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第三章 神子
新たな誓い
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一般市民は門の前まで。そこから先は結婚式の間は貴族だけしか入れない。門の向こうでまだ祝いの言葉を叫んでくれてるみんなにもう一度手を振りながら潜り抜けた門を見上げた。
豪華な門をくぐり抜けるのは3回目か。内1回は知らない間に運ばれてたんだけど。思えばあの頃から随分と皆との関係も変わったなぁ。
ここでクソ眼鏡に無理矢理襲われて、騎士団が助けに来てくれて。ディアとしっかり顔を合わせたのも、ティエと初めて会ったのもここだっけ。……ディアと初めてシたのもここですが。嫌な思い出しかない大神殿だけど、皆としっかり顔を合わせた場所と思えばクソ眼鏡なんてどうでも良くなってくる。
門を潜り抜けて、しばらく進んでようやく馬車が停まった。長い階段の前には大事な番達が待ってくれてる。俺と同じ白を基調にしたテイルコートに黒の糸で刺繍がしてあって肩からはそれぞれの家のマントを靡かせてて。神子の色だって言われる黒を唯一服に縫い付けられるのは俺の番達だけ。そう思うと何だか俺にとっては馴染みの黒が特別な物になったみたいだ。……いや、この世界の人達にとっては本当に特別な物なんだけど。
(かっこいいな)
皆の元へ向かいながら一人一人眺めた。ディアはいつもは後ろで緩くまとめてある髪をしっかり編み込んで左肩から流してて、逆にローゼンはいつも上げてる前髪を下ろして少し横に流してるから印象が全然違うし、ティエは耳に沢山ついてたピアスを全部外して髪も後ろに撫で付けてある。顔はみんな言うまでもなくキラキラしたイケメンだ。いいのか、俺この人達の横に並んでて。
今更ながらちょっと不安になったけど、でも相応しくないとか言う奴がいても黙らせられるくらい皆を大事にするから!
「スナオ、一人で大丈夫だった?」
頭を撫でようとしてセットされた髪に気付いて、所在なく彷徨うティエの手。一人オープン馬車でいたたまれなかった、って言いたかったけど、未だ彷徨うティエの手が何だか可愛くて、その手を取って指先にキスしてみる。たまにしてくるローゼンとかディアとか羞恥も躊躇いも見せないし、俺にも出来る筈!って思ってやったものの…。
何かキラキラしたティエの目と、微笑ましく見守ってるローゼンと、驚いたような顔のディアを見たら段々恥ずかしくなって来て思わず両手で顔を覆った。
「…調子に乗りました。頼むからこっち見ないでください」
「…私達にはしてくれないのか?」
「そこは黙って見なかったふりをしてくれるのが大人だと思います」
もう二度としない。何だこれ恥ずかしすぎるだろ。これを普通に出来ちゃうディア達の方がおかしいんだ、きっと。というか、こんなのイケメンにのみ許される行為だと思うわ。俺みたいな普通の人間がやったらただのネタだわ。調子に乗ってすいませんでした。
「神子様方…そろそろ…」
呼びに来てくれた神官に一瞬強張った体を誤魔化して足を踏み出した。
相変わらず神官服も若干怖いんだけど、あのクソ眼鏡はもういない。クソ眼鏡についてた神官達も本部のお偉いさん達のいる聖神殿に連行されて今頃裁かれてる筈だ。だからもうここに怖い物はない。
皆は結婚式をここでやらなくてもいい、って言ってくれたんだけど貴族は基本ここで式を挙げるって聞いたからここにした。だって俺の所為で色んな事が慣例と違ってしまったからこれ以上皆の“普通”を変えたくないし。それにトラウマでしかなかったこの大神殿を新しい思い出で埋めたら怖くなくなるんじゃないかと思って。見上げた建物はやっぱり何度見ても荘厳で、怖い場所にしとくのは嫌だから。
