ざまぁされたはずの悪役令嬢が戻ってきた!?  しかも、今度は復讐のため、溺愛ルートを目指すようです。 ~えっ、ちょ

夢追子(@電子コミック配信中)

文字の大きさ
49 / 79

47 高橋由里,29

しおりを挟む
      四十七

「あっ、うん。」
 リリィの声で物思いに沈みそうだった由里の意識がそがれる。軽く息を吐き、心を切り替えて、由里は次のページをめくった。
「えっと……。サプライズは日常のスパイス。平穏な日常にちょっとしたサプライズを用意しましょう。マンネリは浮気の元になってしまいます。いつでも相手に新鮮な気持ちを持ってもらうことを心がけましょう。」
《サプライズ?》
 由里の音読に、質問を返し本の内容に食いつきを見せるリリィ。
 由里はこの世界に来てから初めて和やかにリリィと会話が弾んでいるような気がしていた。
「えっとね、サプライズっていうのは、相手をびっくりさせたりすることかな…?」
《あら?でしたら、私は得意ですよ、サプライズ。》
「そうなの?」
《ええ、皆を驚かせるのがリリィ・マクラクランというものです。》
 自信満々なリリィの宣言に、由里は半信半疑だった。
(……きっと、リリィのやることって、皆にとって呆気にとられるっていうか、絶句とか度肝を抜かれるっていう感じのことじゃないかな……。)
 少なくとも喜びを伴うサプライズではないだろう。
 由里は自分の知るリリィという悪役令嬢の人となりからそう結論付けた。
《何だか面白そうな本ですわね。》
 リリィが本の内容を気に入ったようで、弾んだ声を上げる。
 ただ由里は読めば読むほど本の内容は由里にとっては実践が難しいと感じざるを得ないので、リリィの意見には同意できなかった。
「そうなの?」
《ええ、他にも聞かせていただけるかしら?》
「分かった。」
 それから、由里はリリィに本の読み聞かせを続けた。
 適当にページをめくって、リリィに説明できそうな内容なら読み上げる。
 就寝時間まではまだ余裕がある。
 リリィに読み聞かせと説明を続けながら、由里は頭の片隅で考えていた。
 この世界に少しでも味方が欲しいと。
 先日、猫の一件の後、着替えて戻った由里に、メイド長が温かい飲み物を差し出してくれた。
 それを飲みながら、由里は身体だけでなく心も暖かくなるのを感じていた。
 お礼を言って頭を下げる由里にメイド長は、ミハイル団長からの指示だと教えてくれた。
 あの団長さんは本当に面倒見がよく、気が利く人だ。
 由里の中で団長さんの株はうなぎ上りだった。
 愛され女子は無理でも、せめてあの律儀で真面目で誠実で公平な団長さんに何とか味方になってもらうことはできないものか……。
 そのために何か有益な情報はないのかと、由里はリリィに読み聞かせる傍らでもう一度本の内容を復習していた。一度は読んで内容に挫折した本だが、何か見落としがある可能性もある。
(……でも、リリィだと難しいかな……?)
 皆が一様にリリィを見つめる険しい視線を思い出し、由里の心に弱気が広がっていく。
 だが、嘆いてばかりもいられない。何せ、リリィだけでなく、由里自身の未来もかかっていることなのだ。例え、リリィ・マクラクランの外見をしていたとしても、出来ればあの団長さんだけには敵に回って欲しくない。
(……味方とまでは行かなくても、せめてこれ以上嫌われない方法とか……。少しでも、印象が良くなる方法とか?)
 リリィというアドバンテージマイナスの要素を鑑みて、由里の希望のハードルはどんどん下がっていく。しかし、行きついた先がほんの些細な願いになったとしても、由里は投げ出すわけにはいかなかった。なので、由里は諦めずに本をめくり続けた。
 この本で身に着けた知識が、いつか少しでも自分の未来の役に立つと信じて。


 奇しくも、リリィ・マクラクランの中に高橋由里が入ったことでリリィが大人しくしていることが、既にとんでもないサプライズになって周囲を疑心暗鬼に陥らせているのだが、本人たちはもちろん気づいていない。話し相手もお互い以外にいない今の状況では、気づくことすら無理であろう。
 身体は一つ、魂は二つのリリィ・マクラクラン=高橋由里は、ピンクの本の内容をあれこれ話題にしながら、宛がわれた自室でしばし平穏な時を過ごしたのであった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね

星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』 悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。 地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……? * この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。 * 2025年12月06日、番外編の投稿開始しました。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

契約破棄された聖女は帰りますけど

基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」 「…かしこまりました」 王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。 では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。 「…何故理由を聞かない」 ※短編(勢い)

お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました

夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。 全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。 持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……? これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。

【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。 しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。 契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。 亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。 たとえ問題が起きても解決します! だって私、四大精霊を従える大聖女なので! 気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。 そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

処理中です...