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【プレイヤー 編】
チキンは謝罪する
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「あ、そうだ! 最上層目指すまえに、ここでフレンド登録しておこうよ。ね、マイコちゃんいいでしょ?」
こう、ベニネコが提案すると。
「うっす! 自分も、おっしゃっしゃす!」
「わたしも……です」
「有り難く思え。俺様のフレンドにしてやる」
他の三人も、フレンド登録を希望。
フレンドは嬉しいことだが、本来の登録名を知り得た後に、マイコからマイケルに呼び名が変更されるのはどうにかして避けたいと思う。
「あ、あのー。正直、フレンドは嬉しいのですが……わたしの登録名、なぜか間違えてしまって。お、驚かないで下さいね? あと出来れば、これからもマイコと呼んでくれるとありがたいです」
米子は、少しもじもじした仕草で、判然とせず小さな声で話す。
それを聞いたメンバーは、なぜか気にした様子もなく、寧ろ”驚くわけがない”と言いたげな様子。
「おっけー! マイコちゃん」
「うっす! マイコはん!」
「畏|(まり)……です」
「登録名なんか、どーでもいいし? マイコはマイコだろ?」
力士山の言い方だと『舞妓はん』などと勘違いされそうだが、ここで触れるつもりは無いだろう。そんな事より重要なのは、メンバーたちの躊躇なく答えてくれた姿であり、自身に向けられた優しい笑顔。
結局、名前を気にするのは小さな事で、ただの偏見だったかもしれない。そう今までの考えを思い正せば、現実世界で自分の名を気にしていることも、何となく馬鹿らしいとも思える。
EX開始から一年、米子が初めて「また同じメンバーで冒険がしてみたい」と感じた瞬間であった。
「まあでも、たまーにいるんだよね。ネーム間違えて登録しちゃうひとー」
「え? そうなんですか? わたしだけかなって――」
「いる……チキンも、そう。……です」
登録名を間違ってしまった米子としては、興味深い会話。
確かに、名前を登録する時は口頭で伝えるものであって、滑舌が悪いと登録ミスの可能性も考えられる。
米子の場合は、タマ(クマ)が原因だったのだが……。
「あー だな。べつに俺様はネームとか気にしてねーけど」
「チキンは全然気にしてないよねー。チキンって呼んでるのは、登録名が呼び辛かっただけだもんねー」
「よ、良かったぁ……同じ仲間がいて嬉しいです。なんか気分が楽になっちゃいました! では、みなさんとフレンド登録しますね」
フレンド登録の方法はひとつのみ。
それは互いが合意の上、握手すること。
簡単な方法ではあるが、無理に申請されることもないないため、トラブルは少ないと言えよう。
握手後には申請の確認が行われ、みごと承認されれば登録完了だ。
「はい、はい! じゃー、わたしからー!」
先ずは、我れ先と名乗りでたベニネコと握手をかわす。
握手後、突如として米子とベニネコの頭上から姿を現わしたのは、サポーターと呼ばれる者たち。
「オッス! おいらはタマだぉ!」
タマは、米子の肩に座るようにして挨拶すると。
「コニチワー! わたしはキララでぇす!」
同時に、ベニネコの肩に乗るキララも挨拶を贈る。キララはネコ型のサポーター。
サポーターの瞳に、いくつかのプログラム言語が映し出される。
「「フレンド申請確認しました」」
二体同時にマスターへ確認を告げた。
「「マスター。承認しますか?」」
と、声を合わしサポーターは承認を求め。
「オッケー!」
「わたしも、おっけーです」
それぞれのマスターが口頭で承認。すると、サポーターはマスターの肩から離れ、ふわふわと浮きながら近づき、ひしっと抱擁。
その抱き合う姿が、可愛らしい事この上ない。
「「フレンド登録、完了ッ!」」
こんな感じでフレンド登録が行われる。
登録後は、フレンド帳と称された手帳のような物に名前が記され、以後フレンド帳を使いメッセージや、場所によるが直接話すことも可能だ。
フレンド登録時には、一連の流れをひとりひとり行う。二番目はレイカ、三番目は力士山、最後にチキンの順で登録の全てを終えて一息つく。