階段を登り切った先では大きな扉が開け放たれてて、そこに繋がるまでの石畳の回廊に知ってる顔もまだ俺が知らない顔もある貴族令息が並んで立ってて。さっきまでの街道の人達と同じく籠を持って中の花を撒きながら口々に祝いの言葉を言ってくれる。
その降り注ぐように撒かれた花をくぐって大きな扉を抜けると、その向こうには王族や高位貴族当主、またはその代理、本来なら俺の両親もいた筈だけどその代わりにエテュセや元侍従のスミリアとベルカがいる。すでにボロ泣きな3人を周りの人達が微笑ましく見てて俺も思わず笑った。ホントに侍従ちゃんズは可愛いなぁ。
そして最後に、本来なら神官長の役割なんだけど俺が神子だから、と結婚の誓いは王であるテューイリングに捧げる事になってるんだ。神子の方が王より身分が高いけど、俺の次の身分は王だから、らしい。そんなの気にしないのに、とは思ったけど他の貴族の手前そうもいかないと言われたら黙るしかない。そんなわけで、テューイリングの良く通る低い声が神殿内に朗々と響く。時折侍従ちゃんズの嗚咽が聞こえる以外静かな建物の中色んな事を考えた。
俺は庶民だ。神子になりたかったわけじゃなく、出来れば農民になって普通の人生を歩みたかった。こんな波乱万丈さは求めてなかったし権力なんて欲しくない。だけど…
(……う~ん…カッコイイ)
あんまりきょろきょろ出来ないからほんの一瞬横に並ぶ番達を見て内心でうんうん頷く。
俺の番達はカッコ良くて強くて、それで貴族の一員だ。きっとこれから俺にはわからない貴族の色んなしがらみに悩まされる事もあると思う。無知な俺を使って公爵家のディアを操って王家に何かしようとする輩だっているかも知れない。その為には俺はもっとこの世界の事を知って、貴族の在り方を知って、利用されないような知識を身につけないといけない。テューイリングが読み上げた宣誓文に誓いを立てて署名をしながら改めて強く決意した。
旅の途中で人魚が示した俺に足りない物。“知識”を養って、番達に恥じない人間になる。浄化の旅が終わった俺の新たな目標を結婚の誓いと共に胸に誓った。
豪華な門をくぐり抜けるのは3回目か。内1回は知らない間に運ばれてたんだけど。思えばあの頃から随分と皆との関係も変わったなぁ。
ここでクソ眼鏡に無理矢理襲われて、騎士団が助けに来てくれて。ディアとしっかり顔を合わせたのも、ティエと初めて会ったのもここだっけ。……ディアと初めてシたのもここですが。嫌な思い出しかない大神殿だけど、皆としっかり顔を合わせた場所と思えばクソ眼鏡なんてどうでも良くなってくる。
門を潜り抜けて、しばらく進んでようやく馬車が停まった。長い階段の前には大事な番達が待ってくれてる。俺と同じ白を基調にしたテイルコートに黒の糸で刺繍がしてあって肩からはそれぞれの家のマントを靡かせてて。神子の色だって言われる黒を唯一服に縫い付けられるのは俺の番達だけ。そう思うと何だか俺にとっては馴染みの黒が特別な物になったみたいだ。……いや、この世界の人達にとっては本当に特別な物なんだけど。
(かっこいいな)
皆の元へ向かいながら一人一人眺めた。ディアはいつもは後ろで緩くまとめてある髪をしっかり編み込んで左肩から流してて、逆にローゼンはいつも上げてる前髪を下ろして少し横に流してるから印象が全然違うし、ティエは耳に沢山ついてたピアスを全部外して髪も後ろに撫で付けてある。顔はみんな言うまでもなくキラキラしたイケメンだ。いいのか、俺この人達の横に並んでて。
今更ながらちょっと不安になったけど、でも相応しくないとか言う奴がいても黙らせられるくらい皆を大事にするから!
