冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

201.クラリーチェの心

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クラリーチェは僅かに目を伏せた。

不安が、ないわけではない。
エドアルドに愛されているという事を実感している今ですら、これは全て夢なのではないかと思う事だってある。
それは、今がとても幸せだから。

だがリベラートの言うとおり、人の心は移ろう。
永遠の愛だの、真実の愛だのを誓っても、その愛が脆く崩れ去ったという話などいくらでもある。
今は想いが通じ合っているが、二人の関係に亀裂が入ることだってあるかもしれない。
そんなことは、分かっていた。
しかし、クラリーチェがその可能性を考えないようにしていたのは、エドアルドと過ごす、かけがえのない『今』を大切にしたいと思っていたからだった。

(未来の事など、誰にも分からないもの。それに………私は…………)

ゆっくりと息を吐き出すと、クラリーチェは強い意思の籠もった淡い紫色の瞳でリベラートを見据えた。

「王太子殿下が仰ることは、正しいのかもしれません。ですが………例え、エドアルド様の気持ちが変わってしまったとしても………私はこの命が尽きるまで………生涯エドアルド様しか愛しません。いえ………愛せません。こんなにも愛おしいと思える人に出逢えただけでも奇跡のようなのに………その方の愛を得られたのは、幸運以外の何物でもありませんもの。ですから、神が与えてくださったこの愛を最期まで貫くと決めたのです」

それは、クラリーチェの覚悟だった。
自分の選んだ道が、どんなに辛く、険しいものであったとしても、決して後悔などしない。
それだけ、エドアルドへの想いは強く、激しいものだった。

「クラリーチェ…………」

クラリーチェの決意を聞くのは何度目だろうか。
その度にエドアルドは胸が熱くなった。
出逢えた奇跡、そして愛し合えた奇跡。
一生恋など知らずに生きていく筈だったエドアルドの世界を変えた、唯一の存在。
今では、エドアルドの世界はクラリーチェを中心に回っているようにさえ思える程に愛おしくて仕方がない。そのクラリーチェが、こんなにも堂々と、自分経の想いを語ってくれるのだ。
エドアルドは堪えきれず、再びクラリーチェを抱きしめた。

「…………私も。私もクラリーチェだけだ」

たった一言、甘く、優しく蕩けるような声でエドアルドが囁いた。
それだけでクラリーチェの心はこの上ない幸福感に満たされていく。
うっとりと、クラリーチェはエドアルドを見つめると、春の花が陽の光を浴びて綻ぶように、艶やかに微笑んだ。

「………完敗、だな」

二人のやり取りを間近で見ていたリベラートが、小さく溜息をつきながら、そう零した。
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