「あ、マイケルなんだ? 結構ありじゃん? 可愛いカモ?」
さっそくフレンド帳を確認したベニネコが、ニコニコと嬉しそうに言う。
「え? そうですか? 本当はマイコって言ったつもりなんですが、何故かマイケルに……お恥ずかしい」
「あははっ! そうなんだ? 全然いいじゃーん! チキンなんて、リアルだと本当恥ずかしいキャラだからねー。だって、目が合うとすぐ謝ってくるもん」
「ば、馬鹿やろう! リアルの話はいいだろ! ここで強きゃいいんだよ! それにリアルで謝るのは癖なんだから仕方がないだろ!」
現実世界だとショッパイけど、ゲーム世界では偉そうな奴。それがチキンの現実と仮想。
これは珍しいことではなく、ゲーム世界のみ強気のプレイヤーなど良くあること。本当は何かを隠しながらゲームをするものは多く、またそれもゲームなのだ。
仮想空間になりたい自分を求めることは、ゲームを楽しむ方法のひとつ。
「へぇー。現実でも二人は友達なんですね?」
「そそ。あとレイカは、わたしの親友だしー。力士君も、いちお友達かな」
「……です」
「はあ。い、一応……っすか」
コクコクと頭を縦に振り頷くレイカ。力士山は、どこか悲し気な表情だが無視しようと思う。
米子は元々、友達からの誘いでEXを始めたが、友達が飽き性だったのか三ヶ月ほどで早々に引退。その後は、仲の良い友達などできず孤独だった。
そんなこともあり、リアルでもゲームでも仲の良い四人の姿は、いつもひとりだった米子にとっては羨ましく、そして淋しくも。
メンバー全員が、フレンド帳を手にしてわいわいと楽しげに騒ぐ。
そして、もちろん米子もフレンド帳を確認し、楽しく会話しながら気付いてしまった。
(あ、そかそか。チキンって呼ばれているのは、この名前からきてるのか)
と、手にしたフレンド帳を記された名前を見て、米子は心中で納得する。
名前登録時にチキンは現実世界での癖が出てしまったのだろう。
彼はどうやらサポーターに謝ってしまった結果だと、米子は気付く。
「ほら。リアルの話はいいから、先に進むぞ! 今日中にクリアしないとだからな! お前ら足引っ張るんじゃねーぞ」
こう言って登録名『ゴメンナサイ』は、肩をなびかせつつ、のしのしと偉そうに歩き始めた。
こう、ベニネコが提案すると。
「うっす! 自分も、おっしゃっしゃす!」
「わたしも……です」
「有り難く思え。俺様のフレンドにしてやる」
他の三人も、フレンド登録を希望。
フレンドは嬉しいことだが、本来の登録名を知り得た後に、マイコからマイケルに呼び名が変更されるのはどうにかして避けたいと思う。
「あ、あのー。正直、フレンドは嬉しいのですが……わたしの登録名、なぜか間違えてしまって。お、驚かないで下さいね? あと出来れば、これからもマイコと呼んでくれるとありがたいです」
米子は、少しもじもじした仕草で、判然とせず小さな声で話す。
それを聞いたメンバーは、なぜか気にした様子もなく、寧ろ”驚くわけがない”と言いたげな様子。
「おっけー! マイコちゃん」
「うっす! マイコはん!」
「畏|(まり)……です」
「登録名なんか、どーでもいいし? マイコはマイコだろ?」
力士山の言い方だと『舞妓はん』などと勘違いされそうだが、ここで触れるつもりは無いだろう。そんな事より重要なのは、メンバーたちの躊躇なく答えてくれた姿であり、自身に向けられた優しい笑顔。
結局、名前を気にするのは小さな事で、ただの偏見だったかもしれない。そう今までの考えを思い正せば、現実世界で自分の名を気にしていることも、何となく馬鹿らしいとも思える。
EX開始から一年、米子が初めて「また同じメンバーで冒険がしてみたい」と感じた瞬間であった。
「まあでも、たまーにいるんだよね。ネーム間違えて登録しちゃうひとー」
「え? そうなんですか? わたしだけかなって――」
「いる……チキンも、そう。……です」
登録名を間違ってしまった米子としては、興味深い会話。
確かに、名前を登録する時は口頭で伝えるものであって、滑舌が悪いと登録ミスの可能性も考えられる。
米子の場合は、タマ(クマ)が原因だったのだが……。
「あー だな。べつに俺様はネームとか気にしてねーけど」