「スナオ、一人で大丈夫だった?」
頭を撫でようとしてセットされた髪に気付いて、所在なく彷徨うティエの手。一人オープン馬車でいたたまれなかった、って言いたかったけど、未だ彷徨うティエの手が何だか可愛くて、その手を取って指先にキスしてみる。たまにしてくるローゼンとかディアとか羞恥も躊躇いも見せないし、俺にも出来る筈!って思ってやったものの…。
何かキラキラしたティエの目と、微笑ましく見守ってるローゼンと、驚いたような顔のディアを見たら段々恥ずかしくなって来て思わず両手で顔を覆った。
「…調子に乗りました。頼むからこっち見ないでください」
「…私達にはしてくれないのか?」
「そこは黙って見なかったふりをしてくれるのが大人だと思います」
もう二度としない。何だこれ恥ずかしすぎるだろ。これを普通に出来ちゃうディア達の方がおかしいんだ、きっと。というか、こんなのイケメンにのみ許される行為だと思うわ。俺みたいな普通の人間がやったらただのネタだわ。調子に乗ってすいませんでした。
「神子様方…そろそろ…」
呼びに来てくれた神官に一瞬強張った体を誤魔化して足を踏み出した。
相変わらず神官服も若干怖いんだけど、あのクソ眼鏡はもういない。クソ眼鏡についてた神官達も本部のお偉いさん達のいる聖神殿に連行されて今頃裁かれてる筈だ。だからもうここに怖い物はない。
皆は結婚式をここでやらなくてもいい、って言ってくれたんだけど貴族は基本ここで式を挙げるって聞いたからここにした。だって俺の所為で色んな事が慣例と違ってしまったからこれ以上皆の“普通”を変えたくないし。それにトラウマでしかなかったこの大神殿を新しい思い出で埋めたら怖くなくなるんじゃないかと思って。見上げた建物はやっぱり何度見ても荘厳で、怖い場所にしとくのは嫌だから。
階段を登り切った先では大きな扉が開け放たれてて、そこに繋がるまでの石畳の回廊に知ってる顔もまだ俺が知らない顔もある貴族令息が並んで立ってて。さっきまでの街道の人達と同じく籠を持って中の花を撒きながら口々に祝いの言葉を言ってくれる。
その降り注ぐように撒かれた花をくぐって大きな扉を抜けると、その向こうには王族や高位貴族当主、またはその代理、本来なら俺の両親もいた筈だけどその代わりにエテュセや元侍従のスミリアとベルカがいる。すでにボロ泣きな3人を周りの人達が微笑ましく見てて俺も思わず笑った。ホントに侍従ちゃんズは可愛いなぁ。
そして最後に、本来なら神官長の役割なんだけど俺が神子だから、と結婚の誓いは王であるテューイリングに捧げる事になってるんだ。神子の方が王より身分が高いけど、俺の次の身分は王だから、らしい。そんなの気にしないのに、とは思ったけど他の貴族の手前そうもいかないと言われたら黙るしかない。そんなわけで、テューイリングの良く通る低い声が神殿内に朗々と響く。時折侍従ちゃんズの嗚咽が聞こえる以外静かな建物の中色んな事を考えた。
俺は庶民だ。神子になりたかったわけじゃなく、出来れば農民になって普通の人生を歩みたかった。こんな波乱万丈さは求めてなかったし権力なんて欲しくない。だけど…
(……う~ん…カッコイイ)
あんまりきょろきょろ出来ないからほんの一瞬横に並ぶ番達を見て内心でうんうん頷く。
俺の番達はカッコ良くて強くて、それで貴族の一員だ。きっとこれから俺にはわからない貴族の色んなしがらみに悩まされる事もあると思う。無知な俺を使って公爵家のディアを操って王家に何かしようとする輩だっているかも知れない。その為には俺はもっとこの世界の事を知って、貴族の在り方を知って、利用されないような知識を身につけないといけない。テューイリングが読み上げた宣誓文に誓いを立てて署名をしながら改めて強く決意した。
旅の途中で人魚が示した俺に足りない物。“知識”を養って、番達に恥じない人間になる。浄化の旅が終わった俺の新たな目標を結婚の誓いと共に胸に誓った。
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