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第三章 神子
泉の奥から
泉の奥から差す後光の中心に、柔らかく波立つ金の髪を持つ誰かが立っている。その人物が一歩踏み出すたびに足元でふわりと白い小さな花が舞い光の玉と一緒に夜空に溶けた。
腰まで届く金の髪に同じく金の瞳。白磁の肌には生気という物を感じないけどだからと言って死者という感じもしない。完璧なまでに整った美貌は見ていて怖い程。
う~ん…多分だけど…これ神様?あれ、でも神様って見たら目が潰れるとかって聞いたような気がするわ。まあもう見ちゃったんだけど。
流石に二人も圧倒されてなのか戸惑ってるのか、一言も話さずただ黙ってその人っぽいものが近付いてくるのを見つめてる。
泉のほとりまでやってきたその人…神様?はつい、と金色の瞳を俺に向けてその桜色の唇を開いた。
『よくぞやり遂げてくれました、神子スナオーーー』
おっと美女っぽい雰囲気だから女神様かと思ってたらまさかの腰砕けバリトンボイスだった!!びっくり!
『これでようやくこの世界も平穏が訪れるでしょうーーー』
うん、そして待ってくれ。一人で話を進めないでくれ。あ、神様って一柱って言うんだっけ?いや今そんなんどうでもいいわ。
「あの…どういう事か訊いても?」
話しかけてもいいんだろうか、と思いながら訊いてみる。
『ーーーこの世界に、いつの頃からか悪しき物が現れました』
曰く、創世の神らしいこの神様は光の溢れる世界を創造したんだとか。争いも何もない平和な楽園みたいな世界を作って人間を住まわせた。なのにそこに悪しき物が入り込んで世界に闇をもたらしたんだって。平和しか知らない人間たちの恐怖とか怒りとか悲しみ苦しみ…そんな負の感情はあっという間に膨らんで悪しき物に力を与えてしまった。ついには神様の力すら凌駕してしまう程に。
神様を封じた悪しき物はどんどん世界を闇に染めていった。神様も封じられながらもなんとかしようとしたらしい。
『そうして私は神子をこの世界に喚び寄せました』
神様の代理として悪しき物と戦わせる為に。それが琴音だった。琴音は悪しき物を倒したけど、悪しき物は今度は琴音を利用してジワジワと復活の兆しを見せていた。
『神子コトネは悪しき物に飲まれてしまった…。しかしこの世界の人間は悪しき物と戦う術を持たなかったのです。だから今度は異世界で死した魂を喚びました』
「ーーーそれが僕、という事ですか?」
『そうです。しかしこの世界の器を与えた貴方は神子にはなれなかった』
それで神様は考えた。琴音の時は最後にダメになったとは言えうまくいっていたから、この世界の人間の器が駄目なのかも知れない。
だから今度は生きたままの朝陽を召喚した。
『しかし貴方もまた神子にはなれなかった』
神様の力はどんどん弱くなっていって、恐らく次が最後の召喚になるだろうと思い考えに考えた。死した魂をこの世界の器に移したら魔力が高い只人になった。生きたままの召喚を行えば物理に特化した只人になった。ならば死した魂とその器をこの世界で蘇らせたらどうか。
『そして来たのが貴方です。神子スナオ』
俺は死んだ俺の体に入ってるのか。なるほど、よくわからん。
でもひとまずわかるのは切羽詰まってたとは言え、異世界からひょいひょい人を喚ぶのはいかがなものか。俺やパーピュアは死んだ後だからまだいいけど、朝陽は生きたまま来てるじゃん!それで神子じゃなかったからはい次~、ってのはあんまりじゃないですかね、神様!
『この世界は我が子と同じ。失いたくはなかった』
「それで他の世界の人間を連れてくるのもどうかと思う」
いや、まぁ俺は死んだから、こうして異世界であっても生きてられるのは幸せな事かも知れないけど…って俺死んだんだったわ。
『貴方方には申し訳ない事をしたと思っています。どうしても世界を守りたいあまり、私は貴方方異世界の子らを巻き込んでしまった』
つつつ、と泉の上を歩く神様。すごいな!やっぱり神様って水の上歩けるんだな!
『神子スナオ、そして異世界の子らよ。貴方方には選択が与えられます』
「選択?」
『元の世界に戻るか…この世界の住人として生きるか』
「元の世界に戻れるの?」
『悪しき物はもういません。私の力を封じるものは何もない。しかし世界渡りは多くは使えません。元の世界に戻れるのは一人だけ』
でもこの世界で生きていく分には神様の力で元の場所に戻してくれるらしい。
「パーピュア、朝陽、帰りたい?」
この薄幸の美少年をパーピュアって呼ぶの違和感あるけど元の名前知らないし仕方ない。
朝陽は肩をすくめて首を横に振った。
「向こうに戻ったって碌でもない親しかいなかったからな。俺はここにいる方が楽しい」
「ーーー僕も戻った所でベッド上の生活だ。こうして健康でいられる今が幸せだから、帰る必要はない」
「う~ん…俺も帰ったって待ってる家族はいないしな…」
それにあのブラック企業に戻りたくないし。
「…琴音…、神様、琴音は?琴音はここにいないのか?」
『神子コトネは悪しき物を連れ、共に消滅しました』
「え…」
『本来ならば魂ごと消滅するのは神子スナオ、貴方だった』
腰まで届く金の髪に同じく金の瞳。白磁の肌には生気という物を感じないけどだからと言って死者という感じもしない。完璧なまでに整った美貌は見ていて怖い程。
う~ん…多分だけど…これ神様?あれ、でも神様って見たら目が潰れるとかって聞いたような気がするわ。まあもう見ちゃったんだけど。
流石に二人も圧倒されてなのか戸惑ってるのか、一言も話さずただ黙ってその人っぽいものが近付いてくるのを見つめてる。
泉のほとりまでやってきたその人…神様?はつい、と金色の瞳を俺に向けてその桜色の唇を開いた。
『よくぞやり遂げてくれました、神子スナオーーー』
おっと美女っぽい雰囲気だから女神様かと思ってたらまさかの腰砕けバリトンボイスだった!!びっくり!
