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16.アンネリーゼの正体(SIDE:ジークヴァルト)
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ウルリヒが訪ねてきてから三日後、ふと窓の外に気配を感じて視線を移すと、そこにはダミアンの姿があった。
「随分と遅かったじゃないか。………で、首尾はどうだ?」
窓を開けてやると、大鷹が羽を震わせて部屋に入ってきた。
「お探しの令嬢ですが、主の情報と一致する特徴を持つのは、モルゲンシュテルン侯爵令嬢………アンネリーゼ・モルゲンシュテルンでした」
「………モルゲンシュテルン侯爵令嬢?フォイルゲンでも、クルツでもなく、我が国の貴族?それも、モルゲンシュテルン侯爵家?………それは確かなのか?」
身分については予想通りだったが、国内の貴族だったということ、そして貴族でありながら他の貴族に疎いジークヴァルトですらも知っているような由緒ある家柄の令嬢だった事にジークヴァルトは驚いた。
「主の指示ではフォイルゲンとクルツの貴族ということでしたが、プラチナブロンドに青の瞳という令嬢は見つからなかった為、私の独断で国内も当たってみたのですが………勝手な真似をして、申し訳ございません」
ダミアンが僅かに首を下げて謝罪する。
「いや、………よくやってくれたな。………彼女の持つ色彩は、そんなに珍しいのか………」
一度見たら忘れられない、美しいアンネリーゼの髪と瞳を思い浮かべるだけで、心の奥底に閉じ込めた感情が、ざわつく。
ジークヴァルトはそれを押し止めるように拳を握った。
「………彼女は今、行方不明なんだな?」
「はい。婚約者と共に出掛けた帰りに、行方不明になったとのことです。婚約者の方は、亡骸が見つかったらしく、賊に襲われたとの憶測が広がっておりました」
婚約者、という言葉にジークヴァルトの胸はチクリとした痛みを訴えたが、彼はそれに気が付かないふりをした。
「婚約者を、目の前で殺されるのはどんな気持ちだろう………」
「は?」
ポツリと呟いたジークヴァルトに、ダミアンは不思議そうに首を傾げてみせた。
「いや、何でもない。ついでに、ノイマン伯爵について調べてくれ」
「ノイマン………ギュンター・ノイマン伯爵ですか?」
「俺が知っていると思うか?だったらお前に偵察なんて頼まない」
ぎろりと金色の双眸が、ダミアンの丸くて鋭い目を射抜く。
「そうですね。しかし、何があったのです?………主が積極的にヒトと関わろうとするとは……」
ばさり、と大きな翼を広げたダミアンは、湾曲した嘴で丁寧に毛づくろいをしながらジークヴァルトに尋ねる。
「………ただの、気まぐれだ」
小さな溜息を一つつくと、ジークヴァルトはダミアンを自らの腕にとまらせる。
猛禽類特有の鋭い鉤爪が、ジークヴァルトの皮膚に食い込み、血が流れた。
「………主らしくない………」
ダミアンは少し呆れたように瞬きすると、首を下げてジークヴァルトの腕を伝う血を啜り始めた。
ダミアンは、ジークヴァルトと『血の契約』を結んだ魔鳥。
ジークヴァルトが自らの血と魔力を『餌』として与える代わりに、彼に隷属している。
普段は大鷹の姿を取っているが、他の猛禽類にや、時には人の姿をとることもできる強力な力を持つ魔鳥だった。
「そのノイマンとはどんな奴だ?」
「………いい噂は聞きません」
あのような男を使者に立てるくらいだからそうだろうと、ジークヴァルトは思った。
「ノイマンの身辺を探れ。モルゲンシュテルン侯爵令嬢との繋がりについてもだ。………なるべく急げよ?」
「………わかりました。………しかし、本当に主らしくないですね」
ダミアンの言葉に、ジークヴァルトは自嘲気味な笑みを浮かべた。
