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つまり、課金

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スペンサー公爵邸へ是非遊びに来て欲しいと招待されてのだが…また既視感のある状況になっていた。

ガイアの部屋で、一人用ソファーで、横抱きにされながら彼のお膝に乗せられていた。
片手は常に優しく握られていて、たまに感触を楽しむようににぎにぎ揉まれている。

「ビーチェ…可愛い…」

「ひゃっ……え、と…」

「小さくて、柔らかくて、いい匂い…」

あ、あれ…いい匂い…?

香水は付けていないし、女神に授けてもらった能力は使ってないはずだけど…。
エリザベス王女にも良く言われるが、彼女たちの方が私よりめちゃくちゃいい匂いだと思う。

ガイアは、幸せそうに私を甘やかしてくれている。

エリザベス王女同様、彼からも熱烈な好意を向けられている事はさすがにわかった。
理由は良くわからないのだが…黒い薔薇と情熱的なラブレターを送られた事で確信した。

うっとりとした表情と甘く蕩けた声で、首元の匂いをすんすんと嗅がれ、たまにガイアの唇が首筋に触れるものだからドキドキしてしまう。
ぴりぴりと弱い電気みたいなものがゆるく駆け抜け…体の力が抜けちゃう…なのに、首元からじんわり広がる熱が心地良い。

エリザベス王女以外の推しを作る事を浮気と躊躇っていたけど…あの衝撃、あの尊さの前では仕方ない。
尊さの極みが二人いるなんて…ああ、何て幸せな事か。

「ガ、ガイアさま…この間は、き、綺麗な、黒い薔薇をありがとうございますっ」

推しに思考が蕩けそうになりつつ、どもりながら黒い薔薇のお礼を言う。
あの日、すぐにお礼の手紙を送ったりしたが、やはりお礼は直接言うべきだろう。

「いいえ…ん」

ひ、ひえぇえ…。
ガイアは静かに優しく囁くと、私の目元に軽くキスをしたのだ。おかげで、私の脳内はお祭り騒ぎになった。

「っ…とっても嬉しかったです…また、ビーチェの宝物が増えました」

「…宝物に、してくれたんですか…?嬉しい…」

「っ!?…あ、あの…え、えっと…」

ひゃあああっ。

蕩けるような絶世の美少年スマイルに、キョドってまともな返事が出来なくなる。
キラキラと輝くエフェクトの幻覚が見えるし、この十歳とは思えない怪しい色気は何だろう…魅力的過ぎる!

しゅき…だいしゅき…だめ、もう、溶けちゃう…尊い…。
私は、推しにデレデレメロメロだった。
目がハート状態だ。

貢ぎたい貢ぎたい貢ぎたいっ…!!
何でもガイアの好きにさせて、何でも言う事聞いてあげたい。
私に出来る事なら何でもしてあげたい。 

ーーーこれが、課金のタイミングだ。

「どうしたんですか?そんな可愛いらしい表情をして」

「ガイアさま…ビーチェ、お礼したいの…!」

ギュッと、空いている方の手でガイアの服を掴み、ふわふわした思考の中で彼を見上げた。

「っ…お礼ですか?」

気のせいだろうか…?
彼が息を飲んだような…。

「…僕にとっては、ビーチェがそばにいてくれる事が一番のお礼ですよ」

え…私がガイアのそばにいるとお礼になるって…どういう事だろう…?

「…?ビーチェがそばにいる事がお礼なの…?」

「はい」

ーーーはっ…!

ガイアは『物より行動で示して欲しい派』なのかもしれない…!
それもそうだ…私から送られなくても大抵の物は手に入るし、そもそも彼は物欲が薄そうだ。

それに…もしかしたら、私の体に興味があるのかもしれない。
えっちな事に興味を持ち出してもおかしくない年頃だもの…。
私は八歳だけど女性だし…。
私を抱っこして、手をにぎにぎ握ったり、匂いを嗅いでいた事を考えると…あながち間違いではないだろう。

そっか、そっかぁ…わ、私の体に、きょ、興味があるのかぁ…♡
は、恥ずかしいけど…ガイアが好きなところに好きなだけ触っていいし、見ていいんだよ…♡

「っ!!じゃあ、ビーチェの事、ガイア様の好きにして!なんでもゆーことききましゅ!」

……ききましゅ…ききま“しゅ”って…。
推しに尽くせると思ったら、興奮して語尾を噛んでしまった。狙ってるみたいで恥ずかしい…!

だ、だけど、私の、この溢れんばかりの気持ちをガイアに伝えなくては…。
私は誤魔化すように言葉を続けた。

「あ、あの…!ガイア様がしたいなら、お風呂に入ったり、おねんねしたり、何でもずっと一緒です!」

「え…………は…………………………っ!!」

「あ、後…今はぺったんこだけど、早くおっぱいが大きくなるようにいっぱい栄養とりますね!牛乳も毎日飲みます…!」

「っ…ビーチェ…?そういう、意味ではっ…」

「ガイア様、大好きっ!ちゅっ」

「っ!」

ガイアの反応を見る余裕がないくらい必死だった。
緊張で早口になりながら、一気に伝えたい事を言い切り、勢いよくガイアの口にキスをした。

「…っ!!ビ、ビーチェ…」

「ガイア様…?」

え、ええ…?
ガイアが上を向き、顔を片手で隠してしまった…どうしたのだろうか…?
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