ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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レドネ渓谷

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 でもまあ、とにかく用意も終えられて、私達はいよいよ遊撃部隊として出撃することになった。
 念話による応援要請は次々届いてるということだった。私達はそれに応えなきゃいけない。応援要請を王都の方で検討して優先度の高いところに向かうことになる。
 そして私達がまず向かう先は、レドネ渓谷の前線だった。
「ここは切り立った渓谷に挟まれた場所で、天然の要害だった。しかし魔王軍は数にモノを言わせて圧し切ろうとしているようだ。奴らは味方の犠牲とかまるで考えないからな。我らはそんな魔王軍に目にモノを見せてやらねばならない。各人奮闘を期待する!」
 簡単なレクチャーを受け、整列し、リデムが転移魔法の為の詠唱を始める。私の手はじっとりと湿って胸が苦しいくらいに緊張してるのが自分でも分かる。それはみんなもそうだった。
 やがてまばゆい光に包まれ、それが消えた時、私達の目の前には雲を衝くような急峻なそそり立つ崖が立ちはだかっていた。
『これが、レドネ渓谷……』
「ライアーネ様! 魔王軍です!」
 誰かが叫んだ。その声に導かれるように視線を向けると、そこには狭い谷を埋め尽くすような魔物の群れが蠢いていた。それはもう<軍隊>というよりもただの大発生した昆虫の群れのようにさえ見えた。生理的嫌悪感を感じずにはいられない。
 それにしても、王国軍は…?
 どこにも王国軍の姿は見えなかった。それというのも、抗しきれなくなったとして渓谷の外まで後退してしまってたからだった。そして私達は、悠々と渓谷を進んでくる魔王軍の真ん前に現れたということだ。
 いきなりこれとか、覚悟はしてたつもりだけど、これって完全に孤軍奮闘しろってことだよね…?
 でもそんなことを考えてる暇もない。突然現れた私達に、魔王軍がいきり立つ気配が伝わってきた。ものすごい殺意だ。
 なのにドゥケが言う。
「俺が突っ込んで奴らの勢いを削ぐ! 後は各個撃破してくれ!」
 まるで草原目掛けて走り出すかのようにドゥケが魔王軍目掛けて馬を走らせた。普通に考えたら完全に頭おかしい行動だ。でもあいつはいつもそうだった。単騎で突っ込んで敵を混乱させ、指揮官を倒して私達が残った魔物を掃討する。それが普通だった。
 そして今回も、剣の一振りで魔王軍の先陣を薙ぎ払う。だけど今回の魔王軍は、私達がこれまで相手してたのとは少し違ってた。巨大な蜂のような、空を飛ぶ魔物が控えてたんだ。しかも数も多い。
 ドゥケはそれらさえ薙ぎ払うけど、さすがにこれまでとは勝手が違うらしくてかなりの数を討ち漏らしてたのだった。

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