「………俺らしくない、か。確かにそうだな」
これは、ただの気まぐれだ。
ジークヴァルトは心の中でそう自分に言い聞かせるように呟いた。
「随分と遅かったじゃないか。………で、首尾はどうだ?」
窓を開けてやると、大鷹が羽を震わせて部屋に入ってきた。
「お探しの令嬢ですが、主の情報と一致する特徴を持つのは、モルゲンシュテルン侯爵令嬢………アンネリーゼ・モルゲンシュテルンでした」
「………モルゲンシュテルン侯爵令嬢?フォイルゲンでも、クルツでもなく、我が国の貴族?それも、モルゲンシュテルン侯爵家?………それは確かなのか?」
身分については予想通りだったが、国内の貴族だったということ、そして貴族でありながら他の貴族に疎いジークヴァルトですらも知っているような由緒ある家柄の令嬢だった事にジークヴァルトは驚いた。
「主の指示ではフォイルゲンとクルツの貴族ということでしたが、プラチナブロンドに青の瞳という令嬢は見つからなかった為、私の独断で国内も当たってみたのですが………勝手な真似をして、申し訳ございません」
ダミアンが僅かに首を下げて謝罪する。
「いや、………よくやってくれたな。………彼女の持つ色彩は、そんなに珍しいのか………」
一度見たら忘れられない、美しいアンネリーゼの髪と瞳を思い浮かべるだけで、心の奥底に閉じ込めた感情が、ざわつく。
ジークヴァルトはそれを押し止めるように拳を握った。
「………彼女は今、行方不明なんだな?」
「はい。婚約者と共に出掛けた帰りに、行方不明になったとのことです。婚約者の方は、亡骸が見つかったらしく、賊に襲われたとの憶測が広がっておりました」
婚約者、という言葉にジークヴァルトの胸はチクリとした痛みを訴えたが、彼はそれに気が付かないふりをした。
「婚約者を、目の前で殺されるのはどんな気持ちだろう………」
「は?」
ポツリと呟いたジークヴァルトに、ダミアンは不思議そうに首を傾げてみせた。
「いや、何でもない。ついでに、ノイマン伯爵について調べてくれ」
「ノイマン………ギュンター・ノイマン伯爵ですか?」
「俺が知っていると思うか?だったらお前に偵察なんて頼まない」
ぎろりと金色の双眸が、ダミアンの丸くて鋭い目を射抜く。
「そうですね。しかし、何があったのです?………主が積極的にヒトと関わろうとするとは……」
ばさり、と大きな翼を広げたダミアンは、湾曲した嘴で丁寧に毛づくろいをしながらジークヴァルトに尋ねる。
「………ただの、気まぐれだ」
小さな溜息を一つつくと、ジークヴァルトはダミアンを自らの腕にとまらせる。
猛禽類特有の鋭い鉤爪が、ジークヴァルトの皮膚に食い込み、血が流れた。
「………主らしくない………」
ダミアンは少し呆れたように瞬きすると、首を下げてジークヴァルトの腕を伝う血を啜り始めた。
ダミアンは、ジークヴァルトと『血の契約』を結んだ魔鳥。
ジークヴァルトが自らの血と魔力を『餌』として与える代わりに、彼に隷属している。
普段は大鷹の姿を取っているが、他の猛禽類にや、時には人の姿をとることもできる強力な力を持つ魔鳥だった。
「そのノイマンとはどんな奴だ?」
「………いい噂は聞きません」
あのような男を使者に立てるくらいだからそうだろうと、ジークヴァルトは思った。
「ノイマンの身辺を探れ。モルゲンシュテルン侯爵令嬢との繋がりについてもだ。………なるべく急げよ?」
「………わかりました。………しかし、本当に主らしくないですね」
ダミアンの言葉に、ジークヴァルトは自嘲気味な笑みを浮かべた。
「………俺らしくない、か。確かにそうだな」
これは、ただの気まぐれだ。
ジークヴァルトは心の中でそう自分に言い聞かせるように呟いた。
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