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第十話 仲直りのために・1
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「……まだやる気か?」
ミハイルさんが私を見て問いかける。私よりもずっと深い黒の瞳は、相変わらず何を考えているかわからない。
「もちろんです」
なんでもないように即答したのは半分以上強がりだけど、諦める気は毛頭ない。
「どうせまた荒らされるぞ」
「構いませんよ。好きなお掃除がずっとできるんですから、ありがたいくらいです」
「いつまでも強がって、心身を壊しても知らんぞ」
口調が冷たいから、小馬鹿にしているように聞こえてしまうけど……、その内容だけ考えてみたら、もしかして、ミハイルさんはそれを心配してくれているのだろうかとも思える。そう思ったら少しだけ胸の強張りが取れた気がした。
「ありがとうございます」
「何故礼を言う?」
「心配してくれているのかと」
「救いようのないほどめでたい頭だな」
「掃除のことしか考えられない頭ですので」
……おかしいな。お礼を言いたかっただけなのに、気が付いたら皮肉になっていた。
少し、ミハイルさんが苛立ったように眉間に皺を寄せる。
「お前は幽霊が怖くないのか?」
でもそれは、私の皮肉に怒ったわけではないようだった。今までの会話とはあまり関係のない、とてもシンプルな質問だった。
「怖くない……わけじゃないですけど、脅えて逃げ回るほどじゃないですね」
答えながら首を捻る。なんでかは自分でもよくわからない。ホラー映画とかは苦手だけど、ここの幽霊はそうグロテスクなわけでもないからかな。
「死人だぞ?」
「そうですが、あまりそういう感じがしなくて。話していても普通の人間と変わらないですし」
「それは……恐らくここに来たばかりだからだな。幼い時から全く姿が変わらない様を目の当たりにすれば、嫌でも奴らが普通の人間じゃないということがわかる」
普通じゃないくらいのことは、もうわかっているけど。
でも私からしてみれば、魔法を使えるという時点でこの世界の人みんな普通じゃないし。
「ミハイルさんは嫌いなんですか? ここの幽霊たちが」
「好きになる要素がどこにある?」
じろり、とミハイルさんが私を睨む。何かもう、それにも慣れてしまった。
ミハイルさんが幽霊嫌いということは、リエーフさんから聞いてるから知っている。ミハイルさん自身も、今間接的に嫌いだと言った。
だけど私には、あまりそうは思えない。
「私、昨夜、ここの幽霊たちのことをまとめていて、それで気付いたんですけど。ミハイルさん、屋敷の幽霊たちについてすごく詳しいですよね。顔も名前も性格もすぐわかるじゃないですか」
庭に近づくなと言ったのも、すぐにエドアルトさんのことを考えたからだろう。それに、私に謝罪を要求したときの話の持って行き方も、彼の性格をよくよく把握していないとできないものだったと思う。
「薬品に詳しいひとがいないかって私とリエーフさんが話してたときも、すぐ名前を出していました。嫌いなものについて、そんなに詳しくなれるでしょうか?」
少し喋りすぎただろうか。言葉を切ってもなかなかミハイルさんが答えてくれず、少し不安になる。謝ろうかと唇を湿らせた頃、ようやく彼は口を開いた。
「それは、生まれた時からずっとこの屋敷にいるんだから当然だ」
「そうでしょうか? 顔と名前だけならそうかもしれませんけど……」
「言っただろう。俺はこんな幽霊屋敷、一刻も早く出て行きたいと」
「でも、出て行っていませんよね」
幽霊たちが外に出られないのなら、出ていくのは簡単に思えるのだけど。
喋りすぎたと思ったばかりでついつい気になったことを口にしてしまう。
でも、ミハイルさんは友好的ではないにせよ、自分の感情で「出て行け」というタイプではない気がした。そう考えた通り、声を荒げたり、怒鳴ったりすることはなかったけれど。馬鹿にしたような目をして一言答える。
「そんな呪い殺されそうなことするか」
確かに。けれど、幽霊たちにそんな力があるのかな?
