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217.呪いに打ち勝つ方法
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「………はい」
小さく呟いた声は、か弱く消え入りそうだった。
「アリッサ様は長い間ジーク様を見守って来たというのに………」
もし自分が逆の立場だったら、気が狂ってしまう程の感情に振り回されていたに違いない。
それなのにアリッサは、自分を助けてくれた。
「………アリッサが、あなたを責め立てたのですか?」
「え…………?」
女神の問に、アンネリーゼは勢いよく顔を上げた。
「アリッサが、あなたがジークヴァルトの心を奪い去ってしまった事を、詰ったのですか?」
「い、いえっ………!アリッサ様は決してそのような事をされる方ではありません!寧ろわたくしの事を助け、励まして下さいました………」
いっそ詰られて、責め立てられていたらどんなに良かっただろうとアンネリーゼは思った。
アリッサが完璧だからこそ、アンネリーゼは己の心の醜さを恥じ、迷い、悩み続けているのだ。
「………アリッサはそんなに完璧な人間ではありませんでしたよ」
またしても女神は、意外な言葉を投げかけてきた。
「アリッサだけでなく、他の巫女姫たちも………喜怒哀楽の感情をしっかりと持った普通の少女なのです。決して聖人などではありません。ただ他の人間よりも魔力が高く、全ての属性の魔力を持つ少女であることが巫女姫の条件なのだと、神官から教わったでしょう?」
アンネリーゼは無言のまま頷いた。
その話は確かに聞いたことがあった。
「アリッサもあなたと同じく、とても優しい子でしたが………時には己の身に巣食う病魔を口汚く罵ったり、己の気持ちが抑えられないときは慟哭したりしていたのですよ」
「アリッサ様が、ですか?」
信じられないような話に、アンネリーゼは思わず聞き返してしまった。
「そうですよ。信じられないでしょう?アリッサは、きちんと自分の感情を真っ直ぐに伝える娘でしたから。………だから、アリッサはあなたを憎んでなどいません。そして、ジークヴァルトが心から大切に思える存在であるあなたに出会えた事を、心から喜んでいるはずですよ」
ふふ、と女神は小さく笑った。
アンネリーゼは信じられないといったように、ふるふると首を横に振った。
「………アンネリーゼ。あなたのその優しさは美徳ではありますが、行き過ぎるとそれは害悪にもなりうるでしょう。………あなたがもっと己の心に素直になることこそが…………魔女の呪いに打ち勝つ方法なのかもしれません」
そこまで来ると、急に女神の声が遠くなってきた気がした。
同時にアリッサの姿を借りた女神が、濃い霧に包まれてしまったかのようにぼんやりと消えていくようだった。
「女神様っ…………」
アンネリーゼは慌てて叫び、女神の方へと手を伸ばしたのだった。
小さく呟いた声は、か弱く消え入りそうだった。
「アリッサ様は長い間ジーク様を見守って来たというのに………」
もし自分が逆の立場だったら、気が狂ってしまう程の感情に振り回されていたに違いない。
それなのにアリッサは、自分を助けてくれた。
「………アリッサが、あなたを責め立てたのですか?」
「え…………?」
女神の問に、アンネリーゼは勢いよく顔を上げた。
「アリッサが、あなたがジークヴァルトの心を奪い去ってしまった事を、詰ったのですか?」
「い、いえっ………!アリッサ様は決してそのような事をされる方ではありません!寧ろわたくしの事を助け、励まして下さいました………」
いっそ詰られて、責め立てられていたらどんなに良かっただろうとアンネリーゼは思った。
アリッサが完璧だからこそ、アンネリーゼは己の心の醜さを恥じ、迷い、悩み続けているのだ。
「………アリッサはそんなに完璧な人間ではありませんでしたよ」
またしても女神は、意外な言葉を投げかけてきた。
「アリッサだけでなく、他の巫女姫たちも………喜怒哀楽の感情をしっかりと持った普通の少女なのです。決して聖人などではありません。ただ他の人間よりも魔力が高く、全ての属性の魔力を持つ少女であることが巫女姫の条件なのだと、神官から教わったでしょう?」
アンネリーゼは無言のまま頷いた。
その話は確かに聞いたことがあった。
「アリッサもあなたと同じく、とても優しい子でしたが………時には己の身に巣食う病魔を口汚く罵ったり、己の気持ちが抑えられないときは慟哭したりしていたのですよ」
「アリッサ様が、ですか?」
信じられないような話に、アンネリーゼは思わず聞き返してしまった。
「そうですよ。信じられないでしょう?アリッサは、きちんと自分の感情を真っ直ぐに伝える娘でしたから。………だから、アリッサはあなたを憎んでなどいません。そして、ジークヴァルトが心から大切に思える存在であるあなたに出会えた事を、心から喜んでいるはずですよ」
ふふ、と女神は小さく笑った。
アンネリーゼは信じられないといったように、ふるふると首を横に振った。
「………アンネリーゼ。あなたのその優しさは美徳ではありますが、行き過ぎるとそれは害悪にもなりうるでしょう。………あなたがもっと己の心に素直になることこそが…………魔女の呪いに打ち勝つ方法なのかもしれません」
そこまで来ると、急に女神の声が遠くなってきた気がした。
同時にアリッサの姿を借りた女神が、濃い霧に包まれてしまったかのようにぼんやりと消えていくようだった。
「女神様っ…………」
アンネリーゼは慌てて叫び、女神の方へと手を伸ばしたのだった。
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