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はじまり70
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はじまり70
~贈り物~
やれやれと大きくため息をついていると、目の前に
カップが置かれます。
淡い新緑の季節のような色合いの緑に、心が和みます。
「ありがとう」
礼をいって、カップを置いてくれた者のほうを仰ぎ見ます。
黒髪黒目の青年がにっこり笑うのに、思わずカップを取り落としそうに
なりました。
「シ…」
黒髪黒目の青年が、人差し指を自分の口の前に立てて、
静かにするよう諌めます。
キールは立ち上がり、青年と抱擁を交わします。
「おめでとうございます、キール国王陛下」
「よしてくれ」
気恥ずかしそうに微笑んで、彼の顔をまじまじとみつめました。
実際、キールは、三人が生きていると聞いても半信半疑でした。
その上、キールの戴冠式と結婚式にまで参加するというのだから、
何かにかつがれているだとさえ思いました。
「よくここまで」
入れたものだと笑って、シキに席を勧めます。
それから、シキの口から今までのこと、これからのことを
聞いて目を丸くしました。
「こうして、君と話さなければ、とても信じられなかったよ」
「この世の秘密を知りましたもので」
いたずらっぽく瞳を煌かせて、簡単にこれからのことを
語ります。
王の言うように、国外の情勢を知らせることはもちろんのこと、
自分たちが知った不思議なことを少しづつ国に広めて欲しい
と話します。
「それはかまわないが…その、どうやって」
「最初はこの、お茶の原料となる植物を育てて欲しいのです」
キールの前で湯気をたてているカップに視線を向けます。
キールは手を伸ばして、一口飲みました。
甘くさわやかな香りが口の中に広がります。
「体力の回復にいいんです」
にっこり笑って小さな皮の袋を取り出します。
中からはいくつかの種が転がり出てきました。
まずは、キールが育てて自分で実践してほしいこと、
それから周りの人に少しづつすすめてほしいと語ります。
「体調がよくなることで、育てることが受け入れやすくなります」
それからもいくつか不思議な話を聞いた後、シキが席をたちました。
また、こうしてお訪ねしますと微笑んで、結婚式の準備を
するようすすめます。
すっかり長いこと話してしまい、キールは慌てて立ち上がりましたが、
時計を見ていると、シキが来る前からほとんど時計の針が動いていません。
驚いて、シキにどういうことか問いただそうとしましたが、
彼はもうどこにもいませんでした。
まるで夢でも見ていたかのような気持ちになって、テーブルの上を見ます。
お茶の入ったティーカップとともに、皮の袋がおいてあります。
種がいくつかちらばっていて、いつのまに置いたのか、
『結婚おめでとう』
と書かれたカードが置いてあります。
そのカードを手に取ると、以前もらった手紙のようにすーっと
文字が消えたので、もう笑うしかありませんでした。
つづく
~贈り物~
やれやれと大きくため息をついていると、目の前に
カップが置かれます。
淡い新緑の季節のような色合いの緑に、心が和みます。
「ありがとう」
礼をいって、カップを置いてくれた者のほうを仰ぎ見ます。
黒髪黒目の青年がにっこり笑うのに、思わずカップを取り落としそうに
なりました。
「シ…」
黒髪黒目の青年が、人差し指を自分の口の前に立てて、
静かにするよう諌めます。
キールは立ち上がり、青年と抱擁を交わします。
「おめでとうございます、キール国王陛下」
「よしてくれ」
気恥ずかしそうに微笑んで、彼の顔をまじまじとみつめました。
実際、キールは、三人が生きていると聞いても半信半疑でした。
その上、キールの戴冠式と結婚式にまで参加するというのだから、
何かにかつがれているだとさえ思いました。
「よくここまで」
入れたものだと笑って、シキに席を勧めます。
それから、シキの口から今までのこと、これからのことを
聞いて目を丸くしました。
「こうして、君と話さなければ、とても信じられなかったよ」
「この世の秘密を知りましたもので」
いたずらっぽく瞳を煌かせて、簡単にこれからのことを
語ります。
王の言うように、国外の情勢を知らせることはもちろんのこと、
自分たちが知った不思議なことを少しづつ国に広めて欲しい
と話します。
「それはかまわないが…その、どうやって」
「最初はこの、お茶の原料となる植物を育てて欲しいのです」
キールの前で湯気をたてているカップに視線を向けます。
キールは手を伸ばして、一口飲みました。
甘くさわやかな香りが口の中に広がります。
「体力の回復にいいんです」
にっこり笑って小さな皮の袋を取り出します。
中からはいくつかの種が転がり出てきました。
まずは、キールが育てて自分で実践してほしいこと、
それから周りの人に少しづつすすめてほしいと語ります。
「体調がよくなることで、育てることが受け入れやすくなります」
それからもいくつか不思議な話を聞いた後、シキが席をたちました。
また、こうしてお訪ねしますと微笑んで、結婚式の準備を
するようすすめます。
すっかり長いこと話してしまい、キールは慌てて立ち上がりましたが、
時計を見ていると、シキが来る前からほとんど時計の針が動いていません。
驚いて、シキにどういうことか問いただそうとしましたが、
彼はもうどこにもいませんでした。
まるで夢でも見ていたかのような気持ちになって、テーブルの上を見ます。
お茶の入ったティーカップとともに、皮の袋がおいてあります。
種がいくつかちらばっていて、いつのまに置いたのか、
『結婚おめでとう』
と書かれたカードが置いてあります。
そのカードを手に取ると、以前もらった手紙のようにすーっと
文字が消えたので、もう笑うしかありませんでした。
つづく
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