はじまり

天鳥そら

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はじまり17

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~刻~ 


「少し、みせてもらってもいいですか?」 

一拍おいて、ソウがシキに聞きます。 
どうぞ、と気楽にソウの手に時計を渡しました。 
真剣な表情で、紋章を調べ、木の木目を確かめます。 
紐としてついている皮は、相当古いものだということが 
わかりました。 

「これは、一体いつもらったのかご存知ですか?」 

考え込むようなしぐさで、宙をにらんでから肩をすくめました。 

「悪いけど、さっぱりわからないよ」 

なにしろ、お爺さんが小さい頃からすでに、ここにあったのだという 
からです。 

「私も見せてもらっていいかしら」 

「もちろん」 

ソウから受け取って、クローディアも時計を眺めます。 
裏に描かれている大きな鳥の紋章は、クローディアにも 
おぼえがありました。 

ずいぶん古い昔に、金の鳥から白い鳥に紋章を変えると 
宣言した王様の私物でした。 

王家のものには、すべて鳥の紋章が入っています。 
今でこそ、白い鳥となってしまいましたが、 
その前までは、金の鳥で描かれていたのです。 


その時の王様がこの靴屋に? 


確証はありませんが、そうとしか思えません。 
詳しく聞いてみようとクローディアが時計をひっくり返した時、 
チッ…チッ…と音がしました。 

木時計から音がします。 
よく見てみると、小さな音をたてながら、わずかに 
時計の針が動いているのが目に入りました。 
驚いて、時計を元の机の上に置きます。 

しかし、時計が止まることはありませんでした。 
クローディアが手にしてから、規則正しい音をたてて、 
時計の針はゆっくりと時を刻み始めたのです。 

そろりと隣にいるシキとソウを見ます。 
二人は話に夢中で、時計が動いたことに気づいていないようでした。 



つづく 


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