はじまり

天鳥そら

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はじまり15

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~はじまり~


はい、できましたと、ソウの靴を磨き終わったシキが 
顔をあげて笑いました。 

「ありがとうございます」 

「綺麗」 

ソウが礼を言い、クローディアは瞳を輝かせます。 
思ったより短い時間ですんで、ソウはほっとしました。 
表で、護衛を待たせているからです。 

「代金を…」 

「靴紐ぶんだけでいいよ」 

懐から財布を取り出したソウが困ったように、 
眉を下げます。 
シキは、サービスですと微笑んで立ち上がりました。 
シキとソウが代金のやり取りをしている間、 
クローディアは店内をみてまわります。 

古い机もずいぶんと昔の内装も、決して朽ちることなく今に 
とどめている姿が、クローディアの心をほっとさせました。 

この国は豊かです。ずいぶんと豊かになりましたが、 
靴屋にあるような懐かしい優しい雰囲気も、 
ずっと残っていてほしいとクローディアは思います。 

振り子のついた鳩時計を眺めて、それからゆっくり 
古い机の上のものをみてまわります。 
使い込んである万年筆に、使いづらいのではないかと 
思うくらい重たい裁ちばさみ。 

乱雑に置いてあるかのような日用品が、 
それぞれ意図があってそこに置かれているようで、 
クローディアは楽しくなりました。 

古い物がまるで、自分に語りかけてくるようだと 
くすりと笑った時、ひとつの古い時計に目をとめました。 

手の平にのるくらいの小さな木の時計です。 
首から下げられるようになっていて、 
古い皮紐がついていることに興味をもちました。 

触らずに、じっとみていますと不思議なことに気づきます。 
その時計の針は、長針はまっすぐ上に、短針は、 
二時の方向を指したまま、ぴくりとも動かなかったのです。 

「この時計、とまってるわ」 

クローディアの声に、ソウとシキが同時に 
振り返りました。 

つづく 
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