猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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婚約編

27.動揺

「さて、こうして美しいあなたをこうしてずっと眺めていたいですが、そろそろ控室の方に移動しなければなりませんね」

ラファエロは残念そうに溜息をつくと、リリアーナに笑顔を向けた。

「きっとクラリーチェ嬢もあなたの到着を待っている筈ですよ」
「そうですわね」

ラファエロの言葉で、リリアーナはあることを思い出した。
開港祭の式典の後、王宮に戻ってからもクラリーチェと会話を交わすどころか、顔すらも合わせられていないのだ。

「本当なら、一番にお祝いを申し上げたかったですのに………」

ほんの少し悄気げた様子を見せたリリアーナに、ラファエロは優しい笑顔を向ける。

「本当にあなたはクラリーチェ嬢が好きなのですね。分かってはいるつもりですが………少し、妬けてしまいます」

少し憂いを含んだラファエロのエメラルド色の瞳に、リリアーナははっとした。

「ラファエロ様、私はそんなつもりでは…………っ!」

ラファエロよりもクラリーチェを優先していると、思われたのだろうか。
リリアーナは慌ててそれを否定する。

「私にとっての一番は、ラファエロ様ですわ!」

次いで出てきたのは、勢い余って口走った言葉だった。
それは本心に違いなかったが、淑女らしからぬ大声でそれを叫んでしまったことに気がついて、リリアーナは少し間を置いてから、羞恥に見る見る顔を赤く染めていく。

「………お嬢様………」

壁に控えていたエラが笑いを堪えるような、微妙な表情を浮かべているのが目に入った。
エラの隣に佇むマリカは、にっこりと笑顔を浮かべたまま、微動だにしない。

「ふふ、全く………何と可愛らしい事を言ってくれるのでしょうね?」

ラファエロは先程よりも笑みを深くしたかと思うと、優しくリリアーナを抱き寄せた。

「ドレスに皺が出来ないようにすると、あまり強く抱き締めることが出来ないですね。………でも、このままこの腕の中にあなたを永遠に閉じ込めてしまいたいと思うくらいに、私もあなたのことを一番に想っていますよ」

今度は甘く蕩けるような声で、ラファエロが囁くと、リリアーナの頬は更に赤く染まり、胸の中は甘く疼く。

「ラファエロ様…………」

リリアーナがラファエロを見上げると、ラファエロはリリアーナの額に軽く口付けをする。

「………名残惜しいですが、あなたを愛でる楽しみは、夜会の後に取っておきましょう」

静かにそう呟くと、ラファエロは突然その長身を少し折り曲げる。
そして、徐ろにリリアーナを横抱きに抱き上げたのだった。

「え………っ?ラ………ラファエロ様っ?!ドレスが皺になってしまいます………っ!」

思わぬ事態に、リリアーナは珍しく取り乱す。

「あなたが、可愛らしい事を言うからいけないのですよ。それに、これしきの事で皺になるような生地のドレスを私が贈ると思いますか?」

先程と言っていることが違うーーー。
リリアーナは心底そう感じながら、なすすべなくラファエロに抱かれたままで控室へと移動する羽目になったのだった。
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