【完】ラスボス(予定)に転生しましたが、家を出て幸せになります

ナナメ

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第1章 念願の国外追放

王城にて

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 パルヴァン王城までの道程は大きな問題もなく案外すんなりと着いてしまった。
 いや途中野盗が出たり魔物が出たりしてたけどオーナーが出るまでもなく外の騎士さん達がみんな倒してくれたんだ。
 流石は国境を守る騎士だよね。僕が知ってる騎士ってスタンレール王城を巡回してる姿とか門の前にいる姿とかバカ殿下のおもりしてる姿ばっかりだったからスタンレール騎士団の強さは知らないんだけど、辺境伯騎士団は紛れもなく精鋭揃いだと思う。
 あんまり人数連れていくと戦争する気か!って警戒されちゃうから護衛騎士は6人だけ。その6人でほとんど倒しちゃうんだもんな~。

 クッションに埋もれながら窓の外に見える王都の景色を眺める。正直一生着かなくても良かったんだけど、着いてしまった……。
 建物の向こうに見える大きな三角屋根が連なったあれが有名な大聖堂だろうか。確か聖母の像が飾ってあるとかなんとか。ステンドグラスのはまった窓とかキレイなんだろうな。
 ここパルヴァンは前世で馴染んだ多神教で色々な宗教がある。昔は宗教戦争とかあったのかも知れないけど、とりあえず今の時代は特に争いもなくみんな仲良く平和に自分の信じる神様のいる所にお参りしてるみたい。
 ちょっと離れた聖王国は未だに一神教で月の女神信仰があつくて、聖なる月の女神の化身になる聖女とかいるらしいけど。
 って、パルヴァンにも昔聖女がいたからもしかしたらこの国にも多少の影響はあったのかもね。

 ガラガラと車輪の回る音がやけに大きく聞こえてぎゅっとクッションを握った。
 もう王都が近くなってから固形は全く喉を通らなくてオーナーが貰ってきてくれた栄養満点ドリンクしか入ってない胃が痛いよ……。

「チビちゃん、おじさんが絶対帰らせてあげるからそう心配しないで」

「うん~……」

 しょぼ、っと返事をしてる間に馬車が止まった。王城の門についてしまったとわかったのは窓から辺境伯騎士とは違う鎧の騎士が見えたからだ。

 あぁぁぁぁぁ胃と心臓が口からこんにちはしそう……!!

 隣に座ってくれたオーナーが手を握ってくれるけど握り返すだけで精一杯。
 緊張で推しのお手々の感触を味わえないなんて……!!せめて雄っぱいだけでも揉ませて欲しい!けどそしたら外の王城騎士さんに変態がいる、って捕まっちゃうかもしれないから我慢だ!無事終えて王城を出るまで我慢我慢!!

「オーナー……頑張ったらご褒美くれる……?」

 しょぼぼ、っとしたままねだってみる。
 公爵家を出るまで頑張ったご褒美は推しとの同居っていうとてつもないご褒美がついてきた。
 今回は他国――今はここに住んでるから自国?――の王族を騙して逃げ帰るっていう難関だから、それをやり遂げるには新たなご褒美が欲しい。

「何が欲しいんだ?」

 片手は繋いだまま反対の手で僕の頭を引き寄せて撫でてくれる優しい手のひら。
 暖かいその手にすり寄りながら答えた。

「オーナーの入れて欲しい」

「ブーッ!!!!」

 途端に流石に緊張してるのか水筒からお茶を飲んでたおじさんが目の前で盛大に噴いた。
 汚いなぁ!王族に会う前に、ってキレイな服に着替えたのに汚れちゃうじゃん!

「な、は、いれ……!!!?……ぱ、パパはまだ認めてませんよ!!!!」

「パパじゃないし」

 て言うか外の王城騎士さん達がびっくりしてるから大声やめてください。

「……あ~、その話は……また後でな」

 チッ、やっぱりダメか。なし崩しでオッケーもらえるかと思ったのに。
 本当はそんな心の余裕欠片もないんだけど、普段通りにしてないとここから転移で逃げ出してしまいそうなんだよね……。

 逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ……あれ、何かこんな事言ってるキャラいた気がするな。
 でも何だっけ、と思い出す前にまたガラガラ動き出した馬車に心臓がドッキンコする。
 動いたという事は門を抜けたって事だ。あとは馬車で進める所まで行って降りて、中に案内されるだけ。

 鑑定の魔導具持ってきてオーナーのお店で鑑定してくれたら良いじゃん、って言ったらおじさんから国宝だから持ち出せないって教わって涙ちょちょぎれそうになったわ。
 国宝を拝める事を喜んで良いのか、国宝を使ってでも魔王を捜してる事に悲しんだら良いのか。

 ドッキンドッキン煩い心臓を押さえてる内に馬車から出されてしまった。

「いらっしゃい、小さい子ーーーーッ!!!」

「ほぎゃーーーー!?」

 馬車から降りた途端に飛び付かれて間抜けな声をあげてしまう。
 今日も小さい!なんて失礼な事を言いながら僕の頬に自分の頬くっつけてスリスリするのは勿論第3王子だ。
 後で聞いたら王子、ΩだけどDomっていう変わり種だった。

 でもおかしいんだよね。小説ではメインキャラは大体わかりやすいようにα×Dom、β×Normal、Ω×Subだった筈だ。ただギフトは騎士学校編とかあったような気がするから唯一β×Switchだったけど、他のキャラはわかりやすかったって記憶してたのに。
 だって王子がDomだったらティールとDom×Domカップルになっちゃう。αとΩだから良いのかな?