「チキンは全然気にしてないよねー。チキンって呼んでるのは、登録名が呼び辛かっただけだもんねー」
「よ、良かったぁ……同じ仲間がいて嬉しいです。なんか気分が楽になっちゃいました! では、みなさんとフレンド登録しますね」
フレンド登録の方法はひとつのみ。
それは互いが合意の上、握手すること。
簡単な方法ではあるが、無理に申請されることもないないため、トラブルは少ないと言えよう。
握手後には申請の確認が行われ、みごと承認されれば登録完了だ。
「はい、はい! じゃー、わたしからー!」
先ずは、我れ先と名乗りでたベニネコと握手をかわす。
握手後、突如として米子とベニネコの頭上から姿を現わしたのは、サポーターと呼ばれる者たち。
「オッス! おいらはタマだぉ!」
タマは、米子の肩に座るようにして挨拶すると。
「コニチワー! わたしはキララでぇす!」
同時に、ベニネコの肩に乗るキララも挨拶を贈る。キララはネコ型のサポーター。
サポーターの瞳に、いくつかのプログラム言語が映し出される。
「「フレンド申請確認しました」」
二体同時にマスターへ確認を告げた。
「「マスター。承認しますか?」」
と、声を合わしサポーターは承認を求め。
「オッケー!」
「わたしも、おっけーです」
それぞれのマスターが口頭で承認。すると、サポーターはマスターの肩から離れ、ふわふわと浮きながら近づき、ひしっと抱擁。
その抱き合う姿が、可愛らしい事この上ない。
「「フレンド登録、完了ッ!」」
こんな感じでフレンド登録が行われる。
登録後は、フレンド帳と称された手帳のような物に名前が記され、以後フレンド帳を使いメッセージや、場所によるが直接話すことも可能だ。
フレンド登録時には、一連の流れをひとりひとり行う。二番目はレイカ、三番目は力士山、最後にチキンの順で登録の全てを終えて一息つく。
「あ、マイケルなんだ? 結構ありじゃん? 可愛いカモ?」
さっそくフレンド帳を確認したベニネコが、ニコニコと嬉しそうに言う。
「え? そうですか? 本当はマイコって言ったつもりなんですが、何故かマイケルに……お恥ずかしい」
「あははっ! そうなんだ? 全然いいじゃーん! チキンなんて、リアルだと本当恥ずかしいキャラだからねー。だって、目が合うとすぐ謝ってくるもん」
「ば、馬鹿やろう! リアルの話はいいだろ! ここで強きゃいいんだよ! それにリアルで謝るのは癖なんだから仕方がないだろ!」
現実世界だとショッパイけど、ゲーム世界では偉そうな奴。それがチキンの現実と仮想。
これは珍しいことではなく、ゲーム世界のみ強気のプレイヤーなど良くあること。本当は何かを隠しながらゲームをするものは多く、またそれもゲームなのだ。
仮想空間になりたい自分を求めることは、ゲームを楽しむ方法のひとつ。
「へぇー。現実でも二人は友達なんですね?」
「そそ。あとレイカは、わたしの親友だしー。力士君も、いちお友達かな」
「……です」
「はあ。い、一応……っすか」
コクコクと頭を縦に振り頷くレイカ。力士山は、どこか悲し気な表情だが無視しようと思う。
米子は元々、友達からの誘いでEXを始めたが、友達が飽き性だったのか三ヶ月ほどで早々に引退。その後は、仲の良い友達などできず孤独だった。
そんなこともあり、リアルでもゲームでも仲の良い四人の姿は、いつもひとりだった米子にとっては羨ましく、そして淋しくも。
メンバー全員が、フレンド帳を手にしてわいわいと楽しげに騒ぐ。
そして、もちろん米子もフレンド帳を確認し、楽しく会話しながら気付いてしまった。
(あ、そかそか。チキンって呼ばれているのは、この名前からきてるのか)
と、手にしたフレンド帳を記された名前を見て、米子は心中で納得する。
名前登録時にチキンは現実世界での癖が出てしまったのだろう。
彼はどうやらサポーターに謝ってしまった結果だと、米子は気付く。
「ほら。リアルの話はいいから、先に進むぞ! 今日中にクリアしないとだからな! お前ら足引っ張るんじゃねーぞ」
こう言って登録名『ゴメンナサイ』は、肩をなびかせつつ、のしのしと偉そうに歩き始めた。
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