『これでようやくこの世界も平穏が訪れるでしょうーーー』
うん、そして待ってくれ。一人で話を進めないでくれ。あ、神様って一柱って言うんだっけ?いや今そんなんどうでもいいわ。
「あの…どういう事か訊いても?」
話しかけてもいいんだろうか、と思いながら訊いてみる。
『ーーーこの世界に、いつの頃からか悪しき物が現れました』
曰く、創世の神らしいこの神様は光の溢れる世界を創造したんだとか。争いも何もない平和な楽園みたいな世界を作って人間を住まわせた。なのにそこに悪しき物が入り込んで世界に闇をもたらしたんだって。平和しか知らない人間たちの恐怖とか怒りとか悲しみ苦しみ…そんな負の感情はあっという間に膨らんで悪しき物に力を与えてしまった。ついには神様の力すら凌駕してしまう程に。
神様を封じた悪しき物はどんどん世界を闇に染めていった。神様も封じられながらもなんとかしようとしたらしい。
『そうして私は神子をこの世界に喚び寄せました』
神様の代理として悪しき物と戦わせる為に。それが琴音だった。琴音は悪しき物を倒したけど、悪しき物は今度は琴音を利用してジワジワと復活の兆しを見せていた。
『神子コトネは悪しき物に飲まれてしまった…。しかしこの世界の人間は悪しき物と戦う術を持たなかったのです。だから今度は異世界で死した魂を喚びました』
「ーーーそれが僕、という事ですか?」
『そうです。しかしこの世界の器を与えた貴方は神子にはなれなかった』
それで神様は考えた。琴音の時は最後にダメになったとは言えうまくいっていたから、この世界の人間の器が駄目なのかも知れない。
だから今度は生きたままの朝陽を召喚した。
『しかし貴方もまた神子にはなれなかった』
神様の力はどんどん弱くなっていって、恐らく次が最後の召喚になるだろうと思い考えに考えた。死した魂をこの世界の器に移したら魔力が高い只人になった。生きたままの召喚を行えば物理に特化した只人になった。ならば死した魂とその器をこの世界で蘇らせたらどうか。
『そして来たのが貴方です。神子スナオ』
俺は死んだ俺の体に入ってるのか。なるほど、よくわからん。
でもひとまずわかるのは切羽詰まってたとは言え、異世界からひょいひょい人を喚ぶのはいかがなものか。俺やパーピュアは死んだ後だからまだいいけど、朝陽は生きたまま来てるじゃん!それで神子じゃなかったからはい次~、ってのはあんまりじゃないですかね、神様!
『この世界は我が子と同じ。失いたくはなかった』
「それで他の世界の人間を連れてくるのもどうかと思う」
いや、まぁ俺は死んだから、こうして異世界であっても生きてられるのは幸せな事かも知れないけど…って俺死んだんだったわ。
『貴方方には申し訳ない事をしたと思っています。どうしても世界を守りたいあまり、私は貴方方異世界の子らを巻き込んでしまった』
つつつ、と泉の上を歩く神様。すごいな!やっぱり神様って水の上歩けるんだな!
『神子スナオ、そして異世界の子らよ。貴方方には選択が与えられます』
「選択?」
『元の世界に戻るか…この世界の住人として生きるか』
「元の世界に戻れるの?」
『悪しき物はもういません。私の力を封じるものは何もない。しかし世界渡りは多くは使えません。元の世界に戻れるのは一人だけ』
でもこの世界で生きていく分には神様の力で元の場所に戻してくれるらしい。
「パーピュア、朝陽、帰りたい?」
この薄幸の美少年をパーピュアって呼ぶの違和感あるけど元の名前知らないし仕方ない。
朝陽は肩をすくめて首を横に振った。
「向こうに戻ったって碌でもない親しかいなかったからな。俺はここにいる方が楽しい」
「ーーー僕も戻った所でベッド上の生活だ。こうして健康でいられる今が幸せだから、帰る必要はない」
「う~ん…俺も帰ったって待ってる家族はいないしな…」
それにあのブラック企業に戻りたくないし。
「…琴音…、神様、琴音は?琴音はここにいないのか?」
『神子コトネは悪しき物を連れ、共に消滅しました』
「え…」
『本来ならば魂ごと消滅するのは神子スナオ、貴方だった』
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