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第二十九話 最強の騎士
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領主の部屋に群がっていた死霊を一蹴し、しらみ潰しに領主邸の中を調べているが、これといって何も見つからない。蹴散らしても蹴散らしても死霊は襲ってくるし、数も増えている気がする。
ミハイルさんの出血量が洒落にならなくなってきたので、一旦ゲストルームのような部屋に退避する。
「この領主邸全体に霊避けとかって掛けられないんですか?」
「範囲が広がればそれだけ効果が弱まる」
リエーフさんから預かった止血セットで手当てしながら、ダメ元で聞いてみる。まぁ、できるならとっくにやっているだろうとは思う。
「……今止血した所で意味ないだろう」
それも確かにそうなんだけど、見ていられない。でも、黙って止血を続けていても、それを振り払うことはしない。多分、それだけ衰弱しているんだろう。もう……これ以上は限界だ。
「気にするな。俺はまだ大丈夫だ」
何も言っていないのに。私を見つめて、ミハイルさんがそう呟く。
「失血は大したことない。傷の治りも普通の人間よりは早いし、複数切るのは治りやすさを考慮してのことだ」
「でも……、それでも痛むでしょう? それに、辛そうです」
ミハイルさんの言は、なるほどと思うことではあった。傷を増やしているのは、重傷を回避するためというわけか。確かにひとつひとつの傷はさほど大きくはないし、もう血が止まっている箇所もある。でも傷は傷だ。それに、呼吸は激しく乱れているし、言葉にもいつもの刺々しさがない。余裕が感じられなくて不安になる。
「傷より、捕らえている魂がきつい」
「領主に憑いていた……?」
「ああ。あれは囚えないと引き剥がせなかった。だが、長く囚えていられるものではない……」
「私に何かできませんか」
「…………」
てっきり「何もない」と突っぱねられると思っていたけど、思いの外彼は沈黙した。あるけど言うのを迷っている、という感じがする。
「あるなら言って下さい、お願いします」
「……お前が傍にいると、多少苦痛が和らぐ」
詰め寄る私から顔を背けて、彼が呟いたのは、そんなことだった。
「多分指輪の作用だと思うが……」
あぁ、そういえばさっき……体を支えたときに、多少呼吸が落ち着いていた。
なら、恥ずかしいとか言っている場合ではない。
思いきって距離を詰めて、体を寄せる。
その瞬間、壁から天井から一斉に死霊が沸きだした。
「……気が乱れた」
「えぇ!?」
咳払いしながら、ミハイルさんが私の手を引いて部屋を飛び出す。しかし、飛び出した先からも死霊の群れが現れる。多すぎる。
左手を引き寄せた瞬間に、ミハイルさんに抱き上げられる。彼はそのまま、真横の手すりを乗り越え、吹き抜けから一階まで飛び降りた。
死霊の唸り声に混じり、着地の音と、走りだすミハイルさんの靴音がやけにうるさく響き渡る。それが酷く脳を震わす。気になったのはその一瞬だけだったんだけど――もしかして。
「……ミハイルさん! この屋敷、地下があるんじゃないでしょうか!?」
「なんだと?」
「さっきと足音の響き方が違う気が。でもだいぶ調べましたが下への階段はなかったですよね?」
「隠し階段があるのかもしれないが……探している余裕はないな。試しに床をぶち抜いてみるか?」
「できるんですか?」
「できなくはないが……見ない方がいいぞ」
ナイフを頸動脈に当てたミハイルさんを見て、慌てて私はその腕に飛び付いた。
「ま、待って! それはやめましょう!」
「だがもう、あまり悠長にしている暇は」
ふと、ミハイルさんが途中で言葉を止める。それと、ニーナさんの鋭い声が響いたのは、ほぼ同時だった。
「ミハイル!!」
ミハイルさんが私を突き飛ばす。そのために、持っていたナイフを落とす。
壁で背中を打ってしまった。咳き込みながら顔を上げると、剣を構えたフェリニ領主の姿が目に飛び込んでくる。
「丸腰相手は騎士道精神に反するが、許せ!」
「……構わんぞ。剣なら持っている」
フェリニ領主が振り下ろした剣をかわして、ミハイルさんが不敵に笑う。
「来い、エドアルト!!」
