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第三章 神子
結婚して…
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爽やかな風が髪を揺らして顔を上げた。
目の前に広がる畑には俺が植えた野菜達が艶々とたわわに実ってて、少し離れた場所からは牛や羊ののんびりとした鳴き声がする。
農民になって農業がしたい、モフモフに囲まれたい、そんな俺の願いを叶えてくれたのはディアだった。王都中心部から少し離れたこの屋敷の裏手はまだ何もない芝生だけの場所で。本来マクシノルト家の誰かの伴侶が管理する庭園になる予定だったその敷地を俺が落ち着くなら、って農地にしてくれたんだ。
もちろん与えられた仕事はこなし、貴族の腹芸にも対応出来るように勉強しながらだから本当の農家の皆さんみたいな本格的な物は出来ないけどそれでもご近所配るくらいの収穫はある。
あれから7回目の春が来て、ジャガイモっぽいやつとか菜の花っぽい、でも何故かめちゃくちゃ青い菜とか収穫しながらふと振り返る。
「かーさま~」
「かーさま~」
重なった可愛い二つの声と
「おてつだいに来ました!」
「父様達帰って来たよ~」
快活な声とのんびりした声。飛び込んできた小さな二人を抱きとめて、「母様はお腹に赤ちゃんいるから飛びついたらダメ!」とプリプリしてる子とニコニコ楽し気に見てくる子みんなまとめて抱き締める。大分お腹出てきたからちょっときついけど、まだ小さな4人くらい抱き締められるぞ!
「かーさま、赤ちゃんいつ出てくる?」
「ぼく達おにいさまになる?」
双子の赤毛は3歳になるティエとの子供。パーピュアのとこも次子は双子だったし流石双子遺伝子。ただ何故か一人は毛先が紫でもう一人は前髪が一房銀髪だったりと明らかに他の遺伝子が組み込まれてる気がしなくもない…。
4歳の紫の髪(毛先が赤い…)のしっかり者はもちろんローゼンとの子で、にこにこと楽し気な笑みを絶やさないのは最初に生まれたディアとの子。綺麗な銀髪がディアそっくりな5歳だ(片目がはちみつ色…)。みんな可愛い俺達の子供。母様って呼ばれるの、最初違和感ありまくりだったけど今はもう慣れた。慣れって怖い…。
子供達を撫でながら思い出すのは結婚式の日。あの日初夜を迎える予定だった。だけど…ダティスハリアでの記憶が完全に戻ってた俺はどうしても皆に体を委ねる事が出来なくて。泣きながら謝る俺を許してくれた皆の事をようやく受け入れられたのは結婚式から1年経ってからで。あの時は「準備が出来るまで待つ」って言ってくれた皆をどうやって誘ったらいいのかわからなくて、朝陽命名の悩めるメムの会(笑)を開いてもらったんだったな…。パーピュアと朝陽とメイディに色々相談して…うん、あの辺りの事はあんまり思い出したくないな。恥ずか死ぬ。
何てちょっと遠い目をしてたら。ねえねえ、とぐらぐら体を揺すられこのままだと尻もちつきそうだから座っちゃおう、って思った瞬間急に視界がぐわっと高くなった。
「こ~ら!スナオは赤ちゃんがいるから揺すったらダメって言ったでしょ」
「ティエ!」
「ティエとーさま!」
「ティエとーさま!」
双子は良く行動も言葉も被る。それがまた可愛いんだよな~。
というか今この人どっから来た?ティエの肩越しに畑を見るけど隠れられそうな所があるわけでもなく、謎過ぎる。そして気配なく現れるの怖すぎる。仕事柄仕方ないけど、急に来ると心臓に悪いよ…。なんてドキドキしてる心臓を押さえてたら、ちゃんと出入口からディア達が来るのが見えた。
「みんなおかえり~」
一人一人頬にキスして下を見たら、子供達も可愛らしく唇を尖らせてしゃがんでもらえるのを待ってて悶絶級に可愛い…!!
「父様、おかえり」
「おかえりなさい」
んんんん…!!みんなのミニチュアみたいな子供達が大きな皆にちゅっちゅしてるの…!本当にもう!癒し…!!!可愛いぃぃぃぃぃぃ!!!