 とりあえず王子、いい匂いがします。
 Domだって聞いても気持ち悪くないのは同じΩだからかな?この間は服で隠れてたけど今日は首に僕と同じような首輪がついてるのが見える。

 その王子が僕の手を握ったまま歩き出すから案内の人達が慌てたようにあたふたし始めるけど流石王子。どこ吹く風だ。
 結局案内役の人ではなくて王子の案内で待機部屋に到着してしまった。
 護衛の人達は隣の部屋で待機らしい。

 良かった。いきなり謁見の間とかに連れていかれたら絶対口から心臓飛び出してたわ。今も出てきそうだけど。

「小さい子、君も王族の婚約者だったならわかると思うけどここは魔窟だからね」

「……誰も信じるな、ですよね」

 前回そんな話した記憶ないから僕の事を調べたんだろうな。
 スタンレールではたまーに嫌がらせに対して軽~いを起こしたけど、そこに大した魔力は使ってない。金タライ1個分なんて感知できるほどの魔力も出てないと思う。だからそこからバレる危険はないはずだ。
 転移したのも部屋から、しかも感知不可の魔導具使ってたしオーナーの店を見つけた後は魔術陣を使ってた。
 魔力制御の授業に出てたけど教師も生徒も僕に魔力があるかも?なんて欠片も疑ってなかったから確認した所で「知らない」としか言いようがないはず。
 実家の人達なんか論外だし、一応僕を気にかけてくれてたラーグですら僕の魔力は知らないと思うから大丈夫。

 パルヴァンの王族がどこまで僕を探ったのかはわからない。 
 僕の答えに満足そうに頷く王子だって親切そうに見えて腹の中では何を考えてるかわからないし、それが王城という魔窟だ。
 伊達に何年も毒盛られ続けたわけじゃないぞ!
 
 きっとさっきの案内の人の中にも王太子の一派が混じってたんだろう。もしかしたら僕をオーナー達とは別の部屋に案内して揺さぶりをかけるつもりだったのかも知れない。
 王子はそれがわかってたからあえて自己中っぽい振る舞いで僕達を案内してくれたんだろう。本心はわからないけど。

「それじゃ、また後で!あ、ここのお茶とお菓子は大丈夫だから」

 おかまいなく~。どうせ喉通りませんから、と心の中で呟いて部屋を見渡す。
 きらびやかな室内は高そうな調度品に囲まれている。当たり前だけどどれもこれも最高級品だ。
 壁に飾ってある風景画も、棚の上にある取っ手が金ぴかな花瓶もそこに生けてある真っ赤な薔薇ですら贅をこらした物。

 元公爵家の、それも偽とは言え王太子の婚約者だったけども……!
 実家ではジメジメな地下室、学園ではほぼ部屋に引きこもり、王城では行ったと同時に毒で退場してきた僕にはこの部屋畏れ多くて怖すぎる……!!

 どさり、と遠慮なく赤いベルベットのソファーに座ったおじさんに1人であわわわわ、ってなってしまった。
 座れない……、僕こんな高そうなソファーになんて座れない……!
 いやスタンレールでは座らざるを得ない時もあったよ?でもすぐ様毒で血を吐いてその場からさよなら~、だったから!

「オーナー……」

「いいから座っとけ」

 いや、座ってるけどオーナーもちょっと嫌そうな雰囲気醸し出してるじゃん!
 でも僕はそこでピーン、っと思い付いてしまった。

「俺は椅子か?」

 苦笑いのオーナーの膝の上なら安心だ!
 ぐらぐら不安定だったけどオーナーが座り直してくれたから良い感じに収まった。
 おじさんがまた血涙流してるけど見なかったことにしよう。

 部屋にはメイドさんが控えてるけど流石王城勤めだけあってまるで彫像のように動かない。きっとお茶を頼んだら入れてくれるんだろう。だけど、ある意味敵地のここで出された物なんて口に入れるわけにいかないからね。っていうかもう入れる前に口から出そうなだけですけどね。

 ひとまずお茶とかお菓子よりオーナーを補充しておかないと。
 そう思ってオーナーの首に腕を回してしがみつくと、小さく笑ったオーナーも背中に腕を回してくれた。

「怖がるな。何があっても連れて帰ってやるから」

「うん!」

 ちゅ、っておでこにキスが降ってきてひょわーーー!?って叫びそうになってしまった。
 一瞬メイドさんの目がくわわ、って開いたのは気のせいだよね……?今はまた彫像に戻ってるし。

「おじさんの時と反応が違う……!!」

 血涙流しながらキーッってハンカチ咥えて引っ張るおじさんは置いといて。
 オーナーの雄っぱい揉みたいのは我慢して。
 思う存分尻でオーナーのお膝と頬で雄っぱいのムチムチを堪能した頃ようやく案内の人がやって来た。今度は王子はいない。きっともう鑑定の魔導具がある部屋に行ってるんだろう。

 謁見の間みたいな畏まった部屋じゃないと良いな~、って思ってたけど、案内されたのは部屋の前を武装した騎士が守る謁見の間だった。

「この先はアカルディ辺境伯と鑑定の対象者しか入れません」

「僕の……保護者なんですけどダメなんですか?」

 雇い主、って言ったら普通にダメな気がしてより関係が近そうな保護者って言ったんだけど、オーナーの前でガシャン、って槍を交差させる。
 一瞬あの卒業パーティーの日を思い出して胸がぎゅう、ってなったんだけど。

「ウル、帰ったらご褒美やるからな」

 それって……それってーーー!!!?

「そ、そんなのパパは認めませーーーん!!!」

「頑張ります!!」

 そうと決まれば血涙おじさんは放置して、とっとと終わらせて来なくては!

 
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