はじまり

天鳥そら

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第二部 はじまりは美しい32

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~二羽の小鳥~

ぽかんとしたルエラとやってられないと言わんばかりのノエルに、にこりと笑います。

「ノエル、僕のことは話さなかったの?」

肩まで伸ばした銀髪を後ろで束ね、新緑の葉と同じ色の瞳をもった青年でした。
ゆっくりとした動作でこちらへ来ると、ノエルと親しげにハグをします。

「ルエラは、何も覚えていないんだ。」

そう、と軽く頷いて、ルエラに向かって礼儀正しくお辞儀をしました。

「ミス・ルエラ。私の名は、リクと申します。」

ノエルの兄ですと右手をさしだしました。
ルエラもどぎまぎしながら、右手をだして握手します。
大きな手をそっと握った時、頭の中で光が大きくはじけて、
言葉と共に一瞬何かが浮かびました。


『大丈夫。必ず迎えにいくからね』


泣いている小さな自分に、目の前の少し大きな男の子が一生懸命話しています。
ぼさぼさの銀髪と明るい爽やかな緑の瞳が、陽にあたって、
きらきら光るのをじっとみていました。

ぼんやりと目の前の男性を眺めます。
そっと手をのばして、リクの頬に触れました。

何か確かめるかのように、そのまま瞳の奥をじっとのぞきこみます。
瞳をみている内に、何かあたたかいものが、体の奥からふきだしてきました。
あたたかい、優しい光に満たされるような感覚と一緒に、
懐かしい記憶が重い蓋をあけて、流れ込んできます。

くるくるくるくる体の中をまわるようにしてから、すとんと心の底に落ち着きました。
ルエラの手がリクの頬から移動して、銀髪に移ります。

「もう、ボサボサじゃないのね」

「君もとても綺麗になった。」

「迎えにくるの、遅いんじゃない?」

「気づかなかった君が悪い」

自分の髪を撫でるルエラの手を取り、ゆっくりと抱きしめます。
今までの時間を取り戻そうとでもするかのように、ルエラは、
リクの腕の中に体を預けました。

さわさわと流れる優しい風と金色に光る木漏れ日の中で、二羽の小鳥がさえずります。
しばらく、にぎやかにさえずっていたと思ったら、寄り添うようにして、枝にとまりました。


ルエラの双子の弟は、優しく明るい森を後にして、ゆっくり屋敷へと戻っていきました。



つづく
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