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本編
215.月と花火
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「ええと………確かに、開港祭のお祝いに花火を打ち上げたという記録があったと思いますが………」
困ったようにクラリーチェがそう呟くが、エドアルドは憮然とした表情を崩さない。
そんなエドアルドを見つめて、クラリーチェは楽しそうに笑った。
「花火は、お嫌いですか?」
「………いや………そうではないが………」
クラリーチェは、空を見上げたまま微かな吐息を漏らした。
「せっかくの花火ですもの。お嫌いでないのなら、楽しみませんか?」
ぱっと花開いた瞬間の閃光が、クラリーチェの顔を一際明るく照らす。
エドアルドは暫くその様に見入っていたが、やがてふっと顔を緩めると、頷いた。
「………そうだな」
エドアルドが思い描いていた展開とは少し違う結果となったが、二人はお互い抱き締めあったまま、咲いては消える花火を、ずっと眺めていた。
最後の花火が、闇に消えたのを確認すると、エドアルドはゆっくりと視線をクラリーチェへと戻した。
「夜も更けた。そろそろ城に戻らなければ、騒ぎになるな」
エドアルドの言葉を聞いて、そう言えば『お忍び』で城を抜け出してきていたのだということをクラリーチェは思い出す。
「まあ、門番達も知っているから問題はなかろう」
慌てるクラリーチェとほ対象的に、エドアルドは涼しい顔をしていた。
そう言えば、この場所で出会った時も、エドアルドはどこかへ出掛けた帰り道のようだったのを思い出す。
「………出会った日の夜も、このようにお忍びで出掛けていたのですか?」
「ん?………ああ………あれは、母の墓参りの帰りだったんだ」
思いがけない言葉に、クラリーチェは瞠目する。
「ちょうど、ラファエロの誕生日の翌日が命日だったのだが………命日の当日は、どうしても行けなくてな。だからその翌日、全ての政務を終わらせてから急ぎ馬を駆って出掛けた」
なるほど、とクラリーチェは納得する。
王家の墓地は、ちょうどこの草原を抜けた先にある。
王太子が、あのような時間にこの場所を通ったと言っても、何ら不思議はない。
「………あの月を見ていたら………もしかしたら、母と………前ジャクウィント侯爵夫妻が、私達を引き合わせてくれたのかもしれないという気がしてきた」
エドアルドは眩しそうに、月を見つめた。
あの日と変わらない美しさを湛えて、月は大きく輝いている。
エドアルドの腕の中で、クラリーチェも同じように月を見上げると、エドアルドの言葉を聞いた途端に潤み始めた視界を誤魔化すように頷いた。
運命。奇跡。幸運。そんな言葉で、この出会いを表現し続けてきたが、エドアルドの言ったとおり、亡きリオネッラ妃や両親が導いてくれた縁だとしたら。
「………泣くな」
呆れたように、エドアルドがクラリーチェの涙を拭うと、クラリーチェを抱き寄せ、口付けを落とした。
困ったようにクラリーチェがそう呟くが、エドアルドは憮然とした表情を崩さない。
そんなエドアルドを見つめて、クラリーチェは楽しそうに笑った。
「花火は、お嫌いですか?」
「………いや………そうではないが………」
クラリーチェは、空を見上げたまま微かな吐息を漏らした。
「せっかくの花火ですもの。お嫌いでないのなら、楽しみませんか?」
ぱっと花開いた瞬間の閃光が、クラリーチェの顔を一際明るく照らす。
エドアルドは暫くその様に見入っていたが、やがてふっと顔を緩めると、頷いた。
「………そうだな」
エドアルドが思い描いていた展開とは少し違う結果となったが、二人はお互い抱き締めあったまま、咲いては消える花火を、ずっと眺めていた。
最後の花火が、闇に消えたのを確認すると、エドアルドはゆっくりと視線をクラリーチェへと戻した。
「夜も更けた。そろそろ城に戻らなければ、騒ぎになるな」
エドアルドの言葉を聞いて、そう言えば『お忍び』で城を抜け出してきていたのだということをクラリーチェは思い出す。
「まあ、門番達も知っているから問題はなかろう」
慌てるクラリーチェとほ対象的に、エドアルドは涼しい顔をしていた。
そう言えば、この場所で出会った時も、エドアルドはどこかへ出掛けた帰り道のようだったのを思い出す。
「………出会った日の夜も、このようにお忍びで出掛けていたのですか?」
「ん?………ああ………あれは、母の墓参りの帰りだったんだ」
思いがけない言葉に、クラリーチェは瞠目する。
「ちょうど、ラファエロの誕生日の翌日が命日だったのだが………命日の当日は、どうしても行けなくてな。だからその翌日、全ての政務を終わらせてから急ぎ馬を駆って出掛けた」
なるほど、とクラリーチェは納得する。
王家の墓地は、ちょうどこの草原を抜けた先にある。
王太子が、あのような時間にこの場所を通ったと言っても、何ら不思議はない。
「………あの月を見ていたら………もしかしたら、母と………前ジャクウィント侯爵夫妻が、私達を引き合わせてくれたのかもしれないという気がしてきた」
エドアルドは眩しそうに、月を見つめた。
あの日と変わらない美しさを湛えて、月は大きく輝いている。
エドアルドの腕の中で、クラリーチェも同じように月を見上げると、エドアルドの言葉を聞いた途端に潤み始めた視界を誤魔化すように頷いた。
運命。奇跡。幸運。そんな言葉で、この出会いを表現し続けてきたが、エドアルドの言ったとおり、亡きリオネッラ妃や両親が導いてくれた縁だとしたら。
「………泣くな」
呆れたように、エドアルドがクラリーチェの涙を拭うと、クラリーチェを抱き寄せ、口付けを落とした。
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