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第三章 神子
このまま続けたら
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「一つ目!」
一番靄が薄くなった場所にしっかり差し込んだのは小さなナイフだ。
俺だけでは瘴気の親玉とも言えるナスティールの瘴気を消せないのはわかってたから浄化を補助する道具は必須だった。柄には俺の血が少し使われてて、刃の部分には神剣に使われてた紋様が刻んである。
即席の小さな神剣もどきが出来がったのは昨日の事。でも実際本当に瘴気に効果があるのかしっかりとした検証は出来なかった。だけど今は第三騎士団が何日も徹夜で研究して作ってくれた神剣もどきの効果を信じるしかない。
最初のナイフを刺した周りから新しい瘴気が出てきてないのを確認して次の場所に移る。広範囲で合計5つ。一番瘴気が噴き出す量が多い場所を中心に五芒星を描くようにナイフを刺して新たな瘴気を五芒星の中心に集めて、一気に浄化する作戦だ。
みんなは今回はある程度抑える事が出来たらそれで良いって言ってたけど、多分そんな中途半端な状態じゃ勝てない。俺がどこまで保つかわからないけど、絶対浄化は成功させてみせるから。あの夢みたいに俺だけ生き残ったって意味がないもんな。
二つ目のナイフを刺した所に襲ってきたモンスターの爪をパーピュアの風が切り裂いて、その横から来たアンダルクの斬撃をローゼンが止める。俺の背後とかすぐ頭上で繰り広げられる激闘を気にする余裕はない。
(痛い…)
俺の浄化の仕方は琴音が最初にやってた方法。俺より強そうだった過去の琴音だって瘴気の浄化を生身でできなかったから神子の剣とか神剣が生まれた。
なら今現在生身でこれだけの瘴気を浄化しようとしてる俺はきっと無謀なんだろう。
(でも今ここでやらなかったら神子なんている意味ない)
新たなナイフを片手に次の目的地を目指した。
◇
ガキン、と刃がぶつかり火花を散らす。琴音の手に握られているのは大神殿から盗まれた神子の剣だ。人は斬れない、と言われていたその刃はディカイアスの部下の血で濡れている。
「生きているな、パルティエータ」
「何人かやられました」
浴びた仲間の血は激しい雨で流れ落ちていく。まだ息がある怪我人も多いが後方支援部隊もモンスターに襲撃されなかなか進めないでいる。
「瘴気が少し減ったね。でも神子の剣はここにある。このまま浄化を続けたら朴が保たないよ?」
「ならば大人しく投降しろ」
「アークオランを根絶やしにするまでは出来ないな」
ひゅ、と振った刃から散った血が雨水と交じりながら地面に落ちた。
琴音に言われるまでもなくディカイアスもわかっている。きっと朴はある程度で、と伝えていても浄化を完了するまでやめないだろうという事が。だから早くこの過去の神子を倒して、その仲間も倒して、朴が心置きなく一旦浄化をやめられるようにしなくてはいけない。
「ならばまず王都に行けばいい。何故そうしない?」
神剣を向けるレイアゼシカに問われ琴音は、ふ、と吐息に乗せて微笑む。
「秘密」
「…お前、王都で暴れられる程の魔力はないんだな?」
本来ならば誰より魔力が高く魔力量も多い筈の神子が魔道具を使った事が不思議だった。確かに治癒が出来ない傷は脅威だったが、それよりも手っ取り早いのは圧倒的な魔力で敵である自分達を捩じ伏せる事。それをしなかったのは琴音の魔力は回復していないからだ。魔力の回復スピードは人それぞれ違う。朴は魔力切れを起こしやすいが魔力切れにならなければ回復は早い。琴音は魔力量が朴より多い分回復は遅いのだろう。番のいない今、魔力切れを起こしたらどうするのか。琴音の倫理感はわからないけれど、メムの本能としては番ではない相手との性行為は相当の苦痛だ。魔法ではなく主に物理で戦うのは魔力切れを恐れているのではないのか。
「これだからアークオランは嫌いなんだ。無駄に察しが良い」
「魔力切れを警戒しながら戦うのは限界があるだろう。とっとと負けを認めたらどうだ」
「魔力が切れる前に自分達が負ける可能性は考えないのかな?」
「オレが死んでもお前達を止められたらオレ達の勝ちだからな」
「なら君こそその首今すぐ差し出してくれない?そしたらこの戦いも終わるのに」
「…だがスナオを諦めるつもりはないんだろう?」
飛びかかって来たモンスターを斬り捨て琴音に刃を向けたディカイアスの言葉に琴音は笑う。
「そうだね。朴は僕と一緒に来てもらうよ」
このまま戦いが長引けば朴の限界が来る。だからそれまで待てばいい、と続く琴音の言葉にパルティエータは剣の柄を握る手に力を込めた。
「そうなる前にアンタを倒せば済む話よ」
「僕の魔力が尽きるのが早いか朴が力尽きるのが早いか…楽しくなってきたね?」
