207 / 473
婚約編
27.動揺
「さて、こうして美しいあなたをこうしてずっと眺めていたいですが、そろそろ控室の方に移動しなければなりませんね」
ラファエロは残念そうに溜息をつくと、リリアーナに笑顔を向けた。
「きっとクラリーチェ嬢もあなたの到着を待っている筈ですよ」
「そうですわね」
ラファエロの言葉で、リリアーナはあることを思い出した。
開港祭の式典の後、王宮に戻ってからもクラリーチェと会話を交わすどころか、顔すらも合わせられていないのだ。
「本当なら、一番にお祝いを申し上げたかったですのに………」
ほんの少し悄気げた様子を見せたリリアーナに、ラファエロは優しい笑顔を向ける。
「本当にあなたはクラリーチェ嬢が好きなのですね。分かってはいるつもりですが………少し、妬けてしまいます」
少し憂いを含んだラファエロのエメラルド色の瞳に、リリアーナははっとした。
「ラファエロ様、私はそんなつもりでは…………っ!」
ラファエロよりもクラリーチェを優先していると、思われたのだろうか。
リリアーナは慌ててそれを否定する。
「私にとっての一番は、ラファエロ様ですわ!」
次いで出てきたのは、勢い余って口走った言葉だった。
それは本心に違いなかったが、淑女らしからぬ大声でそれを叫んでしまったことに気がついて、リリアーナは少し間を置いてから、羞恥に見る見る顔を赤く染めていく。
「………お嬢様………」
壁に控えていたエラが笑いを堪えるような、微妙な表情を浮かべているのが目に入った。
エラの隣に佇むマリカは、にっこりと笑顔を浮かべたまま、微動だにしない。
「ふふ、全く………何と可愛らしい事を言ってくれるのでしょうね?」
ラファエロは先程よりも笑みを深くしたかと思うと、優しくリリアーナを抱き寄せた。
「ドレスに皺が出来ないようにすると、あまり強く抱き締めることが出来ないですね。………でも、このままこの腕の中にあなたを永遠に閉じ込めてしまいたいと思うくらいに、私もあなたのことを一番に想っていますよ」
今度は甘く蕩けるような声で、ラファエロが囁くと、リリアーナの頬は更に赤く染まり、胸の中は甘く疼く。
「ラファエロ様…………」
リリアーナがラファエロを見上げると、ラファエロはリリアーナの額に軽く口付けをする。
「………名残惜しいですが、あなたを愛でる楽しみは、夜会の後に取っておきましょう」
静かにそう呟くと、ラファエロは突然その長身を少し折り曲げる。
そして、徐ろにリリアーナを横抱きに抱き上げたのだった。
「え………っ?ラ………ラファエロ様っ?!ドレスが皺になってしまいます………っ!」
思わぬ事態に、リリアーナは珍しく取り乱す。
「あなたが、可愛らしい事を言うからいけないのですよ。それに、これしきの事で皺になるような生地のドレスを私が贈ると思いますか?」
先程と言っていることが違うーーー。
リリアーナは心底そう感じながら、なすすべなくラファエロに抱かれたままで控室へと移動する羽目になったのだった。
ラファエロは残念そうに溜息をつくと、リリアーナに笑顔を向けた。
「きっとクラリーチェ嬢もあなたの到着を待っている筈ですよ」
「そうですわね」
ラファエロの言葉で、リリアーナはあることを思い出した。
開港祭の式典の後、王宮に戻ってからもクラリーチェと会話を交わすどころか、顔すらも合わせられていないのだ。
「本当なら、一番にお祝いを申し上げたかったですのに………」
ほんの少し悄気げた様子を見せたリリアーナに、ラファエロは優しい笑顔を向ける。
「本当にあなたはクラリーチェ嬢が好きなのですね。分かってはいるつもりですが………少し、妬けてしまいます」
少し憂いを含んだラファエロのエメラルド色の瞳に、リリアーナははっとした。
「ラファエロ様、私はそんなつもりでは…………っ!」
ラファエロよりもクラリーチェを優先していると、思われたのだろうか。
リリアーナは慌ててそれを否定する。
「私にとっての一番は、ラファエロ様ですわ!」
次いで出てきたのは、勢い余って口走った言葉だった。
それは本心に違いなかったが、淑女らしからぬ大声でそれを叫んでしまったことに気がついて、リリアーナは少し間を置いてから、羞恥に見る見る顔を赤く染めていく。
「………お嬢様………」
壁に控えていたエラが笑いを堪えるような、微妙な表情を浮かべているのが目に入った。
エラの隣に佇むマリカは、にっこりと笑顔を浮かべたまま、微動だにしない。
「ふふ、全く………何と可愛らしい事を言ってくれるのでしょうね?」
ラファエロは先程よりも笑みを深くしたかと思うと、優しくリリアーナを抱き寄せた。
「ドレスに皺が出来ないようにすると、あまり強く抱き締めることが出来ないですね。………でも、このままこの腕の中にあなたを永遠に閉じ込めてしまいたいと思うくらいに、私もあなたのことを一番に想っていますよ」
今度は甘く蕩けるような声で、ラファエロが囁くと、リリアーナの頬は更に赤く染まり、胸の中は甘く疼く。
「ラファエロ様…………」