右手の甲の呪印が光る。それと同時に彼と領主の間に赤い光が立ち上る。それが収まったときには、見覚えのある金髪碧眼の、軍服を纏った青年が現れていた。
――エドアルト。ミハイルさんの前に現れたエドアルトが、領主の剣を受けていた。現れたときには、剣を抜いていなかったはずなのに、いつの間に。
「馬鹿な……!私は帝国騎士団でも有数のエリート部隊にいたんだぞ!」
いつも通り、どこかぼうっとした表情のまま、瞬く間にエドアルトは領主を追い詰めていく。まるで、息をするように剣を振るう。あっという間に追い込まれて、領主の背が壁を打つ。すかさずエドアルトが剣を振り上げるが、辛うじて領主がそれを避ける。
「残念だったな。こちらは世界最強だ」
「……エドアルト……まさか、ロセリアのエドアルト・アドロフ……?! 馬鹿な!」
「本来、霊は現世のものに触れられないが。死者にその力を与える。これが本来の死霊使いの力だ」
床に転がった領主の顔の横にエドアルトが剣を突き立てる。乱れた彼の髪が、数本床に落ちる。
領主から闘志が消え、持っていた剣から手が離れる。それを蹴飛ばして、ミハイルさんもまた領主の横に膝をついた。
「そうまでして隠すということは、上官の命令か。……なら取引をしよう」
「取引……だと?」
領主がミハイルさんを見上げる。眉根を寄せる領主に、彼は淡々と言葉を吐く。
「俺の領地に干渉しない。フェリニ領民を不当に扱わない。この二つを約束してくれれば、俺は何を見てもロセリアにも帝国にも秘匿する」
「……そんな口約束を信じろと?」
「お前に拒否権などないぞ。放っておけばこの街は滅ぶし、なんなら今ここでお前を殺してもいい」
脇に落ちていたナイフを拾って、ミハイルさんがうそぶく。
「帝国に露見すればお前のその二つの要求が満たされなくなるぞ」
「それはそれで別に構わん。前者は面倒なだけで、後者は頼まれただけだ、俺の望みじゃない。俺が守りたいものは一つしかないし、それに他者の力など要らん」
「ぐっ……わかった」
喉元にナイフを突きつけられて、領主は観念したように目を閉じた。
「私の部屋の、執務机の下に地下への入り口がある……心当たりはそこだ。それしか言えん」
一瞬ミハイルさんは顔をしかめたが、ナイフを引くとエドアルトに声を掛けた。
「……戻れ、エドアルト。済まなかったな」
「いいよ。でも、ミオには花が枯れる前に帰ってきて欲しいな」
立ち上がり、エドアルトが私を振り返って、微笑む。今まで勇猛に剣を振るっていた面影はそこにはなく、だけど張り詰めていた気を溶かしてくれる優しい笑顔。それを残して、エドアルトの姿はふっと掻き消えた。
「ふん。俺は要らんと言われたぞ」
「そうは言っていませんよ。……行きましょう。そして早く終わらせて帰りましょう」
「ああ、そうだな……帰りたいと思ったのは初めてだ……」
疲れたように呟いて、ミハイルさんが立ち上がる。
「領主の部屋ってどっちでしたっけ」
「……こっちよ」
ミハイルさんの屋敷ほどではないにしろ、このフェリニ領主邸もなかなか広い。しかも死霊をやり過ごしながらだから記憶が定かでない。困っていると、ニーナさんが声を掛けてくれた。それで彼女がいたことを思い出す。すっかり忘れてしまっていた……。
彼女について領主の部屋まで戻り、執務机の下を調べる。
「ありました、階段!」
「ああ……今行く……」
「ミハイルさん!」
振り返ると、ミハイルさんは部屋の入り口付近で、膝も腕も地面につけてうずくまっていた。慌ててそこまで引き返す。
……どうしよう。地下に何があるかわからない。でも、もうこれ以上は無理だ。
「一度安全な所に戻って休みましょう」
「無駄だ……、ここまで騒がせたら、もうこの街に安全なところなどない」
「……ごめんなさい。私が我儘を言ったせいで」
もう傷つけたくなくて。それでここにいるはずなのに、結局傷つけてしまった。
私の顔を見て、ミハイルさんが手を伸ばし、髪に触れる。
「気にするなと言っただろう。お前が正論だと思ったから付き合っているだけだ。……まだ行ける」
「私の血、少しでも返せませんか?」
「ふっ……どうやってだ。俺は吸血鬼じゃないぞ」
こんな状況だというのに、ミハイルさんが冗談めかして笑う。
こっちは本気で、返せるものなら返したいのに。
「……あなた、よく平気ね」
ミハイルさんに肩を貸して立ち上がる。そんな私たちを見て、ニーナさんが蒼白な顔で呟いた。