「スナオ、あまり無理はするなと言ったはずだ」
「え~、もう5人目だしそんな心配しなくても自分の体調くらい…」
「スナオ様…俺達が心配なんです」
ディアの子が出来た時半端ない悪阻があって大変だったからか、以来妊娠する度みんなの過保護が増していくんですよ。
あの時は子供が出来た驚きと本当に男が子供を産めるのかって不安、万が一ダメになっちゃったらどうしようっていう不安、色んな精神的ストレスで余計に悪阻が酷くなったらしい。今となっては多少の心配とか不安はあっても、もう何でもどんと来いって感じだし。ちょっと怠かったり調子が悪い時は休むようにしてるんだけど…。俺の旦那様達は心配性で困ったもんだ。
「畑にいる方が気分が良いんだ」
なんせ称号農民(癒しの神子)なもんで。未だに農民と神子を並べるな、とは思うんだけど。
「父様、私達がお手伝いするから大丈夫」
ディアそっくりのさらさらした綺麗な銀髪を俺が作った何とも形容しがたい猫っぽい何かがついたゴムで括って、ふん、と可愛らしい気合を込めた第一子リュンヌ。この子が生まれた日は色んな意味で忘れられない。もちろん無事に生まれてくれた初めての子だ。それだけでも感慨深いんだけど、それはもうこの世界の理をぶっ壊す出来事だったから。
目の前に広がる畑には俺が植えた野菜達が艶々とたわわに実ってて、少し離れた場所からは牛や羊ののんびりとした鳴き声がする。
農民になって農業がしたい、モフモフに囲まれたい、そんな俺の願いを叶えてくれたのはディアだった。王都中心部から少し離れたこの屋敷の裏手はまだ何もない芝生だけの場所で。本来マクシノルト家の誰かの伴侶が管理する庭園になる予定だったその敷地を俺が落ち着くなら、って農地にしてくれたんだ。
もちろん与えられた仕事はこなし、貴族の腹芸にも対応出来るように勉強しながらだから本当の農家の皆さんみたいな本格的な物は出来ないけどそれでもご近所配るくらいの収穫はある。
あれから7回目の春が来て、ジャガイモっぽいやつとか菜の花っぽい、でも何故かめちゃくちゃ青い菜とか収穫しながらふと振り返る。
「かーさま~」
「かーさま~」
重なった可愛い二つの声と
「おてつだいに来ました!」
「父様達帰って来たよ~」
快活な声とのんびりした声。飛び込んできた小さな二人を抱きとめて、「母様はお腹に赤ちゃんいるから飛びついたらダメ!」とプリプリしてる子とニコニコ楽し気に見てくる子みんなまとめて抱き締める。大分お腹出てきたからちょっときついけど、まだ小さな4人くらい抱き締められるぞ!
「かーさま、赤ちゃんいつ出てくる?」
「ぼく達おにいさまになる?」
双子の赤毛は3歳になるティエとの子供。パーピュアのとこも次子は双子だったし流石双子遺伝子。ただ何故か一人は毛先が紫でもう一人は前髪が一房銀髪だったりと明らかに他の遺伝子が組み込まれてる気がしなくもない…。
4歳の紫の髪(毛先が赤い…)のしっかり者はもちろんローゼンとの子で、にこにこと楽し気な笑みを絶やさないのは最初に生まれたディアとの子。綺麗な銀髪がディアそっくりな5歳だ(片目がはちみつ色…)。みんな可愛い俺達の子供。母様って呼ばれるの、最初違和感ありまくりだったけど今はもう慣れた。慣れって怖い…。
子供達を撫でながら思い出すのは結婚式の日。あの日初夜を迎える予定だった。だけど…ダティスハリアでの記憶が完全に戻ってた俺はどうしても皆に体を委ねる事が出来なくて。泣きながら謝る俺を許してくれた皆の事をようやく受け入れられたのは結婚式から1年経ってからで。あの時は「準備が出来るまで待つ」って言ってくれた皆をどうやって誘ったらいいのかわからなくて、朝陽命名の悩めるメムの会(笑)を開いてもらったんだったな…。パーピュアと朝陽とメイディに色々相談して…うん、あの辺りの事はあんまり思い出したくないな。恥ずか死ぬ。
何てちょっと遠い目をしてたら。ねえねえ、とぐらぐら体を揺すられこのままだと尻もちつきそうだから座っちゃおう、って思った瞬間急に視界がぐわっと高くなった。
「こ~ら!スナオは赤ちゃんがいるから揺すったらダメって言ったでしょ」
「ティエ!」
「ティエとーさま!」
「ティエとーさま!」
双子は良く行動も言葉も被る。それがまた可愛いんだよな~。
というか今この人どっから来た?ティエの肩越しに畑を見るけど隠れられそうな所があるわけでもなく、謎過ぎる。そして気配なく現れるの怖すぎる。仕事柄仕方ないけど、急に来ると心臓に悪いよ…。なんてドキドキしてる心臓を押さえてたら、ちゃんと出入口からディア達が来るのが見えた。
「みんなおかえり~」
一人一人頬にキスして下を見たら、子供達も可愛らしく唇を尖らせてしゃがんでもらえるのを待ってて悶絶級に可愛い…!!
「父様、おかえり」
「おかえりなさい」
んんんん…!!みんなのミニチュアみたいな子供達が大きな皆にちゅっちゅしてるの…!本当にもう!癒し…!!!可愛いぃぃぃぃぃぃ!!!
「スナオ、あまり無理はするなと言ったはずだ」
「え~、もう5人目だしそんな心配しなくても自分の体調くらい…」
「スナオ様…俺達が心配なんです」
ディアの子が出来た時半端ない悪阻があって大変だったからか、以来妊娠する度みんなの過保護が増していくんですよ。
あの時は子供が出来た驚きと本当に男が子供を産めるのかって不安、万が一ダメになっちゃったらどうしようっていう不安、色んな精神的ストレスで余計に悪阻が酷くなったらしい。今となっては多少の心配とか不安はあっても、もう何でもどんと来いって感じだし。ちょっと怠かったり調子が悪い時は休むようにしてるんだけど…。俺の旦那様達は心配性で困ったもんだ。
「畑にいる方が気分が良いんだ」
なんせ称号農民(癒しの神子)なもんで。未だに農民と神子を並べるな、とは思うんだけど。
「父様、私達がお手伝いするから大丈夫」
ディアそっくりのさらさらした綺麗な銀髪を俺が作った何とも形容しがたい猫っぽい何かがついたゴムで括って、ふん、と可愛らしい気合を込めた第一子リュンヌ。この子が生まれた日は色んな意味で忘れられない。もちろん無事に生まれてくれた初めての子だ。それだけでも感慨深いんだけど、それはもうこの世界の理をぶっ壊す出来事だったから。
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