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婚約編
31.夜会(3)
「不本意ながら、女性嫌いの兄のお陰で、本来ならば『王太子』が饗すべき貴賓の相手を一手に引き受けていましたからね。………まぁ、その役目はこの先も続くのかもしれませんが」
なるほど、とリリアーナは納得する。
確かに、舞踏会の際もエドアルドの代わりにラファエロが他国の姫君をエスコートし、国内の令嬢達からも誘われれば相手をしていたような気がする。
あの頃はジュストとともに出席しなければならなかったが、ジュストは表面上は取り繕うくせにリリアーナを悉くないがしろにしていたため、壁の花となってジュスト以外の男性が誘ってくれるのを待ち、夜会の参加者としての義務を果たしていたのを思い出す。
今となってはどうでもいい思い出だが、ラファエロも自分の意志ではなく、王族の義務としてダンスを熟していたという共通点を発見し、リリアーナは少し嬉しくなった。
だがその一方で、ラファエロの話を聞いているうちに、いくら女嫌いだからといって、王太子としての大切な仕事を実弟に押し付けるエドアルドもどうなのかと思ってしまう。
「………陛下の女性嫌いのせいで、ラファエロ様の苦労は絶えないですわね………」
リリアーナが同情するように小さく溜息を零すと、ラファエロは笑った。
「我々兄弟は、そうして互いを助け合って生きてきたのですから、大した問題ではありませんよ」
ラファエロの顔には、兄エドアルドに対する絶対的な信頼のようなものが浮かんでいるように見えた。
ラファエロにとって、エドアルドはそれくらいにかけがえのない存在なのだ。
リリアーナはそんなエドアルドを、ほんの少し羨ましく感じた。
そんな会話を交わしながら踊っているうちに、ラファエロと三曲続けて踊ってしまったことにはたと気が付いた。
同じ相手とダンスができるのは三回までで、それ以上はマナー違反とされているのだ。
曲の終わりが近づくにつれて、ラファエロともっと踊りたいという欲求が頭を擡げる。
気がつくと、リリアーナはラファエロの体に回した手で、彼の服をぎゅっと握り締めていた。
「………名残惜しいですか?」
微かに囁いたラファエロに、リリアーナは素直に頷いた。
この手を、離したくない。
口にこそ出さなかったが、リリアーナは抜けるような碧の瞳でじっとラファエロを見つめる。
「少し、踊り疲れましたね。………一緒に、抜けましょうか」
唐突にラファエロがそう呟いたかと思うと、リリアーナの体をぐいっと引き寄せ、軽く持ち上げた。
「…………っ!」
突然の事態にリリアーナは驚いて息を呑むが、ラファエロは気にした様子もなく、そのままダンスを楽しむ人々の隙間を縫って、窓辺へと移動していったのだった。
なるほど、とリリアーナは納得する。
確かに、舞踏会の際もエドアルドの代わりにラファエロが他国の姫君をエスコートし、国内の令嬢達からも誘われれば相手をしていたような気がする。
あの頃はジュストとともに出席しなければならなかったが、ジュストは表面上は取り繕うくせにリリアーナを悉くないがしろにしていたため、壁の花となってジュスト以外の男性が誘ってくれるのを待ち、夜会の参加者としての義務を果たしていたのを思い出す。
今となってはどうでもいい思い出だが、ラファエロも自分の意志ではなく、王族の義務としてダンスを熟していたという共通点を発見し、リリアーナは少し嬉しくなった。
だがその一方で、ラファエロの話を聞いているうちに、いくら女嫌いだからといって、王太子としての大切な仕事を実弟に押し付けるエドアルドもどうなのかと思ってしまう。
「………陛下の女性嫌いのせいで、ラファエロ様の苦労は絶えないですわね………」
リリアーナが同情するように小さく溜息を零すと、ラファエロは笑った。
「我々兄弟は、そうして互いを助け合って生きてきたのですから、大した問題ではありませんよ」
ラファエロの顔には、兄エドアルドに対する絶対的な信頼のようなものが浮かんでいるように見えた。
ラファエロにとって、エドアルドはそれくらいにかけがえのない存在なのだ。
リリアーナはそんなエドアルドを、ほんの少し羨ましく感じた。
そんな会話を交わしながら踊っているうちに、ラファエロと三曲続けて踊ってしまったことにはたと気が付いた。
同じ相手とダンスができるのは三回までで、それ以上はマナー違反とされているのだ。
曲の終わりが近づくにつれて、ラファエロともっと踊りたいという欲求が頭を擡げる。
気がつくと、リリアーナはラファエロの体に回した手で、彼の服をぎゅっと握り締めていた。
「………名残惜しいですか?」
微かに囁いたラファエロに、リリアーナは素直に頷いた。
この手を、離したくない。
口にこそ出さなかったが、リリアーナは抜けるような碧の瞳でじっとラファエロを見つめる。
「少し、踊り疲れましたね。………一緒に、抜けましょうか」
唐突にラファエロがそう呟いたかと思うと、リリアーナの体をぐいっと引き寄せ、軽く持ち上げた。
「…………っ!」
突然の事態にリリアーナは驚いて息を呑むが、ラファエロは気にした様子もなく、そのままダンスを楽しむ人々の隙間を縫って、窓辺へと移動していったのだった。
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