あったとして、ほんとに彼らがミハイルさんを嫌いだったら、とっくにやっていそうなものだけど。
「それにリエーフに連れ戻されるが落ちだ。あいつは外に出られるしな。ウソ泣きしながら説教するに決まってる」
それはなんだか、目に浮かぶ。と和みかけて、ふと私はかねてからの疑問を思い出した。
「そういえば、どうしてリエーフさんだけが特別なんですか?」
「それは俺も知らん。いつからこの屋敷に幽霊が住むようになったのか、どうしてこの屋敷では魔法を使えないのかもな。幼い頃先代当主である父に尋ねたが、教えてくれなかった。父も知らなかったのか、幼すぎて理解できんと言わなかったのか、それは今となってはわからんが」
あまり答えは期待していなかったが、意外にもミハイルさんはちゃんと答えてくれた。
結局、幽霊や屋敷の謎は全然わからないままだけど、ミハイルさんすらそれを知らないということはわかった。
結局掃除を円滑にするには、幽霊たちと友好的な関係を築くのが一番早いということか。
「……忠告したはずだが」
考え込む私に、ミハイルさんの声が降りかかる。
「興味本位であまり首を突っ込まない方がいいと思うぞ」
「興味本位ではありません。掃除を円滑に進めるための一環です」
「呆れる」
一言で切って捨て、ミハイルさんは肩を竦めてから言葉を継いだ。
「掃除をするために幽霊たちとコミュニケーションを取ろうという腹か? 俺は勧めんがな。……アラムもお前に興味を示してはいたが」
「アラム?」
聞き置覚えがあるような名前だが、咄嗟につながらず、その名を拾って復唱する。
「お前も会いたがっていただろう。薬品に詳しい幽霊だ」
その説明に、私は「ああ」と声を返した。
そうだ、私が薬品に詳しい人を探していたとき、ミハイルさんが口にしていた名前だ。
「会えるんですか?」
「会うと言っていたが、その後は姿を見せずじまいだ。俺も奴は何を考えているかわからん」
「構いません。私は薬品で洗剤……、掃除に必要なものが作れないかと、それが知りたいだけですから」
「……忠告はしたぞ」
ミハイルさんの目が、呆れより憐み寄りになった気がする。
どうしようもない掃除女だと思っているんだろうな。実際そうだからいいけど。
私も危機感が足りないのかもしれないけど。
でも中庭で頬を切ってしまったとき、たかが軽い切り傷ごときで、リエーフさんもエドアルトさんも、ミハイルさんでさえもあんなに気にしてくれたくらいだ。
酷いことにはならない気がする……というのはあまりに楽観的すぎるだろうか。
「忠告はありがたく頂きます」
答えると、ミハイルさんはフン、と鼻を鳴らして踵を返した。その靴が小枝を踏んで、パキ、と小さな音を立てる。それを見下ろしてミハイルさんは顔をしかめた。
「ライサめ。少しきつく言うか……」
おそらく独り言だったそれを聞きとがめて、私は咄嗟に歩き去ろうとする彼の腕を掴んで止めていた。
「待って下さい!」
驚いたような顔をして、ミハイルさんが私を振り返る。
「あの、すみません。ライサを叱らないでくれませんか?」
そう言うと、彼は不可解な顔をした。
「……解せんな。あいつにはお前も迷惑しているんじゃないのか?」
「でも、まだ子どもですし」
「見た目はそうだが、あいつは俺やお前よりずっと永く……」
「永く『生きている』わけじゃない、ですよね? だったら子どものままではないですか?」
私は幽霊について何も知らない。
でも生きていれば、色んな経験をして、学習をして、それで大人になっていくけど、体を失った幽霊じゃそういうわけにはいかないだろう。まして、この屋敷から外に出られもしないのに。
そう考えてみて、幽霊たちが外の人間を嫌いなのも納得が行くような気がした。
「同情か?」
ミハイルさんの顔に、少し嘲りが見える。
偽善者だとでも思われたのだろうか。だとしたらそれは見当はずれだ。
