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150.ジークヴァルトの優しさ
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「………思い出すな。………思い出さなくていいんだ、アンネリーゼ」
ふと耳元で、ジークヴァルトの声が響いた。
まるでアンネリーゼの心を優しく包み込むかのように、心地の良い声がじんわりと滲みてくるようだった。
「それはもう済んだ事だ。………これから先、あなたを傷つけようとする輩がいれば俺が守るが、過去に負った傷は癒やすことは出来ても消すことは出来ないんだ。…………あなたが望むなら、その記憶を消し去ってあなたの憂いを取り払いたいけれど………きっとあなたはそれを望まないだろう」
ジークヴァルトが丁寧に紡ぐ言葉一つ一つが思い遣りに満ちていて、アンネリーゼの目から零れ落ちる涙はより大きくなっていく。
辛い過去を背負っているという点に関しては、ジークヴァルトとて同じだ。………いや、アリッサという最愛の人を亡くし、その責任を負わされたたという点では、ジークヴァルトの方がずっと辛い思いをしてきただろうと思うと、胸が潰れそうだった。
アンネリーゼは頷くと、ぎゅっとジークヴァルトの纏う純白の騎士服の胸元を握りしめる。
ジークヴァルトの、言う通りだ。
苦しい思い出など捨ててしまえば楽になれるのに、捨てられない。
その苦しみも悲しみも、そして絶望も全てアンネリーゼを作り上げてきた一部だから、切り捨てるなんて出来ない。
一度失って、ようやく取り戻した記憶は全て、アンネリーゼにとってはかけがえのない大切なものだった。
「…………それでいい。それでこそ俺の愛するあなただよ、アンネリーゼ」
アンネリーゼはゆっくりと、ジークヴァルトに向かって微笑んだ。
何故かジークヴァルトかそれを望んでいるように思えて仕方なかったからだ。
すると、ジークヴァルトもそれに応えるかのように、目眩がする程に美しい顔にうっすらと笑みを湛えた。
一際大きな涙が流れ出た瞬間、ジークヴァルトはアンネリーゼの涙を、指の腹で優しく拭った。
「………あなたを未だに苦しめている罪は、その男爵令嬢とやらに償わせなければ、俺の気も済まないからな。己がどれだけの事をしたのか………これから何を企んでいるのかを探り、後悔させてやりたいんだ」
それは、ジークヴァルトの強い決意だった。
先程までジークヴァルトがフローラに会うことに対して強い不安を感じていた筈なのに、ジークヴァルトのその一言で、その感情が嘘のように消えていくのが分かった。
アンネリーゼがそっと涙を拭うと、躊躇いがちな咳払いが聞こえてきた。
「ゴホン…………。その、クラルヴァイン辺境伯殿?私がいることをお忘れではありませんかな?」
実に気まずそうに、ジークヴァルトに声を掛けるモルゲンシュテルン侯爵の端正な顔は、真っ赤に染まっていたのだった。
ふと耳元で、ジークヴァルトの声が響いた。
まるでアンネリーゼの心を優しく包み込むかのように、心地の良い声がじんわりと滲みてくるようだった。
「それはもう済んだ事だ。………これから先、あなたを傷つけようとする輩がいれば俺が守るが、過去に負った傷は癒やすことは出来ても消すことは出来ないんだ。…………あなたが望むなら、その記憶を消し去ってあなたの憂いを取り払いたいけれど………きっとあなたはそれを望まないだろう」
ジークヴァルトが丁寧に紡ぐ言葉一つ一つが思い遣りに満ちていて、アンネリーゼの目から零れ落ちる涙はより大きくなっていく。
辛い過去を背負っているという点に関しては、ジークヴァルトとて同じだ。………いや、アリッサという最愛の人を亡くし、その責任を負わされたたという点では、ジークヴァルトの方がずっと辛い思いをしてきただろうと思うと、胸が潰れそうだった。
アンネリーゼは頷くと、ぎゅっとジークヴァルトの纏う純白の騎士服の胸元を握りしめる。
ジークヴァルトの、言う通りだ。
苦しい思い出など捨ててしまえば楽になれるのに、捨てられない。
その苦しみも悲しみも、そして絶望も全てアンネリーゼを作り上げてきた一部だから、切り捨てるなんて出来ない。
一度失って、ようやく取り戻した記憶は全て、アンネリーゼにとってはかけがえのない大切なものだった。
「…………それでいい。それでこそ俺の愛するあなただよ、アンネリーゼ」
アンネリーゼはゆっくりと、ジークヴァルトに向かって微笑んだ。
何故かジークヴァルトかそれを望んでいるように思えて仕方なかったからだ。
すると、ジークヴァルトもそれに応えるかのように、目眩がする程に美しい顔にうっすらと笑みを湛えた。
一際大きな涙が流れ出た瞬間、ジークヴァルトはアンネリーゼの涙を、指の腹で優しく拭った。
「………あなたを未だに苦しめている罪は、その男爵令嬢とやらに償わせなければ、俺の気も済まないからな。己がどれだけの事をしたのか………これから何を企んでいるのかを探り、後悔させてやりたいんだ」
それは、ジークヴァルトの強い決意だった。
先程までジークヴァルトがフローラに会うことに対して強い不安を感じていた筈なのに、ジークヴァルトのその一言で、その感情が嘘のように消えていくのが分かった。
アンネリーゼがそっと涙を拭うと、躊躇いがちな咳払いが聞こえてきた。
「ゴホン…………。その、クラルヴァイン辺境伯殿?私がいることをお忘れではありませんかな?」
実に気まずそうに、ジークヴァルトに声を掛けるモルゲンシュテルン侯爵の端正な顔は、真っ赤に染まっていたのだった。
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