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138.アリッサ
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父・モルゲンシュテルン侯爵から、祈りの儀式の準備が一週間後に始まると聞かされた翌日。
アンネリーゼはジークヴァルトに付き添って貰い、王立図書館へと足を運んだ。
「…………ここに足を踏み入れるのも久しぶりだな」
懐かしそうに目を細めるジークヴァルトに、アンネリーゼは驚いた。
「こちらに、いらっしゃった事があったのですか?」
「………ちゃんと、人間だった頃の事だけどな」
相変わらず目立たないように変身魔法を掛けた姿のジークヴァルトが、アンネリーゼの耳元で静かに囁く。
ジークヴァルトの吐息が耳に掛かり、アンネリーゼは耳から背筋、そして全身にゾクリとした感覚が駆け抜けていくのを感じる。
「ジ………ジーク様っ、悪ふざけが過ぎますわ」
「ああ………悪かったな。俺の愛しい人の色々な表情を、見たかったんだ」
恥ずかしげもなく、そんな甘ったるい台詞が耳元で聞こえて、アンネリーゼは透き通った白い頬を薄っすらと朱く染めると、ジークヴァルトは嬉しそうに微笑んだ。
本来の決して派手ではない仮初めの姿ではあるものの、出会った頃のような、全く感情の籠もらない無表情が嘘のようだとアンネリーゼは照れながらも思った。
「………アリッサも、本が好きだったんだ。あいつは体が弱かったから、外で走り回ったりすることも出来なかったから、必然的に読書をして過ごしていた。………巫女姫に選ばれて、王城に登城する際には必ずここに立ち寄っていたんだ」
薄暗い、独特の空気が漂う室内を眺めながらそう語るジークヴァルトの顔は、よく知っているはずなのに、何故か見知らぬ人の顔のようにアンネリーゼの眼には映った。
アリッサ。
ジークヴァルトがアリッサの事を話す時の表情は、いつもそうだ。
とても愛おしい存在を、大切に守っているかのような、アンネリーゼの知らない、ジークヴァルトの表情だった。
ジークヴァルトの、アンネリーゼへの気持ちを疑う訳ではない。
だが、過去は消し去ることは出来ない。
この先、もしジークヴァルトと共に歩んでいくのだとしたら、ずっとこんな気持ちを抱えていかなければならないのだろうか。
そんなことを考えた途端に胸の奥がずきり、と強く悲鳴を上げた。
夢の中で出逢った彼女の嫋やかな微笑みが、アンネリーゼの中でまざまざと蘇る。
アンネリーゼの身の内で、新しい感情がじわりと広がっていく。
それは、『嫉妬』以外のなにものでもないと、この時のアンネリーゼはまだ気が付いていなかった。
アンネリーゼはジークヴァルトに付き添って貰い、王立図書館へと足を運んだ。
「…………ここに足を踏み入れるのも久しぶりだな」
懐かしそうに目を細めるジークヴァルトに、アンネリーゼは驚いた。
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「………ちゃんと、人間だった頃の事だけどな」
相変わらず目立たないように変身魔法を掛けた姿のジークヴァルトが、アンネリーゼの耳元で静かに囁く。
ジークヴァルトの吐息が耳に掛かり、アンネリーゼは耳から背筋、そして全身にゾクリとした感覚が駆け抜けていくのを感じる。
「ジ………ジーク様っ、悪ふざけが過ぎますわ」
「ああ………悪かったな。俺の愛しい人の色々な表情を、見たかったんだ」
恥ずかしげもなく、そんな甘ったるい台詞が耳元で聞こえて、アンネリーゼは透き通った白い頬を薄っすらと朱く染めると、ジークヴァルトは嬉しそうに微笑んだ。
本来の決して派手ではない仮初めの姿ではあるものの、出会った頃のような、全く感情の籠もらない無表情が嘘のようだとアンネリーゼは照れながらも思った。
「………アリッサも、本が好きだったんだ。あいつは体が弱かったから、外で走り回ったりすることも出来なかったから、必然的に読書をして過ごしていた。………巫女姫に選ばれて、王城に登城する際には必ずここに立ち寄っていたんだ」
薄暗い、独特の空気が漂う室内を眺めながらそう語るジークヴァルトの顔は、よく知っているはずなのに、何故か見知らぬ人の顔のようにアンネリーゼの眼には映った。
アリッサ。
ジークヴァルトがアリッサの事を話す時の表情は、いつもそうだ。
とても愛おしい存在を、大切に守っているかのような、アンネリーゼの知らない、ジークヴァルトの表情だった。
ジークヴァルトの、アンネリーゼへの気持ちを疑う訳ではない。
だが、過去は消し去ることは出来ない。
この先、もしジークヴァルトと共に歩んでいくのだとしたら、ずっとこんな気持ちを抱えていかなければならないのだろうか。
そんなことを考えた途端に胸の奥がずきり、と強く悲鳴を上げた。
夢の中で出逢った彼女の嫋やかな微笑みが、アンネリーゼの中でまざまざと蘇る。
アンネリーゼの身の内で、新しい感情がじわりと広がっていく。
それは、『嫉妬』以外のなにものでもないと、この時のアンネリーゼはまだ気が付いていなかった。
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