「残念だけど一つも楽しくない!!」
ぬかるんだ地面を蹴ってパルティエータは斬り込んだ。
一番靄が薄くなった場所にしっかり差し込んだのは小さなナイフだ。
俺だけでは瘴気の親玉とも言えるナスティールの瘴気を消せないのはわかってたから浄化を補助する道具は必須だった。柄には俺の血が少し使われてて、刃の部分には神剣に使われてた紋様が刻んである。
即席の小さな神剣もどきが出来がったのは昨日の事。でも実際本当に瘴気に効果があるのかしっかりとした検証は出来なかった。だけど今は第三騎士団が何日も徹夜で研究して作ってくれた神剣もどきの効果を信じるしかない。
最初のナイフを刺した周りから新しい瘴気が出てきてないのを確認して次の場所に移る。広範囲で合計5つ。一番瘴気が噴き出す量が多い場所を中心に五芒星を描くようにナイフを刺して新たな瘴気を五芒星の中心に集めて、一気に浄化する作戦だ。
みんなは今回はある程度抑える事が出来たらそれで良いって言ってたけど、多分そんな中途半端な状態じゃ勝てない。俺がどこまで保つかわからないけど、絶対浄化は成功させてみせるから。あの夢みたいに俺だけ生き残ったって意味がないもんな。
二つ目のナイフを刺した所に襲ってきたモンスターの爪をパーピュアの風が切り裂いて、その横から来たアンダルクの斬撃をローゼンが止める。俺の背後とかすぐ頭上で繰り広げられる激闘を気にする余裕はない。
(痛い…)
俺の浄化の仕方は琴音が最初にやってた方法。俺より強そうだった過去の琴音だって瘴気の浄化を生身でできなかったから神子の剣とか神剣が生まれた。
なら今現在生身でこれだけの瘴気を浄化しようとしてる俺はきっと無謀なんだろう。
(でも今ここでやらなかったら神子なんている意味ない)
新たなナイフを片手に次の目的地を目指した。
◇
ガキン、と刃がぶつかり火花を散らす。琴音の手に握られているのは大神殿から盗まれた神子の剣だ。人は斬れない、と言われていたその刃はディカイアスの部下の血で濡れている。
「生きているな、パルティエータ」
「何人かやられました」
浴びた仲間の血は激しい雨で流れ落ちていく。まだ息がある怪我人も多いが後方支援部隊もモンスターに襲撃されなかなか進めないでいる。
「瘴気が少し減ったね。でも神子の剣はここにある。このまま浄化を続けたら朴が保たないよ?」
「ならば大人しく投降しろ」
「アークオランを根絶やしにするまでは出来ないな」
ひゅ、と振った刃から散った血が雨水と交じりながら地面に落ちた。
琴音に言われるまでもなくディカイアスもわかっている。きっと朴はある程度で、と伝えていても浄化を完了するまでやめないだろうという事が。だから早くこの過去の神子を倒して、その仲間も倒して、朴が心置きなく一旦浄化をやめられるようにしなくてはいけない。
「ならばまず王都に行けばいい。何故そうしない?」
神剣を向けるレイアゼシカに問われ琴音は、ふ、と吐息に乗せて微笑む。
「秘密」
「…お前、王都で暴れられる程の魔力はないんだな?」
本来ならば誰より魔力が高く魔力量も多い筈の神子が魔道具を使った事が不思議だった。確かに治癒が出来ない傷は脅威だったが、それよりも手っ取り早いのは圧倒的な魔力で敵である自分達を捩じ伏せる事。それをしなかったのは琴音の魔力は回復していないからだ。魔力の回復スピードは人それぞれ違う。朴は魔力切れを起こしやすいが魔力切れにならなければ回復は早い。琴音は魔力量が朴より多い分回復は遅いのだろう。番のいない今、魔力切れを起こしたらどうするのか。琴音の倫理感はわからないけれど、メムの本能としては番ではない相手との性行為は相当の苦痛だ。魔法ではなく主に物理で戦うのは魔力切れを恐れているのではないのか。
「これだからアークオランは嫌いなんだ。無駄に察しが良い」
「魔力切れを警戒しながら戦うのは限界があるだろう。とっとと負けを認めたらどうだ」
「魔力が切れる前に自分達が負ける可能性は考えないのかな?」
「オレが死んでもお前達を止められたらオレ達の勝ちだからな」
「なら君こそその首今すぐ差し出してくれない?そしたらこの戦いも終わるのに」
「…だがスナオを諦めるつもりはないんだろう?」
飛びかかって来たモンスターを斬り捨て琴音に刃を向けたディカイアスの言葉に琴音は笑う。
「そうだね。朴は僕と一緒に来てもらうよ」
このまま戦いが長引けば朴の限界が来る。だからそれまで待てばいい、と続く琴音の言葉にパルティエータは剣の柄を握る手に力を込めた。
「そうなる前にアンタを倒せば済む話よ」
「僕の魔力が尽きるのが早いか朴が力尽きるのが早いか…楽しくなってきたね?」
「残念だけど一つも楽しくない!!」
ぬかるんだ地面を蹴ってパルティエータは斬り込んだ。
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