呪われた騎士は記憶喪失の乙女に愛を捧げる

玉響

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114.口付け

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どれくらいの間、そうしていただろうか。
漸くジークヴァルトがアンネリーゼから身体を離したのは、既に陽が傾き始めた頃だった。

「………そろそろ神官達に、解毒の魔法が成功したことを報告してやらないと、やきもきしているだろう。………俺としてはずっとあなたと、こうしていたいところだけれど」

出会った頃の無表情が嘘のように、ジークヴァルトの金色の瞳は強い生命力を湛え、穏やかな微笑みが浮かんでいた。

ミアの事、ルートヴィヒの事、ギュンターとフローラの事、アリッサの事、そして不老不死の呪いの事。
まだ何一つとしてふたりの前に立ちはだかる問題は解決していない。
それでもジークヴァルトの表情は信じられないくらいに晴れやかなものだった。

「心配しなくても、わたくしはどこにも行きません。………それに、ジーク様はわたくしの護衛騎士ですから、巡礼の間も………そしてその先もずっと、わたくしの側にいてくださるのでしょう?」

小首を傾げながら、アンネリーゼはふわりと微笑む。
その顔を見たジークヴァルトは堪らないといった様子で、アンネリーゼを抱き上げると、ゆっくりと顔を近づけてきた。
鼻先が触れ、熱を孕んだ吐息が掛かると、恥ずかしさのあまり、アンネリーゼは深い蒼の瞳をゆっくりと閉じる。
それを待っていたかのように、ジークヴァルトの唇が、アンネリーゼのそれに重なった。

初めは本当に軽く触れる程度だったものが、啄むような優しいバードキスへと変わり、そしてそれはやがて深い口付けになっていく。
割り開かれた歯列をなぞり、舌が絡め取られる。
肉厚の、ぬるりとした感触が口内を蹂躪する、初めて味わう感覚がじわりと快感を広げ、アンネリーゼはそれに応える。

ぎゅっと手に力が込められたと感じた後、ゆっくりと唇が離された。

「………これ以上続けたら、俺の理性が持ちそうにない………」

金色の双眸を蜂蜜のようにとろりと蕩かせながら見つめられ、アンネリーゼは一際大きく胸の鼓動が跳ね上がるのを感じた。

ジークヴァルトは心を落ち着かせるかのように深呼吸をすると名残り惜しそうに軽い口付けを落とすと、思わず溜息が出るほど美しく艶めかしい笑顔を浮かべ、アンネリーゼを抱き上げたまま、歩き出した。

「ジ、ジーク様………自分で歩けますから、降ろして下さい………っ」

思わぬ事態にアンネリーゼは慌てるが、ジークヴァルトは全く気にする様子も無かった。

「解毒したから問題ないとはいえ、毒を飲まされた直後ですし、巫女姫たるあなたの身に万一の事があったら大変ですから、こうして護衛騎士の役目を果たしているのですよ」

わざと口調を騎士らしい丁寧なものに変えて見せながら、ジークヴァルトは意気揚々とアンネリーゼを抱いたまま聖殿の中を進んでいくのだった。
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