上 下
70 / 102
本編

第七十ニ話

しおりを挟む
でも、テオ様はジェイド様に重傷を負わせた事に罪悪感を覚えて、こちらに顔を出したのよね。
テオ様って、何を考えてらっしゃるのか分からない、ミステリアスなところのある方だけど、決して悪い人ではありませんからね。
でも、私に謝罪するのは少し違うのではないでしょうか?確かに心配はしましたけど。

「う………」
「ジェイド様?!」

ジェイド様が、また呻き声をあげる。
同時にジェイド様の、きれいな琥珀色の瞳が長いまつげの間から僅かに覗いて、ゆっくりと開いていった。

「ジェイド様!私が分かりますか?」

私は、慌ててジェイド様の顔を覗き込む。

「エリーゼ………?」
「ジェイド様………良かった………意識が戻られたのですね」

私は、全身から一気に緊張が抜けていくのを感じた。

「私は………っつう………」
「ジェイド様!」

起き上がろうとしたジェイド様が、痛みに顔を歪める。

「殿下。お怪我をなさっているんですから、起き上がろうとしないでください」

お医者様が、慌てて止める。

「私は………そうだ、兄上と………」
「かなり傷口が深い部分もあります。なるべく安静にしてお過ごし下さい。今、鎮痛剤を調合して参ります」

そう言って、お医者様が部屋を出ていった。

「エリーゼが、なぜここに………?」

熱にうなされていたからか、ジェイド様の声がかすれている。それでも、間近でジェイド様の声が聞ける事に、こんなに安堵するなんて………。

「サイラス様が、キャメロット公爵邸まで知らせに来てくださったのです。うなされて、私を呼んでいると………。私、ジェイド様が心配で、お側にいたくて、こちらまでお連れいただきました」

そこまで言って、私ははっと気がついた。………それはあなたが好きですと言っているようなものではないの?何を口走ってしまっているのかしら。
私は急に恥ずかしくなり、俯く。私は顔が熱くなるのを感じた。今きっと真っ赤になっているわ。

「………ありがとう」
「え?」

驚いて顔をあげると、ジェイド様が穏やかな表情で私を見ていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:2,077

内気な私に悪役令嬢は務まりません!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,656pt お気に入り:500

【R18】体に100の性器を持つ女

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:2

とくいてん(特殊性癖系短編集)

BL / 連載中 24h.ポイント:418pt お気に入り:13

素直になれない令嬢は幼馴染の重すぎる愛から逃げられない?【R18】

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:1,615

あなたのために死ぬ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,762pt お気に入り:455

後悔だけでしたらどうぞご自由に

恋愛 / 完結 24h.ポイント:340pt お気に入り:4,121

処理中です...