呪われた騎士は記憶喪失の乙女に愛を捧げる

玉響

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139.襲撃

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「大分長居してしまったようですね。お付き合い頂き、ありがとうございました」

アンネリーゼは読み終えた本を元の書棚に返却すると、机の上に積み重なった何冊かの本の貸出手続きを取りながらジークヴァルトにお礼を述べる。

「あなたと共に過ごす時間に、退屈などしない。あなたが思う存分楽しめたのならそれでいいんだ」

ジークヴァルトはふっと微笑むと、さり気なくアンネリーゼの借りる本を手にしていく。

「あ………それくらいは、自分で持てますわ」
「いや、肉体労働は護衛騎士の本分だから気にしないでくれ。それに、淑女に重たい物を持たせるなど、騎士の名折れだ」

分厚い本を何冊かを懐に抱えると、ジークヴァルトは、はにかむアンネリーゼをエスコートしながら図書館を後にした。

図書館の裏手から通りに出ると、陽は既に沈みかけていた。

「大変。早く戻らないとお母様に叱られてしまうわ」

思った以上に長居してしまった事にアンネリーゼは慌て、帰路につこうとした。
と。
周囲の空気が動く気配がして、ジークヴァルトの茶色く擬態した瞳がすうっと殺気を帯びた。

「…………アンネリーゼ」
「はい」
「…………その辺りにいる奴等は、知り合いか何かか?」
「……………?いいえ?ただこちらに居合わせただけの方たちですけれど…………?」

ジークヴァルトの質問の意味を、解りかねるといった風に目を瞬く。
すると、ジークヴァルトは突然抱えたはずの本をアンネリーゼに手渡したかと思うと、アンネリーゼを横抱きにし、物凄い速さで走り出した。

「ジーク様?!」
「黙っていろ。舌を噛むぞ」

ジークヴァルトの肩越しに、周囲にいた男達が一斉に追いかけて来るのが目に入る。

「逃げたぞ!早く追いかけろ!!」

バタバタと、複数の足音が追いかけてくる気配に、アンネリーゼはジークヴァルトにぎゅっとしがみついた。

「ダミアン!」

ジークヴァルトが走りながら叫ぶと、ひゅっと風を裂く音がした。

「………気がつくのが、遅かったのでは?」

ほんの少し笑いを含んだ、落ち着いた声が聞こえてきた。

「うるさい。アンネリーゼに危険が及ぶ前にさっさと捕えろ」

いつの間にか立ち止まったジークヴァルトが、アンネリーゼを下ろしながら静かに告げる。
迫る正体不明の男たちとアンネリーゼ達との間に、いつの間にかヒト型のダミアンが立っていた。

「…………逃げられないように、防御壁をお願いしますね」
「分かっている」

ジークヴァルトはアンネリーゼを抱き寄せながら、空いた手で魔法を発動させた。
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