かといって、別に優しさでもないのだ。
「そうではありません。もしミハイルさんが当主としてライサを注意すれば、ライサは私が唆したのだと思うはずです。そうすれば妨害はさらに酷くなりかねませんし、私に対する印象も悪化すると思うんです」
ミハイルさんは肯定しなかったが、否定もしなかった。私の手を振り払ってため息をつく。
「後で泣きついても知らんぞ」
「そんなこと、しません」
「だろうな」
それは、少し予想外な返事だった。少し、私のことをわかってくれたのだろうか。
「相当めでたい頭をしているようだからな」
……毒吐きたいだけか。いいけど。
確かに楽観的なところはあると思う、自分でも。
でも悲観的なことを考えたらやっていられないところはある。
掃除がうまくいかないことも、この世界でこれからどうなるかとかも、そもそも元の世界に帰れるのか……ということも。私には不安要素しかない。
何かしていないと、何か考えていないと。それが掃除のことであるのは不幸中の幸いだ。
なんていう思考回路が、もしかしたらめでたいと謂われる所以かもしれないけれど。そこは現実的だと言って欲しいところではある。
今度こそミハイルさんを見送って、私はその足先をリエーフさんの部屋に向けた。とにかく、ライサとこのままの関係なのはまずいと思う。
今姿を消したからといってこれ幸いと掃除したところで、多分そんなの続かない。
今はまだ、ライサの私に向けられる感情は嫌悪くらいで済んでいる。けれどこれがハッキリと憎悪に代わってしまったら、和解するのは無理だ。
といって、リエーフさんの部屋に向かったのは、彼にとりなしてもらおうというわけではない。私自身でなんとかしないと、ライサはきっと私を許さないと思う。
リエーフさんの部屋の扉をノックすると、幸いすぐに返事があった。
ミハイルさんが私を見て問いかける。私よりもずっと深い黒の瞳は、相変わらず何を考えているかわからない。
「もちろんです」
なんでもないように即答したのは半分以上強がりだけど、諦める気は毛頭ない。
「どうせまた荒らされるぞ」
「構いませんよ。好きなお掃除がずっとできるんですから、ありがたいくらいです」
「いつまでも強がって、心身を壊しても知らんぞ」
口調が冷たいから、小馬鹿にしているように聞こえてしまうけど……、その内容だけ考えてみたら、もしかして、ミハイルさんはそれを心配してくれているのだろうかとも思える。そう思ったら少しだけ胸の強張りが取れた気がした。
「ありがとうございます」
「何故礼を言う?」
「心配してくれているのかと」
「救いようのないほどめでたい頭だな」
「掃除のことしか考えられない頭ですので」
……おかしいな。お礼を言いたかっただけなのに、気が付いたら皮肉になっていた。
少し、ミハイルさんが苛立ったように眉間に皺を寄せる。
「お前は幽霊が怖くないのか?」
でもそれは、私の皮肉に怒ったわけではないようだった。今までの会話とはあまり関係のない、とてもシンプルな質問だった。
「怖くない……わけじゃないですけど、脅えて逃げ回るほどじゃないですね」
答えながら首を捻る。なんでかは自分でもよくわからない。ホラー映画とかは苦手だけど、ここの幽霊はそうグロテスクなわけでもないからかな。
「死人だぞ?」
「そうですが、あまりそういう感じがしなくて。話していても普通の人間と変わらないですし」
「それは……恐らくここに来たばかりだからだな。幼い時から全く姿が変わらない様を目の当たりにすれば、嫌でも奴らが普通の人間じゃないということがわかる」
普通じゃないくらいのことは、もうわかっているけど。
でも私からしてみれば、魔法を使えるという時点でこの世界の人みんな普通じゃないし。
「ミハイルさんは嫌いなんですか? ここの幽霊たちが」
