘇る。一人暮らしの時はコーヒーだったな。でもきっと両親が生きてて、俺がこの世界に来なかったら今でも実家に戻った時は緑茶を渋々飲んでたんだろうな。もう絶対出来ない事を想像してうっかり涙ぐんでしまった。
「どうした?」
すぐ気付いたディアに訊かれ誤魔化すようにもう一口。
「…このお茶って売ってるの?」
「ナフィーリアにあるそうよ」
「そうなんだ!」
結局まだ行けてないんだよな。レオニスはいつでも歓迎するって言ってくれたけど、ナフィーリアって結構内乱が起こる事が多いらしいし。下剋上狙いで王族は狙われやすいんだとか。けど今はレオニス達が強いから比較的平和みたいだけど。だからこそあの時アークオランに攻めて来たんだし…。基本的に血の気が多い、って言ったのはティエだったっけ?
「食事をお持ちしました」
一気に飲むと胃が痛くなりそうだったからちびちびと飲んでた所へローゼンが戻ってくる。後ろに続いた燕尾服に体がびくり、と飛び上がるけど見上げた顔はあの厳しくも悲し気な顔をする丸眼鏡の人じゃなく、優しい顔立ちの初老の人だった。
「お初にお目にかかります。執事のオーマイアと申します」
「初めまして…。えっと、朴と申します」
急な執事の登場に驚きすぎてしどろもどろに自己紹介するとオーマイアさんはにっこりと人の良さそうな顔で微笑んだ。笑うと目元に寄る皺も何だか優し気な風貌に一役買っている。
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