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桃源郷:ボディガード2
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『妙な物は持ち込まないでください』
ようこそお越しくださいました。今夜はあらゆる世界から多くのお客様が訪れておいでです。異次元、異世界、異種、それぞれが欲しいものを胸に、この会場に集まりました。この会場に入れたのであれば、あなたがたには欲しいものがあるということ。ただし、ここはオークション会場。競り合いに負ければ手に入らないこともあるでしょう。その場合は落ち着いて下さい。相手を威嚇する、攻撃するなどはせぬよう心よりお願い申し上げます。
「攻撃って、そんなことあるの?」
首から襟巻を外したリンが首を傾げて高時を見上げます。黒に灰色がかったようなスーツに、長い黒髪がさらりと揺れました。機嫌悪そうな高時の表情にリンが笑みをこぼします。
「もう!いつまで怒ってるの?襟巻は帰りに返してくれるって言ったじゃない」
「事前に申請した時は、襟巻は持ち込みは大丈夫だったんだ」
ぶつくさ文句を言う横で漆黒の闇夜のようなスーツに身を固め、片眼鏡をかけた通鷹が微笑みます。
「まさか、襟巻がしゃべると思っていなかったんでしょう」
「私だってびっくりしたよ。普通の襟巻だと思ってたから」
扉を抜けた先でリンは警戒音に包まれました。高時と通鷹が驚いて振り向くと、リンの側に協会のスタッフが走り寄り、突然話し始めた襟巻を預かると申し出たのです。襟巻は今まで眠っていましたが、会場内に張り巡らされた魔法陣の影響で目を覚まし突然話し始めたのです。高時と通鷹も驚いて説明し、襟巻の審査にあたったスタッフも驚きの顔でもって確認しました。
審査にあったたスタッフの上司なのか、ベテランのスタッフが現れ襟巻を細かく鑑定し始めました。確かに眠っていればただの襟巻だと太鼓判を押します。動物の毛皮を使ったものではなく、人工で作られた代物です。白に銀が混じったような色合いが好評で、リンのような女の子が気軽に身につけられると人気がありました。襟巻が話したのは、人工の毛の中に、古き妖狐の毛が使われていことで力を宿すようになったのだと滔々と語るのを他のお客さんが立ち止まって聞く始末。出品しないかとか、自分に売らないかとかも声をかけられましたが、高時が断り、リンも丁重に自分が使いたいことを伝えました。
持ち主自身が知らなかったこと、事前に申請を出して許可を出していたこと、リンの襟巻をスタッフが預かることで何事もなく釈放してもらえました。
「ちょっと恥ずかしかったね」
警戒音に振り向いた人たちと、周りの殺気立った視線を思い出して恥ずかしいを通り越して、怖かったかもと付け加えます。あとからやって来たショウが目を丸くして、教会のスタッフに囲まれているリンを青い顔して見ていました。
「リンさんの護衛なら、仕事はないと思ったんだがな。高時さんと通鷹さんもいるし」
「そのはずだったんだけどな」
高時がやっと渋い顔をゆるめて笑いました。建物内に足を踏み入れる前の、念入りなボディチェックを前にリンは緊張します。自分の身につけているものが全部ダメだったらどうしようかとちょっぴり不安になりました。
扉を抜けた先にはそこかしこに桜の木が植えられ、美しい薄紅色の花を咲かせています。満開の桜の枝の上では満月が夜空を照らしていました。その向こうにはオークションが行われる建物があります。リンは大きな劇場やコンサートホールのようだと思いました。
つづく
ようこそお越しくださいました。今夜はあらゆる世界から多くのお客様が訪れておいでです。異次元、異世界、異種、それぞれが欲しいものを胸に、この会場に集まりました。この会場に入れたのであれば、あなたがたには欲しいものがあるということ。ただし、ここはオークション会場。競り合いに負ければ手に入らないこともあるでしょう。その場合は落ち着いて下さい。相手を威嚇する、攻撃するなどはせぬよう心よりお願い申し上げます。
「攻撃って、そんなことあるの?」
首から襟巻を外したリンが首を傾げて高時を見上げます。黒に灰色がかったようなスーツに、長い黒髪がさらりと揺れました。機嫌悪そうな高時の表情にリンが笑みをこぼします。
「もう!いつまで怒ってるの?襟巻は帰りに返してくれるって言ったじゃない」
「事前に申請した時は、襟巻は持ち込みは大丈夫だったんだ」
ぶつくさ文句を言う横で漆黒の闇夜のようなスーツに身を固め、片眼鏡をかけた通鷹が微笑みます。
「まさか、襟巻がしゃべると思っていなかったんでしょう」
「私だってびっくりしたよ。普通の襟巻だと思ってたから」
扉を抜けた先でリンは警戒音に包まれました。高時と通鷹が驚いて振り向くと、リンの側に協会のスタッフが走り寄り、突然話し始めた襟巻を預かると申し出たのです。襟巻は今まで眠っていましたが、会場内に張り巡らされた魔法陣の影響で目を覚まし突然話し始めたのです。高時と通鷹も驚いて説明し、襟巻の審査にあたったスタッフも驚きの顔でもって確認しました。
審査にあったたスタッフの上司なのか、ベテランのスタッフが現れ襟巻を細かく鑑定し始めました。確かに眠っていればただの襟巻だと太鼓判を押します。動物の毛皮を使ったものではなく、人工で作られた代物です。白に銀が混じったような色合いが好評で、リンのような女の子が気軽に身につけられると人気がありました。襟巻が話したのは、人工の毛の中に、古き妖狐の毛が使われていことで力を宿すようになったのだと滔々と語るのを他のお客さんが立ち止まって聞く始末。出品しないかとか、自分に売らないかとかも声をかけられましたが、高時が断り、リンも丁重に自分が使いたいことを伝えました。
持ち主自身が知らなかったこと、事前に申請を出して許可を出していたこと、リンの襟巻をスタッフが預かることで何事もなく釈放してもらえました。
「ちょっと恥ずかしかったね」
警戒音に振り向いた人たちと、周りの殺気立った視線を思い出して恥ずかしいを通り越して、怖かったかもと付け加えます。あとからやって来たショウが目を丸くして、教会のスタッフに囲まれているリンを青い顔して見ていました。
「リンさんの護衛なら、仕事はないと思ったんだがな。高時さんと通鷹さんもいるし」
「そのはずだったんだけどな」
高時がやっと渋い顔をゆるめて笑いました。建物内に足を踏み入れる前の、念入りなボディチェックを前にリンは緊張します。自分の身につけているものが全部ダメだったらどうしようかとちょっぴり不安になりました。
扉を抜けた先にはそこかしこに桜の木が植えられ、美しい薄紅色の花を咲かせています。満開の桜の枝の上では満月が夜空を照らしていました。その向こうにはオークションが行われる建物があります。リンは大きな劇場やコンサートホールのようだと思いました。
つづく
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