「好きになる要素がどこにある?」
じろり、とミハイルさんが私を睨む。何かもう、それにも慣れてしまった。
ミハイルさんが幽霊嫌いということは、リエーフさんから聞いてるから知っている。ミハイルさん自身も、今間接的に嫌いだと言った。
だけど私には、あまりそうは思えない。
「私、昨夜、ここの幽霊たちのことをまとめていて、それで気付いたんですけど。ミハイルさん、屋敷の幽霊たちについてすごく詳しいですよね。顔も名前も性格もすぐわかるじゃないですか」
庭に近づくなと言ったのも、すぐにエドアルトさんのことを考えたからだろう。それに、私に謝罪を要求したときの話の持って行き方も、彼の性格をよくよく把握していないとできないものだったと思う。
「薬品に詳しいひとがいないかって私とリエーフさんが話してたときも、すぐ名前を出していました。嫌いなものについて、そんなに詳しくなれるでしょうか?」
少し喋りすぎただろうか。言葉を切ってもなかなかミハイルさんが答えてくれず、少し不安になる。謝ろうかと唇を湿らせた頃、ようやく彼は口を開いた。
「それは、生まれた時からずっとこの屋敷にいるんだから当然だ」
「そうでしょうか? 顔と名前だけならそうかもしれませんけど……」
「言っただろう。俺はこんな幽霊屋敷、一刻も早く出て行きたいと」
「でも、出て行っていませんよね」
幽霊たちが外に出られないのなら、出ていくのは簡単に思えるのだけど。
喋りすぎたと思ったばかりでついつい気になったことを口にしてしまう。
でも、ミハイルさんは友好的ではないにせよ、自分の感情で「出て行け」というタイプではない気がした。そう考えた通り、声を荒げたり、怒鳴ったりすることはなかったけれど。馬鹿にしたような目をして一言答える。
「そんな呪い殺されそうなことするか」
確かに。けれど、幽霊たちにそんな力があるのかな?
あったとして、ほんとに彼らがミハイルさんを嫌いだったら、とっくにやっていそうなものだけど。
「それにリエーフに連れ戻されるが落ちだ。あいつは外に出られるしな。ウソ泣きしながら説教するに決まってる」
それはなんだか、目に浮かぶ。と和みかけて、ふと私はかねてからの疑問を思い出した。
「そういえば、どうしてリエーフさんだけが特別なんですか?」
「それは俺も知らん。いつからこの屋敷に幽霊が住むようになったのか、どうしてこの屋敷では魔法を使えないのかもな。幼い頃先代当主である父に尋ねたが、教えてくれなかった。父も知らなかったのか、幼すぎて理解できんと言わなかったのか、それは今となってはわからんが」
あまり答えは期待していなかったが、意外にもミハイルさんはちゃんと答えてくれた。
結局、幽霊や屋敷の謎は全然わからないままだけど、ミハイルさんすらそれを知らないということはわかった。
結局掃除を円滑にするには、幽霊たちと友好的な関係を築くのが一番早いということか。
「……忠告したはずだが」
考え込む私に、ミハイルさんの声が降りかかる。
「興味本位であまり首を突っ込まない方がいいと思うぞ」
「興味本位ではありません。掃除を円滑に進めるための一環です」
「呆れる」
一言で切って捨て、ミハイルさんは肩を竦めてから言葉を継いだ。
「掃除をするために幽霊たちとコミュニケーションを取ろうという腹か? 俺は勧めんがな。……アラムもお前に興味を示してはいたが」
「アラム?」
聞き置覚えがあるような名前だが、咄嗟につながらず、その名を拾って復唱する。
「お前も会いたがっていただろう。薬品に詳しい幽霊だ」
その説明に、私は「ああ」と声を返した。
そうだ、私が薬品に詳しい人を探していたとき、ミハイルさんが口にしていた名前だ。
「会えるんですか?」
「会うと言っていたが、その後は姿を見せずじまいだ。俺も奴は何を考えているかわからん」
