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本編
212.祭の後で
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思いがけない、そしてとびきりのサプライズはあったものの、式典の日程は無事に終わり、沢山の人々の祝福を受けながら王宮へと戻った。
夕方からは祭を祝う夜会が開かれ、その中でも様々な貴族から声を掛けられた。
「まるで流行りの恋物語をそのまま再現したようで、ロマンチックでしたわ」
「後世まで語り継がれる開港祭になるのは間違いなさそうですね」
嬉しさと恥ずかしさが混在した表情を浮かべて、クラリーチェが微笑むと、貴族達………特に男性達からどよめきが起こった。
だがすぐにエドアルドが殺気を飛ばす為に彼等は退散せざるを得なくなるのだった。
夜会が終わり、部屋に下がると緊張が解けるのと同時に疲労感が襲ってきた。
アンナが用意してくれた湯船に浸かるとその心地よさに思わず瞼が下がってくる。
「流石にお疲れのようですね」
「そうね。でも、物凄く楽しかったわ」
それはクラリーチェの、心の底からの言葉だった。
「それは何よりですわね」
湯浴みを終えて身支度を整えると、クラリーチェの体調を考慮してか、お茶の準備だけ整えると、リディアとアンナは早めに退出していった。
一人きりの部屋は怖いくらいの静寂に包まれて、窓から差し込む月明かりで、青く染まって見える。
クラリーチェの人生の転機の日は、いつも月の美しい日だった。
クラリーチェは窓を見つめて、感慨深げに溜息をついた。
と。
ゆらり、とバルコニーに人影が見えて、クラリーチェは息を呑んだ。
人を、呼んだほうがいいのだろうかと考えを巡らせながら、目を凝らす。
コンコン、と窓をノックする音が、やけに大きく響くとクラリーチェはびくりと肩を揺らす。
ゆっくりと後ずさり、窓から距離を取ろうとした、ちょうどその時。不審な人影の顔が月明かりで照らし出されてはっきりと見えた。
「エドアルド………様?」
半ば呆然としながら、クラリーチェは人影に向かって呼び掛けた。
どうして城の主が、こんな夜中に、しかもバルコニーから現れるのかという疑問が沸々と湧き上がるが、とにかく慌てて窓を開けた。
「………驚かせてしまったか?」
「当たり前です」
エドアルドも湯浴みを済ませてきたらしく、仄かな石鹸の匂いが鼻を擽った。
「何故、こんな場所からいらっしゃったのですか?」
訊きたいことは色々あるが、まずは一番の疑問を口にすると、エドアルドはふわりと笑った。
「それは、『お忍び』だからだ。………今宵も月が美しい。ほんの少しだけ、出掛けないか?」
甘やかなエドアルドの低い声が耳元でそう告げると、クラリーチェは反射的に頷いていた。
夕方からは祭を祝う夜会が開かれ、その中でも様々な貴族から声を掛けられた。
「まるで流行りの恋物語をそのまま再現したようで、ロマンチックでしたわ」
「後世まで語り継がれる開港祭になるのは間違いなさそうですね」
嬉しさと恥ずかしさが混在した表情を浮かべて、クラリーチェが微笑むと、貴族達………特に男性達からどよめきが起こった。
だがすぐにエドアルドが殺気を飛ばす為に彼等は退散せざるを得なくなるのだった。
夜会が終わり、部屋に下がると緊張が解けるのと同時に疲労感が襲ってきた。
アンナが用意してくれた湯船に浸かるとその心地よさに思わず瞼が下がってくる。
「流石にお疲れのようですね」
「そうね。でも、物凄く楽しかったわ」
それはクラリーチェの、心の底からの言葉だった。
「それは何よりですわね」
湯浴みを終えて身支度を整えると、クラリーチェの体調を考慮してか、お茶の準備だけ整えると、リディアとアンナは早めに退出していった。
一人きりの部屋は怖いくらいの静寂に包まれて、窓から差し込む月明かりで、青く染まって見える。
クラリーチェの人生の転機の日は、いつも月の美しい日だった。
クラリーチェは窓を見つめて、感慨深げに溜息をついた。
と。
ゆらり、とバルコニーに人影が見えて、クラリーチェは息を呑んだ。
人を、呼んだほうがいいのだろうかと考えを巡らせながら、目を凝らす。
コンコン、と窓をノックする音が、やけに大きく響くとクラリーチェはびくりと肩を揺らす。
ゆっくりと後ずさり、窓から距離を取ろうとした、ちょうどその時。不審な人影の顔が月明かりで照らし出されてはっきりと見えた。
「エドアルド………様?」
半ば呆然としながら、クラリーチェは人影に向かって呼び掛けた。
どうして城の主が、こんな夜中に、しかもバルコニーから現れるのかという疑問が沸々と湧き上がるが、とにかく慌てて窓を開けた。
「………驚かせてしまったか?」
「当たり前です」
エドアルドも湯浴みを済ませてきたらしく、仄かな石鹸の匂いが鼻を擽った。
「何故、こんな場所からいらっしゃったのですか?」
訊きたいことは色々あるが、まずは一番の疑問を口にすると、エドアルドはふわりと笑った。
「それは、『お忍び』だからだ。………今宵も月が美しい。ほんの少しだけ、出掛けないか?」
甘やかなエドアルドの低い声が耳元でそう告げると、クラリーチェは反射的に頷いていた。
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