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66.揺らぐ気持ち(SIDE:ジークヴァルト)
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予定より少し早めに二日目の宿へと到着し、一息ついたあとにジークヴァルトは明日の予定を報告するためにアンネリーゼの部屋を訪れた。
「クルツに入れば、山道が続きますので本日は早めにお休みいただいた方がよろしいかと存じます。では、私はこれで…………」
アンネリーゼの宝石のような美しい瞳がじっと自分を見つめている事に気がついて、居た堪れない気持ちになったジークヴァルトは出来る限り優雅な動作でお辞儀をすると、アンネリーゼに背を向けてそそくさと部屋を出ていこうとした。
「待って!」
背後から突然呼び止められて、ジークヴァルトは動きを止めた。
「………何か?」
「あ………あの…………少し、お茶を飲んでいかれませんか?」
戸惑いながらもゆっくりと振り返ると、声を掛けた側であるはずのアンネリーゼの方が困り果てているようだった。
普段は青白い顔が、みるみる紅潮していくのが見て取れて、困惑しながらも、彼女のその反応が可愛らしいと思ってしまう自分がいた。
「分かりました」
「え…………?」
もじもじとするアンネリーゼに、静かに答えると、アンネリーゼは驚いたようだった。
「一杯だけ、ご馳走になりましょう」
はっきりと告げると、アンネリーゼは嬉しそうな微笑みを浮かべたように見えた。
数分後。
向かいに座ったアンネリーゼを、ジークヴァルトはまじまじと観察する。
緊張しているのか、アンネリーゼの周りを漂う魔力は、美しく煌めきながらも、どこか不安定だ。
「………冷めないうちに、召し上がってください」
勧められるままにカップに手を伸ばすが、味などまるで分からなかった。
「ジーク様は、お幾つなのですか?まだ、随分とお若いようですけれど………」
唐突に尋ねられて、ジークヴァルトは少し困ったように目を伏せた。
「………逆にお訊きしますが、私は幾つに見えますか?」
当然、素直に答える訳にはいかない。だが、何と答えるのが正しいのか分からず、アンネリーゼの出方を見ることにした。
「そうですわね………わたくしは今年十八歳ですが、わたくしよりも少し年上に見えますので二十歳、位でしょうか?」
変身魔法を使ってはいるが、ジークヴァルトの『年齢』が止まったのは、十九歳の時だからあながち間違いではないなどということを、ぼんやりと考える。
「………そうですか。ではそういうことにしましょう」
是でも非でもない、曖昧な答えで誤魔化そうとする。
「………気分を害されたのなら、謝罪致しますわ。わたくしはただ、あなたがさぞかし努力されてきた結果、若くして陛下の目に止まったのだと………」
感情を上手く表現出来なかったせいか、少し萎縮した様子のアンネリーゼが、謝罪しながら口籠る。
「あなたは、仮にも侯爵令嬢で女神から選ばれた巫女姫なのですから、私のような一介の騎士に無闇に頭を下げるべきではないでしょう。……
しかし、褒め言葉だけはありがたく頂いておきましょう」
ジークヴァルトが知っている巫女姫は、誇り高い人だった。
彼女とアンネリーゼを比べるつもりはなかったが、簡単に頭を下げるべきではないことを、分かって貰いたくて窘めると、アンネリーゼは項垂れる。
「………話がそれだけであれば、私はこれで失礼します。美味しいお茶をどうもご馳走さまでした」
これ以上話をしてもアンネリーゼを傷つけるだけだと判断したジークヴァルトは形式だけの挨拶を済ませて立ち去ろうとする。
すると、立ち上がったアンネリーゼから、思いもよらぬ言葉を投げかけられた。
「………ジーク様と、以前どこかでお会いしたことはございませんでしたか?」
驚きのあまり、ジークヴァルトは大きく目を見開いて、アンネリーゼを見つめた。
「クルツに入れば、山道が続きますので本日は早めにお休みいただいた方がよろしいかと存じます。では、私はこれで…………」
アンネリーゼの宝石のような美しい瞳がじっと自分を見つめている事に気がついて、居た堪れない気持ちになったジークヴァルトは出来る限り優雅な動作でお辞儀をすると、アンネリーゼに背を向けてそそくさと部屋を出ていこうとした。
「待って!」
背後から突然呼び止められて、ジークヴァルトは動きを止めた。
「………何か?」
「あ………あの…………少し、お茶を飲んでいかれませんか?」
戸惑いながらもゆっくりと振り返ると、声を掛けた側であるはずのアンネリーゼの方が困り果てているようだった。
普段は青白い顔が、みるみる紅潮していくのが見て取れて、困惑しながらも、彼女のその反応が可愛らしいと思ってしまう自分がいた。
「分かりました」
「え…………?」
もじもじとするアンネリーゼに、静かに答えると、アンネリーゼは驚いたようだった。
「一杯だけ、ご馳走になりましょう」
はっきりと告げると、アンネリーゼは嬉しそうな微笑みを浮かべたように見えた。
数分後。
向かいに座ったアンネリーゼを、ジークヴァルトはまじまじと観察する。
緊張しているのか、アンネリーゼの周りを漂う魔力は、美しく煌めきながらも、どこか不安定だ。
「………冷めないうちに、召し上がってください」
勧められるままにカップに手を伸ばすが、味などまるで分からなかった。
「ジーク様は、お幾つなのですか?まだ、随分とお若いようですけれど………」
唐突に尋ねられて、ジークヴァルトは少し困ったように目を伏せた。
「………逆にお訊きしますが、私は幾つに見えますか?」
当然、素直に答える訳にはいかない。だが、何と答えるのが正しいのか分からず、アンネリーゼの出方を見ることにした。
「そうですわね………わたくしは今年十八歳ですが、わたくしよりも少し年上に見えますので二十歳、位でしょうか?」
変身魔法を使ってはいるが、ジークヴァルトの『年齢』が止まったのは、十九歳の時だからあながち間違いではないなどということを、ぼんやりと考える。
「………そうですか。ではそういうことにしましょう」
是でも非でもない、曖昧な答えで誤魔化そうとする。
「………気分を害されたのなら、謝罪致しますわ。わたくしはただ、あなたがさぞかし努力されてきた結果、若くして陛下の目に止まったのだと………」
感情を上手く表現出来なかったせいか、少し萎縮した様子のアンネリーゼが、謝罪しながら口籠る。
「あなたは、仮にも侯爵令嬢で女神から選ばれた巫女姫なのですから、私のような一介の騎士に無闇に頭を下げるべきではないでしょう。……
しかし、褒め言葉だけはありがたく頂いておきましょう」
ジークヴァルトが知っている巫女姫は、誇り高い人だった。
彼女とアンネリーゼを比べるつもりはなかったが、簡単に頭を下げるべきではないことを、分かって貰いたくて窘めると、アンネリーゼは項垂れる。
「………話がそれだけであれば、私はこれで失礼します。美味しいお茶をどうもご馳走さまでした」
これ以上話をしてもアンネリーゼを傷つけるだけだと判断したジークヴァルトは形式だけの挨拶を済ませて立ち去ろうとする。
すると、立ち上がったアンネリーゼから、思いもよらぬ言葉を投げかけられた。
「………ジーク様と、以前どこかでお会いしたことはございませんでしたか?」
驚きのあまり、ジークヴァルトは大きく目を見開いて、アンネリーゼを見つめた。
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