「構いません。私は薬品で洗剤……、掃除に必要なものが作れないかと、それが知りたいだけですから」
「……忠告はしたぞ」
ミハイルさんの目が、呆れより憐み寄りになった気がする。
どうしようもない掃除女だと思っているんだろうな。実際そうだからいいけど。
私も危機感が足りないのかもしれないけど。
でも中庭で頬を切ってしまったとき、たかが軽い切り傷ごときで、リエーフさんもエドアルトさんも、ミハイルさんでさえもあんなに気にしてくれたくらいだ。
酷いことにはならない気がする……というのはあまりに楽観的すぎるだろうか。
「忠告はありがたく頂きます」
答えると、ミハイルさんはフン、と鼻を鳴らして踵を返した。その靴が小枝を踏んで、パキ、と小さな音を立てる。それを見下ろしてミハイルさんは顔をしかめた。
「ライサめ。少しきつく言うか……」
おそらく独り言だったそれを聞きとがめて、私は咄嗟に歩き去ろうとする彼の腕を掴んで止めていた。
「待って下さい!」
驚いたような顔をして、ミハイルさんが私を振り返る。
「あの、すみません。ライサを叱らないでくれませんか?」
そう言うと、彼は不可解な顔をした。
「……解せんな。あいつにはお前も迷惑しているんじゃないのか?」
「でも、まだ子どもですし」
「見た目はそうだが、あいつは俺やお前よりずっと永く……」
「永く『生きている』わけじゃない、ですよね? だったら子どものままではないですか?」
私は幽霊について何も知らない。
でも生きていれば、色んな経験をして、学習をして、それで大人になっていくけど、体を失った幽霊じゃそういうわけにはいかないだろう。まして、この屋敷から外に出られもしないのに。
そう考えてみて、幽霊たちが外の人間を嫌いなのも納得が行くような気がした。
「同情か?」
ミハイルさんの顔に、少し嘲りが見える。
偽善者だとでも思われたのだろうか。だとしたらそれは見当はずれだ。
かといって、別に優しさでもないのだ。
「そうではありません。もしミハイルさんが当主としてライサを注意すれば、ライサは私が唆したのだと思うはずです。そうすれば妨害はさらに酷くなりかねませんし、私に対する印象も悪化すると思うんです」
ミハイルさんは肯定しなかったが、否定もしなかった。私の手を振り払ってため息をつく。
「後で泣きついても知らんぞ」
「そんなこと、しません」
「だろうな」
それは、少し予想外な返事だった。少し、私のことをわかってくれたのだろうか。
「相当めでたい頭をしているようだからな」
……毒吐きたいだけか。いいけど。
確かに楽観的なところはあると思う、自分でも。
でも悲観的なことを考えたらやっていられないところはある。
掃除がうまくいかないことも、この世界でこれからどうなるかとかも、そもそも元の世界に帰れるのか……ということも。私には不安要素しかない。
何かしていないと、何か考えていないと。それが掃除のことであるのは不幸中の幸いだ。
なんていう思考回路が、もしかしたらめでたいと謂われる所以かもしれないけれど。そこは現実的だと言って欲しいところではある。
今度こそミハイルさんを見送って、私はその足先をリエーフさんの部屋に向けた。とにかく、ライサとこのままの関係なのはまずいと思う。
今姿を消したからといってこれ幸いと掃除したところで、多分そんなの続かない。
今はまだ、ライサの私に向けられる感情は嫌悪くらいで済んでいる。けれどこれがハッキリと憎悪に代わってしまったら、和解するのは無理だ。
といって、リエーフさんの部屋に向かったのは、彼にとりなしてもらおうというわけではない。私自身でなんとかしないと、ライサはきっと私を許さないと思う。
リエーフさんの部屋の扉をノックすると、幸いすぐに返事があった。
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