冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

閑話 国王陛下と王弟殿下の奮闘 ※読まなくても本編に影響ありません

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※ 時間軸は晩餐会後あたりまで遡ります。


エドアルドは、自室で今日何度目か分からない溜息をついた。

「自分の気持ちを伝えるなど、どうしたらいいのかさっぱり分からん………!」

幼い頃から神童と謳われ、王太子となってからも『完全無欠』とまで評され、生まれてこの方躓いたことなど一度もなかったエドアルドは、この時最大の挫折を味わっていた。

クラリーチェに、想いを伝えると決意したのはいいものの、侍女すらも必要最低限しか近づけさせないエドアルドにとって、女という生き物ははっきり言って未知の生物。
女心を勉強しろだのとラファエロに言われても、そもそもそれをどうやって勉強すればいいのかすらもさっぱり思い浮かばなかった。



「………ラファエロ。少し、いいか?」

結局困り果てたエドアルドは、ラファエロの部屋へと向かった。

「………そろそろ来る頃かと思っていましたよ」

ラファエロは、余裕たっぷりに微笑みながら手招きをする。
その態度は癪に障ったが、その気持ちを噛み潰して、声を振り絞る。

「頼む。教えてくれ。私はどうすればいい?」

するとラファエロは、呆れたように溜息をついた。

「兄上は、莫迦ですか?」
「何だと?」

唐突に弟からかけられた言葉に呆然とする。

「少しは自分で考えてきたのかと思えば丸投げとは………完全無欠の国王陛下が聞いて呆れますね」
「む………」

返す言葉が見つからず、エドアルドは押し黙った。
どんなに考えても何も思い浮かばないから恥を忍んで弟に助けを乞うたのに、この態度だ。
悔しさに唇を噛むエドアルドを見て、ほんの少し、ラファエロは笑い、囁いた。

「恥もプライドも捨てて、自分自身を曝け出すのですよ。彼女の心以外、欲しいものは何もないのでしょう?その気持ちを、包み隠さず、心のままに伝えるんです」
「心のままに………か」

ラファエロの言葉を、ゆっくりと噛み砕きながら消化していく。

「それと、重要なのは想いを伝える場所やシチュエーションですね。こう、乙女心を擽る………」
「その乙女心とやらが理解できていれば、お前に頭を下げていない」
「………そうでした。………全く、どうしてこんなカタブツに育ったのやら………。………あぁ、そういえば二人の出会いは、月の綺麗な夜でしたね?手紙でも書いて、夜の散歩にでも誘ってみてはいかがです?」
「なるほどな………」

エドアルドは納得したように頷いた。

「流石に、手紙の内容までは指導しませんよ?………このあたりの本でも読んで、勉強して下さい」

そう言ってファエロが差し出したのは、貴族令嬢達の間で流行している恋物語だった。
王太子と、不遇の令嬢が偶然出会い、困難を乗り越えて結ばれるといった内容の物だが、当然エドアルドはそんな物だとは知らない。

「ラファエロ、恩に着る」

渡された本を大切そうに脇に抱えると、エドアルドはそそくさと退散していった。

「………全く世話の焼ける兄ですね。私自身恋愛経験ゼロだと言うのに、何が悲しくて実の兄に恋愛の手解きをする為に恋物語で勉強など………」

ラファエロは去りゆく兄の背中を見つめながら独りごちた。


その後、部屋に戻ったエドアルドが人生初の恋物語というジャンルに手を出した。

「な………これは………」

(まるで、クラリーチェと私のようではないか………!)

エドアルドは1ページ、また1ページと読み進め、いつしか夢中になってページを捲っていた。
何度も、何度も読み返してしまう自分に気が付いた時には、既に空が白み始めていた。

「しまった………手紙を書かなければならぬというのに………」

局所局所の状況が妙に自分に当てはまるそのストーリーが、エドアルドを物語の世界に引き込んだ。

結局、手紙は三日間徹夜で文章を捻り出し、クラリーチェに届ける事に成功したのだった。

ちなみに恋物語の読本はラファエロの元には永久に戻ってくることはなかったという。
また、物語の作者が明かされる事は無かったが、とても高貴な身分の殿方なのだという噂がまことしやかに囁かれたという。
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