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愛おしむように
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「僕は隣の家で休んでます。何かあったら呼んでください」
カッセルはそう言って家を出て行った。
「じゃあ、私は夜まで少し休ませてもらうね」
私が言うと、ポメリアが「うん…」と静かに頷く。
アリスリスが寝てるベッドの脇で横になると、私もすっと眠りに落ちていくのが分かった。
次にハッと目を覚ますと、日がすっかり落ちていた。
「ごめん、寝過ごした」
と言いながら体を起こすと、ポメリアが「大丈夫…」と優しく応えてくれる。
ベッドを見ると、明かり取りの窓から差し込む月の光に照らされたアリスリスが、本当にあどけない子供の顔で寝てるのが分かった。
そうだよ。これが本来の彼女の姿なんだ。<勇者>だなんて、おかしいんだ。
「ポメリアはアリスリスと一緒に寝て。眠りが浅くなるごとに交代しよう」
「分かった……」
頷いてポメリアがアリスリスの隣で横になる。
私は剣を手に神経を研ぎ澄ます。森の中よりは出てくる可能性も下がるとはいえ、油断はできない。
窓から外を見ると、すぐ間近まで迫った森は月明かりの下でも黒々として、ぽっかりと穴が開いたようにさえ見える。
すると、窓に隠れたところからスッと人影が出てくるのが見えた。一瞬、私の体に緊張が走るけど、煌々と降り注ぐ月の光のおかげで、カッセルだとすぐに分かった。彼が警戒してくれてるんだ。
私も二人を起こさないようにそっと扉を開けて家の外に出て、カッセルのいた辺りへと向かう。
「…月が、綺麗ですね……」
私の気配に気付いたのか、彼は振り向かずに月を見上げたまま呟くように言った。
「こうして月を見上げてると、何もかも夢なんじゃないかって気がしてきます。魔王軍も、僕が勇者だってことも、何もかもがただの夢で、目が覚めると僕は自分のアトリエの中で居眠りをしてて、それで慌てて筆を取ってキャンバスに向かうんじゃないかって思えるんです……」
「……」
私は、何も言えなかった。この時の彼になんて声を掛けても嘘臭くなりそうで、言葉が出てこなかった。
「シェリスタさん……僕も弱音を吐いてもいいんでしょうか……? あの女の子みたいに甘えてもいいんでしょうか……?」
そう言って振り向いた彼の表情が本当に何とも言えなくて、私は胸がギュッと締め付けられるのを感じてしまった。だから言ってしまったんだ。
「私で良かったら、甘えてくれてもいいですよ…頼りない半人前ですけど……」
その言葉を言い終わる前に、彼は私を抱き締めていた。力強いっていうよりは、寂しくなった子供が縋りついてくるみたいな抱擁だった。
そんな彼を、私も、愛おしむように抱き締めていたのだった。
カッセルはそう言って家を出て行った。
「じゃあ、私は夜まで少し休ませてもらうね」
私が言うと、ポメリアが「うん…」と静かに頷く。
アリスリスが寝てるベッドの脇で横になると、私もすっと眠りに落ちていくのが分かった。
次にハッと目を覚ますと、日がすっかり落ちていた。
「ごめん、寝過ごした」
と言いながら体を起こすと、ポメリアが「大丈夫…」と優しく応えてくれる。
ベッドを見ると、明かり取りの窓から差し込む月の光に照らされたアリスリスが、本当にあどけない子供の顔で寝てるのが分かった。
そうだよ。これが本来の彼女の姿なんだ。<勇者>だなんて、おかしいんだ。
「ポメリアはアリスリスと一緒に寝て。眠りが浅くなるごとに交代しよう」
「分かった……」
頷いてポメリアがアリスリスの隣で横になる。
私は剣を手に神経を研ぎ澄ます。森の中よりは出てくる可能性も下がるとはいえ、油断はできない。
窓から外を見ると、すぐ間近まで迫った森は月明かりの下でも黒々として、ぽっかりと穴が開いたようにさえ見える。
すると、窓に隠れたところからスッと人影が出てくるのが見えた。一瞬、私の体に緊張が走るけど、煌々と降り注ぐ月の光のおかげで、カッセルだとすぐに分かった。彼が警戒してくれてるんだ。
私も二人を起こさないようにそっと扉を開けて家の外に出て、カッセルのいた辺りへと向かう。
「…月が、綺麗ですね……」
私の気配に気付いたのか、彼は振り向かずに月を見上げたまま呟くように言った。
「こうして月を見上げてると、何もかも夢なんじゃないかって気がしてきます。魔王軍も、僕が勇者だってことも、何もかもがただの夢で、目が覚めると僕は自分のアトリエの中で居眠りをしてて、それで慌てて筆を取ってキャンバスに向かうんじゃないかって思えるんです……」
「……」
私は、何も言えなかった。この時の彼になんて声を掛けても嘘臭くなりそうで、言葉が出てこなかった。
「シェリスタさん……僕も弱音を吐いてもいいんでしょうか……? あの女の子みたいに甘えてもいいんでしょうか……?」
そう言って振り向いた彼の表情が本当に何とも言えなくて、私は胸がギュッと締め付けられるのを感じてしまった。だから言ってしまったんだ。
「私で良かったら、甘えてくれてもいいですよ…頼りない半人前ですけど……」
その言葉を言い終わる前に、彼は私を抱き締めていた。力強いっていうよりは、寂しくなった子供が縋りついてくるみたいな抱擁だった。
そんな彼を、私も、愛おしむように抱き締めていたのだった。
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