平気なわけではない。自分でもどうしてここまでできるのか不思議なくらいだ。その理由はわからないままだけど。
「死霊使いの花嫁なので」
そうハッタリをかましておいた。
ミハイルさんの出血量が洒落にならなくなってきたので、一旦ゲストルームのような部屋に退避する。
「この領主邸全体に霊避けとかって掛けられないんですか?」
「範囲が広がればそれだけ効果が弱まる」
リエーフさんから預かった止血セットで手当てしながら、ダメ元で聞いてみる。まぁ、できるならとっくにやっているだろうとは思う。
「……今止血した所で意味ないだろう」
それも確かにそうなんだけど、見ていられない。でも、黙って止血を続けていても、それを振り払うことはしない。多分、それだけ衰弱しているんだろう。もう……これ以上は限界だ。
「気にするな。俺はまだ大丈夫だ」
何も言っていないのに。私を見つめて、ミハイルさんがそう呟く。
「失血は大したことない。傷の治りも普通の人間よりは早いし、複数切るのは治りやすさを考慮してのことだ」
「でも……、それでも痛むでしょう? それに、辛そうです」
ミハイルさんの言は、なるほどと思うことではあった。傷を増やしているのは、重傷を回避するためというわけか。確かにひとつひとつの傷はさほど大きくはないし、もう血が止まっている箇所もある。でも傷は傷だ。それに、呼吸は激しく乱れているし、言葉にもいつもの刺々しさがない。余裕が感じられなくて不安になる。
「傷より、捕らえている魂がきつい」
「領主に憑いていた……?」
「ああ。あれは囚えないと引き剥がせなかった。だが、長く囚えていられるものではない……」
「私に何かできませんか」
「…………」
てっきり「何もない」と突っぱねられると思っていたけど、思いの外彼は沈黙した。あるけど言うのを迷っている、という感じがする。
「あるなら言って下さい、お願いします」
「……お前が傍にいると、多少苦痛が和らぐ」
詰め寄る私から顔を背けて、彼が呟いたのは、そんなことだった。
「多分指輪の作用だと思うが……」
あぁ、そういえばさっき……体を支えたときに、多少呼吸が落ち着いていた。
なら、恥ずかしいとか言っている場合ではない。
思いきって距離を詰めて、体を寄せる。
その瞬間、壁から天井から一斉に死霊が沸きだした。
「……気が乱れた」
「えぇ!?」
咳払いしながら、ミハイルさんが私の手を引いて部屋を飛び出す。しかし、飛び出した先からも死霊の群れが現れる。多すぎる。
左手を引き寄せた瞬間に、ミハイルさんに抱き上げられる。彼はそのまま、真横の手すりを乗り越え、吹き抜けから一階まで飛び降りた。
死霊の唸り声に混じり、着地の音と、走りだすミハイルさんの靴音がやけにうるさく響き渡る。それが酷く脳を震わす。気になったのはその一瞬だけだったんだけど――もしかして。
「……ミハイルさん! この屋敷、地下があるんじゃないでしょうか!?」
「なんだと?」
「さっきと足音の響き方が違う気が。でもだいぶ調べましたが下への階段はなかったですよね?」
「隠し階段があるのかもしれないが……探している余裕はないな。試しに床をぶち抜いてみるか?」
「できるんですか?」
「できなくはないが……見ない方がいいぞ」
ナイフを頸動脈に当てたミハイルさんを見て、慌てて私はその腕に飛び付いた。
「ま、待って! それはやめましょう!」
「だがもう、あまり悠長にしている暇は」
ふと、ミハイルさんが途中で言葉を止める。それと、ニーナさんの鋭い声が響いたのは、ほぼ同時だった。
「ミハイル!!」
ミハイルさんが私を突き飛ばす。そのために、持っていたナイフを落とす。
壁で背中を打ってしまった。咳き込みながら顔を上げると、剣を構えたフェリニ領主の姿が目に飛び込んでくる。
「丸腰相手は騎士道精神に反するが、許せ!」
「……構わんぞ。剣なら持っている」
フェリニ領主が振り下ろした剣をかわして、ミハイルさんが不敵に笑う。
「来い、エドアルト!!」
右手の甲の呪印が光る。それと同時に彼と領主の間に赤い光が立ち上る。それが収まったときには、見覚えのある金髪碧眼の、軍服を纏った青年が現れていた。
――エドアルト。ミハイルさんの前に現れたエドアルトが、領主の剣を受けていた。現れたときには、剣を抜いていなかったはずなのに、いつの間に。
「馬鹿な……!私は帝国騎士団でも有数のエリート部隊にいたんだぞ!」
