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146.魔女の思惑
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「まずは娘を守って下さった事に礼を言わねばなりませんな」
モルゲンシュテルン侯爵は軽く頭を下げた。
「いえ、それは俺の仕事ですので礼など不要です」
ジークヴァルトは静かに、金色の瞳を伏せる。
「………早速ですが、モルゲンシュテルン侯爵。クラネルト男爵家は魔女の『手先』ではあるが、『協力者』ではありません」
「…………それは、つまり?」
モルゲンシュテルン侯爵は怪訝そうに眉を顰めた。
「………あの強かで狡猾な魔女にいいように利用されていることすらも気が付かず、魔女の力を逆に利用しているつもりになっているのでしょう。…………魔女にとって、男爵は捨て駒の一つなのでしょうね。その証拠に、魔女は俺についての情報を、一切男爵側に伝えていなかったのです。魔女の狙いは俺で、男爵家の狙いはアンネリーゼ。しかし今回襲ってきた奴らはあくまでもアンネリーゼだけを狙っていたのです。それは魔女にとっては何の特にもならないというのに、わざわざ魔呪を使ったのです。………もしかすると魔女は、アンネリーゼを使って良からぬ事を考えているのかもしれません」
たった数回の質問で、ジークヴァルトはそのことを確認していたらしいという事が、アンネリーゼにも分かった。
「………しかし解せないのは、何故魔女がクラネルト男爵に接触出来たのかということです。王都には、魔族除けの結界が張り巡らされていて、ダミアンのように人と血の契約でも結ばない限りは魔族は入ってくることは出来ないと聞いていますが………」
禍月の魔女に関わることに対しては、ジークヴァルトは感情を剥き出しにするし、口数も増える。
彼にとって禍月の魔女はそれだけ憎い相手なのだろう。
「………確かに。クラネルト男爵はここ数年王都を離れた事は無かったと思います。そうすると、魔女が彼と接触したのは王都でという事になりますが…………、どんなに強い魔力を持っていても魔族が侵入するのは不可能な筈。となると…………」
モルゲンシュテルン侯爵の深い蒼の瞳が、彼の愛娘を捉える。
「………実際に魔女と繋がっているのは男爵というよりも男爵令嬢で、彼女の指示に父である男爵が従っているという事も考えられるのではないでしょうか。………寧ろ娘に敵対心を抱いているのはあの小娘の方ですし、あの娘は闇魔法の適性が強かったかと…………」
「なるほど…………」
モルゲンシュテルン侯爵の見解を聞いて、ジークヴァルトは頷いき、アンネリーゼは俯いた。
フローラの天使のような、それでいてどこか人を貶めるような意地悪さを含んだ笑顔が頭に浮かび、アンネリーゼはふるふると首を振った。
モルゲンシュテルン侯爵は軽く頭を下げた。
「いえ、それは俺の仕事ですので礼など不要です」
ジークヴァルトは静かに、金色の瞳を伏せる。
「………早速ですが、モルゲンシュテルン侯爵。クラネルト男爵家は魔女の『手先』ではあるが、『協力者』ではありません」
「…………それは、つまり?」
モルゲンシュテルン侯爵は怪訝そうに眉を顰めた。
「………あの強かで狡猾な魔女にいいように利用されていることすらも気が付かず、魔女の力を逆に利用しているつもりになっているのでしょう。…………魔女にとって、男爵は捨て駒の一つなのでしょうね。その証拠に、魔女は俺についての情報を、一切男爵側に伝えていなかったのです。魔女の狙いは俺で、男爵家の狙いはアンネリーゼ。しかし今回襲ってきた奴らはあくまでもアンネリーゼだけを狙っていたのです。それは魔女にとっては何の特にもならないというのに、わざわざ魔呪を使ったのです。………もしかすると魔女は、アンネリーゼを使って良からぬ事を考えているのかもしれません」
たった数回の質問で、ジークヴァルトはそのことを確認していたらしいという事が、アンネリーゼにも分かった。
「………しかし解せないのは、何故魔女がクラネルト男爵に接触出来たのかということです。王都には、魔族除けの結界が張り巡らされていて、ダミアンのように人と血の契約でも結ばない限りは魔族は入ってくることは出来ないと聞いていますが………」
禍月の魔女に関わることに対しては、ジークヴァルトは感情を剥き出しにするし、口数も増える。
彼にとって禍月の魔女はそれだけ憎い相手なのだろう。
「………確かに。クラネルト男爵はここ数年王都を離れた事は無かったと思います。そうすると、魔女が彼と接触したのは王都でという事になりますが…………、どんなに強い魔力を持っていても魔族が侵入するのは不可能な筈。となると…………」
モルゲンシュテルン侯爵の深い蒼の瞳が、彼の愛娘を捉える。
「………実際に魔女と繋がっているのは男爵というよりも男爵令嬢で、彼女の指示に父である男爵が従っているという事も考えられるのではないでしょうか。………寧ろ娘に敵対心を抱いているのはあの小娘の方ですし、あの娘は闇魔法の適性が強かったかと…………」
「なるほど…………」
モルゲンシュテルン侯爵の見解を聞いて、ジークヴァルトは頷いき、アンネリーゼは俯いた。
フローラの天使のような、それでいてどこか人を貶めるような意地悪さを含んだ笑顔が頭に浮かび、アンネリーゼはふるふると首を振った。
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