ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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アッバ湖北端

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「ドゥケ様…ドゥケ様ぁ……」
 ドゥケのテントに慰めにもらいに行って帰ってきたアリエータが、目に涙をいっぱい溜めてそう呟いてた。それは悲しくて泣いてるって感じじゃなくて、逆に、嬉しくて胸がいっぱいって感じの涙だった。
 何を言われたのか知らないけど、アリエータは、
「ドゥケ様がいてくれて本当に良かった……」
 とも言って、そのまま横になってしまった。
 そんな風にドゥケと会っただけで癒される彼女が少し羨ましかった。
 だからと言って彼のところに行く気にもなれないけどね。
 ただ、アリエータ達がここまで彼のことを必要としてることについては、もう、悪く考えないようにはしようと思った。実際にこうやって救われてるんだったら、私があれこれ言うことじゃない気がするし。
「…ドゥケ様…」
 アリエータは寝言でまで彼の名前を呼んでた。しかも寝ぼけて私の手を掴んできたりもした。
「……」
 ドゥケの手を握ってるつもりだったら私のでごめん。でも代わりになるんだったらと思ってそのままにして私も眠ったのだった。



 翌朝、起きてすぐ、私達は次の戦場に移動する為の準備を始めた。
「急げ! 急げ! 敵は待ってくれないぞ!」
 小隊長が檄を飛ばす。テントを撤収し、装備をまとめ、準備を整え、整列し、点呼を取り、全員揃っていることを確認して次の戦場についての説明が始まった。
「次の戦場はアッバ湖北端! 開けた場所だがそれだけにさらに乱戦になることが予想される! 互いの連携を忘れるな! 仲間を見捨てる奴は自分も見捨てられるぞ! では、出撃!」
 正直、王都の方からもまともな情報がなかったそうで殆ど説明らしい説明もなく、ライアーネ様の号令と共にリデムが転移の魔法を使った。
 眩い光が晴れた時、目の前に広がっていたのは眼下に湖を見下ろす、荒涼とした平原だった。しかもまた、魔王軍の目の前に私達は現れてた。
 今度も当然のように王国軍の姿はない。でも昨日のことで状況がよく分かってたから、それをもう気にすることはなかった。私達は目の前の敵を討ち滅ぼすだけだ!
「はあっ!!」
 開けたところに広範囲に広がってた魔王軍に、リデムが爆炎の魔法を放った。これまで見たこともない特大の魔法だった。レドネ渓谷では、崖が崩壊する危険性もあったから使えなかったものだ。その一撃で、魔王軍の三分の一ほどが吹っ飛んだ。
 ただし、これでもうリデムは殆ど魔力を使い果たした筈だった。魔王軍が体勢を立て直す前にケリをつけなきゃいけない。
「うおおっ!!」
 ドゥケが雄叫びを上げながらまた単騎で飛び出していく。
 その姿が何となく頼もしくも感じてしまったのだった。

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