いつも通り、どこかぼうっとした表情のまま、瞬く間にエドアルトは領主を追い詰めていく。まるで、息をするように剣を振るう。あっという間に追い込まれて、領主の背が壁を打つ。すかさずエドアルトが剣を振り上げるが、辛うじて領主がそれを避ける。
「残念だったな。こちらは世界最強だ」
「……エドアルト……まさか、ロセリアのエドアルト・アドロフ……?! 馬鹿な!」
「本来、霊は現世のものに触れられないが。死者にその力を与える。これが本来の死霊使いの力だ」
床に転がった領主の顔の横にエドアルトが剣を突き立てる。乱れた彼の髪が、数本床に落ちる。
領主から闘志が消え、持っていた剣から手が離れる。それを蹴飛ばして、ミハイルさんもまた領主の横に膝をついた。
「そうまでして隠すということは、上官の命令か。……なら取引をしよう」
「取引……だと?」
領主がミハイルさんを見上げる。眉根を寄せる領主に、彼は淡々と言葉を吐く。
「俺の領地に干渉しない。フェリニ領民を不当に扱わない。この二つを約束してくれれば、俺は何を見てもロセリアにも帝国にも秘匿する」
「……そんな口約束を信じろと?」
「お前に拒否権などないぞ。放っておけばこの街は滅ぶし、なんなら今ここでお前を殺してもいい」
脇に落ちていたナイフを拾って、ミハイルさんがうそぶく。
「帝国に露見すればお前のその二つの要求が満たされなくなるぞ」
「それはそれで別に構わん。前者は面倒なだけで、後者は頼まれただけだ、俺の望みじゃない。俺が守りたいものは一つしかないし、それに他者の力など要らん」
「ぐっ……わかった」
喉元にナイフを突きつけられて、領主は観念したように目を閉じた。
「私の部屋の、執務机の下に地下への入り口がある……心当たりはそこだ。それしか言えん」
一瞬ミハイルさんは顔をしかめたが、ナイフを引くとエドアルトに声を掛けた。
「……戻れ、エドアルト。済まなかったな」
「いいよ。でも、ミオには花が枯れる前に帰ってきて欲しいな」
立ち上がり、エドアルトが私を振り返って、微笑む。今まで勇猛に剣を振るっていた面影はそこにはなく、だけど張り詰めていた気を溶かしてくれる優しい笑顔。それを残して、エドアルトの姿はふっと掻き消えた。
「ふん。俺は要らんと言われたぞ」
「そうは言っていませんよ。……行きましょう。そして早く終わらせて帰りましょう」
「ああ、そうだな……帰りたいと思ったのは初めてだ……」
疲れたように呟いて、ミハイルさんが立ち上がる。
「領主の部屋ってどっちでしたっけ」
「……こっちよ」
ミハイルさんの屋敷ほどではないにしろ、このフェリニ領主邸もなかなか広い。しかも死霊をやり過ごしながらだから記憶が定かでない。困っていると、ニーナさんが声を掛けてくれた。それで彼女がいたことを思い出す。すっかり忘れてしまっていた……。
彼女について領主の部屋まで戻り、執務机の下を調べる。
「ありました、階段!」
「ああ……今行く……」
「ミハイルさん!」
振り返ると、ミハイルさんは部屋の入り口付近で、膝も腕も地面につけてうずくまっていた。慌ててそこまで引き返す。
……どうしよう。地下に何があるかわからない。でも、もうこれ以上は無理だ。
「一度安全な所に戻って休みましょう」
「無駄だ……、ここまで騒がせたら、もうこの街に安全なところなどない」
「……ごめんなさい。私が我儘を言ったせいで」
もう傷つけたくなくて。それでここにいるはずなのに、結局傷つけてしまった。
私の顔を見て、ミハイルさんが手を伸ばし、髪に触れる。
「気にするなと言っただろう。お前が正論だと思ったから付き合っているだけだ。……まだ行ける」
「私の血、少しでも返せませんか?」
「ふっ……どうやってだ。俺は吸血鬼じゃないぞ」
こんな状況だというのに、ミハイルさんが冗談めかして笑う。
こっちは本気で、返せるものなら返したいのに。
「……あなた、よく平気ね」
ミハイルさんに肩を貸して立ち上がる。そんな私たちを見て、ニーナさんが蒼白な顔で呟いた。
平気なわけではない。自分でもどうしてここまでできるのか不思議なくらいだ。その理由はわからないままだけど。
「死霊使いの花嫁なので」
そうハッタリをかましておいた。
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