はじまり

天鳥そら

文字の大きさ
93 / 159

第二部 はじまりは美しい6

しおりを挟む
~秘密~ 


夕食が終わり、“美しいひと”は自分の寝泊まりしている部屋へと戻ります。 
扉のドアノブへと手をかけた時、玄関先で会った青年が隣の部屋からでてきました。 

青年も“美しいひと”に気がついたようです。
お互い軽く会釈をして、簡単な挨拶をすませました。 
青年が、廊下の奥へと去っていくのを見送ってから、部屋の中へとはいりました。 
ベッドに、腰をおろしてため息をつきます。 

「困ったわ。隣の部屋だったのね」 


誰もいない部屋の中で、小さく呟きました。 



夜半過ぎ、“美しいひと”は、ベッドの中から起き出しました。
寝巻きをではなく、普段着でした。
軽く身仕度をして、部屋についてる窓に手をかけました。 

ゆっくりと音をたてないように、窓を開けます。
少し軋む音がしてから、潮の香りが“美しいひと”の鼻をくすぐりました。 

隣の部屋に泊まっているであろう、青年の様子を伺います。
部屋から、明かりは漏れていません。 
しばらくの間耳をすまし、物音がしないことを確認すると、窓枠に足をかけました。 
慣れた動作で、窓から外へと飛び出して、また周りの様子をうかがいます。 

海岸へと降りる小道に行くには、青年の部屋の窓の下を通らなければなりません。 
足音をたてないよう、そっと歩いていきます。 
無事通りすぎ、後ろを振り返って部屋の主が気づいていないことを確認してから、
急いで小道の方へと走っていきました。 

“美しいひと”が背後を気にしなくなった頃、
“美しいひと”の隣の部屋で人影が動きました。 

人影は、窓のそばに近づいて躊躇なく、窓を開けました。 
この部屋の主である青年は“美しいひと”の後ろ姿が小さくなっていくのを見送ります。 

しばらく考え込むようにじっとしていましたが、おもむろに片足をあげ、
“美しいひと”と同じように窓を飛び越えました。 

それから、“美しいひと”に気づかれぬよう、そっと後をつけていきました。 


つづく 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...