リリアーナがラファエロを見上げると、ラファエロはリリアーナの額に軽く口付けをする。
「………名残惜しいですが、あなたを愛でる楽しみは、夜会の後に取っておきましょう」
静かにそう呟くと、ラファエロは突然その長身を少し折り曲げる。
そして、徐ろにリリアーナを横抱きに抱き上げたのだった。
「え………っ?ラ………ラファエロ様っ?!ドレスが皺になってしまいます………っ!」
思わぬ事態に、リリアーナは珍しく取り乱す。
「あなたが、可愛らしい事を言うからいけないのですよ。それに、これしきの事で皺になるような生地のドレスを私が贈ると思いますか?」
先程と言っていることが違うーーー。
リリアーナは心底そう感じながら、なすすべなくラファエロに抱かれたままで控室へと移動する羽目になったのだった。
あなたにおすすめの小説
悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜
abang
恋愛
皇女シエラ・ヒペリュアンと皇太子ジェレミア・ヒペリュアンは血が繋がっていない。
シエラは前皇后の不貞によって出来た庶子であったが皇族の醜聞を隠すためにその事実は伏せられた。
元々身体が弱かった前皇后は、名目上の療養中に亡くなる。
現皇后と皇帝の間に生まれたのがジェレミアであった。
"容姿しか取り柄の無い頭の悪い皇女"だと言われ、皇后からは邪険にされる。
皇帝である父に頼んで婚約者となった初恋のリヒト・マッケンゼン公爵には相手にもされない日々。
そして日々違和感を感じるデジャブのような感覚…するとある時……
「私…知っているわ。これが前世というものかしら…、」
突然思い出した自らの未来の展開。
このままではジェレミアに利用され、彼が皇帝となった後、汚れた部分の全ての罪を着せられ処刑される。
「それまでに…家出資金を貯めるのよ!」
全てを思い出したシエラは死亡フラグを回避できるのか!?
「リヒト、婚約を解消しましょう。」
「姉様は僕から逃げられない。」
(お願いだから皆もう放っておいて!)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
殿下、今回も遠慮申し上げます
cyaru
恋愛
結婚目前で婚約を解消されてしまった侯爵令嬢ヴィオレッタ。
相手は平民で既に子もいると言われ、その上「側妃となって公務をしてくれ」と微笑まれる。
静かに怒り沈黙をするヴィオレッタ。反対に日を追うごとに窮地に追い込まれる王子レオン。
側近も去り、資金も尽き、事も有ろうか恋人の教育をヴィオレッタに命令をするのだった。
前半は一度目の人生です。
※作品の都合上、うわぁと思うようなシーンがございます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
冷遇された妻は愛を求める
チカフジ ユキ
恋愛
結婚三年、子供ができないという理由で夫ヘンリーがずっと身体の関係を持っていた女性マリアを連れてきた。
そして、今後は彼女をこの邸宅の女主として仕えよと使用人に命じる。
正妻のアリーシアは離れに追い出され、冷遇される日々。
離婚したくても、金づるであるアリーシアをそう簡単には手放してはくれなかった。
しかし、そんな日々もある日突然終わりが来る。
それは父親の死から始まった。
すれ違いのその先に
ごろごろみかん。
恋愛
転がり込んできた政略結婚ではあるが初恋の人と結婚することができたリーフェリアはとても幸せだった。
彼の、血を吐くような本音を聞くまでは。
ほかの女を愛しているーーーそれを聞いたリーフェリアは、彼のために身を引く決意をする。
*愛が重すぎるためそれを隠そうとする王太子と愛されていないと勘違いしてしまった王太子妃のお話
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない
たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。
あなたに相応しくあろうと努力をした。
あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。
なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。
そして聖女様はわたしを嵌めた。
わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。
大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。
その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。
知らずにわたしはまた王子様に恋をする。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位