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223.願い
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ジークヴァルトがあれだけ苦しんできたというのに、こんなにもあっさりと呪いがなくなったことに、言い表しようのない感情が生まれる。
それは、無情感とも、憤りともつかない、胸が押しつぶされるようなものだった。
直接苦しんだわけではないアンネリーゼがこれほどまでの気持ちになるのだから、ジークヴァルトは一体どう思うのだろう。
アンネリーゼは一時的に意識を失って、自分の上に覆いかぶさっているジークヴァルトの気持ちを慮る。
そんなアンネリーゼの気持ちを汲み取ったかのように、魔女がまた意地悪く嗤った。
「このダメージを受けたままでは、もう間もなく息絶えるかしら?それともあなたの死の呪いがあなたの命を喰らい尽くすほうが先かしら?……ああでも、ジークヴァルトの意識が途絶えてしまったままでは全然面白くないわね?」
魔女は乱暴にジークヴァルトの頭をつかむと、無理やり意識を覚醒させた。
うっすらと光を取り戻した金色の瞳が、また苦痛に歪む。
「……俺に、触るな」
「ふふ、威勢だけはいいこと。どうかしら、今の気分は?」
「最悪だな」
息も絶え絶えの状態だが、ジークヴァルトは全く弱さを見せなかった。
おそらくまだ、ジークヴァルトは呪いが解けたことを知らない。アンネリーゼはぼろぼろになったジークヴァルトの上着をぎゅっと掴む。
「あら、それは残念だわ?せっかくあなたの希望通りに、あなたに掛けた呪いを解いてあげたというのに……」
途端にジークヴァルトは唇の両端を釣り上げた魔女の顔を凝視し、それから露になった自分の胸に視線を移す。
「………アンネリーゼの、呪いは?」
僅かな沈黙の後、ジークヴァルトはただそれだけを呟いた。
「死の呪い?それはそのままに決まっているじゃない。その小娘が、私を怒らせたのがいけないの。だから、お互いが死にゆく姿を、せいぜい楽しみなさいな?」
ふふっ、と小さく笑い声をあげると、魔女はジークヴァルトの傍らに落ちた剣を拾い上げ、彼の無防備な背中を切りつけた。
「………っ!」
更なる痛みに、ジークヴァルトは声を押し殺して、歯を食いしばる。
アンネリーゼの手にも、ジークヴァルトの生温かい血液が伝ってくるのが分かった。
彼を助けたいのに、だんだんと手足から力が抜けていくような、妙な浮遊感のようなものがアンネリーゼを襲う。
自分のほうも、いよいよ死の呪いが進んできたのだろうかと考え、アンネリーゼはほんの少し顔を上げ、ジークヴァルトの顔を見る。
ジークヴァルトは途方もないような長い時間、誰も理解しえないような苦しみを、たった一人で抱え続けてきた。
だからもう、これ以上彼に辛い思いをさせたくない。
これ以上、傷ついて欲しくない。苦しんでほしくない。
その苦しみも悲しみも、代わりに自分が受けても構わない。身代わりになるから彼を救いたいと、アンネリーゼは強く願い、自分に覆いかぶさるジークヴァルトの体を、強く、強く抱きしめた。
それは、無情感とも、憤りともつかない、胸が押しつぶされるようなものだった。
直接苦しんだわけではないアンネリーゼがこれほどまでの気持ちになるのだから、ジークヴァルトは一体どう思うのだろう。
アンネリーゼは一時的に意識を失って、自分の上に覆いかぶさっているジークヴァルトの気持ちを慮る。
そんなアンネリーゼの気持ちを汲み取ったかのように、魔女がまた意地悪く嗤った。
「このダメージを受けたままでは、もう間もなく息絶えるかしら?それともあなたの死の呪いがあなたの命を喰らい尽くすほうが先かしら?……ああでも、ジークヴァルトの意識が途絶えてしまったままでは全然面白くないわね?」
魔女は乱暴にジークヴァルトの頭をつかむと、無理やり意識を覚醒させた。
うっすらと光を取り戻した金色の瞳が、また苦痛に歪む。
「……俺に、触るな」
「ふふ、威勢だけはいいこと。どうかしら、今の気分は?」
「最悪だな」
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おそらくまだ、ジークヴァルトは呪いが解けたことを知らない。アンネリーゼはぼろぼろになったジークヴァルトの上着をぎゅっと掴む。
「あら、それは残念だわ?せっかくあなたの希望通りに、あなたに掛けた呪いを解いてあげたというのに……」
途端にジークヴァルトは唇の両端を釣り上げた魔女の顔を凝視し、それから露になった自分の胸に視線を移す。
「………アンネリーゼの、呪いは?」
僅かな沈黙の後、ジークヴァルトはただそれだけを呟いた。
「死の呪い?それはそのままに決まっているじゃない。その小娘が、私を怒らせたのがいけないの。だから、お互いが死にゆく姿を、せいぜい楽しみなさいな?」
ふふっ、と小さく笑い声をあげると、魔女はジークヴァルトの傍らに落ちた剣を拾い上げ、彼の無防備な背中を切りつけた。
「………っ!」
更なる痛みに、ジークヴァルトは声を押し殺して、歯を食いしばる。
アンネリーゼの手にも、ジークヴァルトの生温かい血液が伝ってくるのが分かった。
彼を助けたいのに、だんだんと手足から力が抜けていくような、妙な浮遊感のようなものがアンネリーゼを襲う。
自分のほうも、いよいよ死の呪いが進んできたのだろうかと考え、アンネリーゼはほんの少し顔を上げ、ジークヴァルトの顔を見る。
ジークヴァルトは途方もないような長い時間、誰も理解しえないような苦しみを、たった一人で抱え続けてきた。
だからもう、これ以上彼に辛い思いをさせたくない。
これ以上、傷ついて欲しくない。苦しんでほしくない。
その苦しみも悲しみも、代わりに自分が受けても構わない。身代わりになるから彼を救いたいと、アンネリーゼは強く願い、自分に覆いかぶさるジークヴァルトの体を、強く、強く抱きしめた。
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