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【初級者 編】
タマ(クマ)
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「あんたら盛り上がっているところ悪いが、そろそろいいかい?」
三人の会話をジッと待っていたが、なかなか終わりが見えず、リーザが痺れを切らしてしまう。
「あ、はいっ! 楽しくって……つい」
「そうだった! 今は盛り上がってる場合じゃないよね、ごめーん!」
「反省……です」
確かに、それどころでは無い
このババ――もとい、リーザが会話に割り入り、間が悪くとも三人は反省した様子、だ。
リーザは呆れ顔で一度ため息をつき、本題となる会話を再開してきた。
「ったく……。何はともあれログアウト出来ないって言うなら、この世界で住むしかないねえ。誰か仲の良い知り合いがいれば――」
「フレンドからも、マイコちゃん消えてるからねー。せっかくフレンド登録したのに」
「(悲しみ)……です」
米子がゲーム世界の住人となってしまったからには、この世界で暮らすしか方法はない。そしてフレンドシステムが使用できなくなったため、知り合いとの連携は難しくなり、万が一の時にもひとりで解決しなければならなくなる。
プレイヤーは一日二四時間ゲーム世界にいるわけではない。それを考慮すると、否が応でも単独行動となる時間は避けられないと言えよう。
「あ、そだそだ。マイコちゃんのサポーター……タマちゃんだったっけ? あのコは呼び出せないの?」
「サポーターか。まあ、この世界に詳しいから頼りにはなるだろうが……NPCにサポーターはいなかったはずだぞ?」
「まだ試してませんけど、ちょっとだけ期待しちゃいます。今までタマには、いっぱい助けてもらいましたから……なので、もう会えないのは淋しいです」
サポーターは姿が見えるだけで触れることは出来ず、会話するホログラムのようなものだ。戦闘に参加することはないが、戦闘のレクチャーからシステムの説明まで、事細かに説明してくれる。
米子がこのEXを始めてから約一年間、タマにはいろいろとお世話になり、時には日常会話などもしてきた。
この世界では、いつもプレイヤーのすぐ側にいる親友、又は相棒なのだ。
「物は試しですので、不安ですけど……呼んでみますね」
不安な気持ちと高鳴る鼓動。タマが消えてしまっていたらと思うと、不安と緊張感に包まれる。
米子は天井のいる何者かへ話しかけるように見上げ、その名を呼んだ。
「タ、タマ お願い! わたしの声が聞こえるなら姿を見せてっ!」
………………………………
……………………
……いぉ!
今、確かに(タマ?)返事が聞こえた。
「え? いま、何か聞こえましたよね?」
「うん! 聞こえた、聞こえたー! 良く聞き取れなかったけどー」
「聞こえた……な? たぶん」
「……です?」
間違いなく何者かの声は聞こえたのだが、呼べば必ず主人の頭上に現れるはずの、サポーターの姿が見えない。その姿が見えずに返事だけ聞こえてきたのだから、空耳かと疑ってしまう。
「でも、タマちゃんいないよね? なんで?」
「わけがわからないねえ。普通ならフワフワと頭上に現れるはずなんだが」
「……ですよね。”バグ”とか、”不具合”とか、それとも”欠陥”でしょうか? も、もう一度呼んでみますね」
(((――マイコ、それ三つとも意味一緒じゃね?)))
プレイヤーの米子がNPCになったのだから、今更声だけのサポーターがいたとしても、騒ぎ立てるような驚きはなく一同は冷静だ――米子以外は。
ならばと、米子はこの状況を確認するためもう一度タマを呼ぶ。
「タマー! どこにいるの!? いるなら出てきて!」
……再びタマの名を呼んで数秒後、なぜか後方から返事とともに姿を現わすクマのぬいぐるみ。
「はいはいぉ! マスター何用?」
そしてテクテクと米子へ歩み寄り……あ、やっぱコケた。
「タマだー! 良かった! 消えてなかったんだね!」
米子は歓喜のあまり、すかさずタマへ駆け寄り抱き上げた。
「おいらが消える? 隣部屋で寝てたダケだぉ?」
「そうなんだ? 良かったあっ!」
米子はタマの両脇を掴みながら、落ち着きなく子供のように燥ぐ。
しかし――――
はしゃいで喜んでいるのは米子だけで、他の三人はびっくり仰天状態。そんな三人のうち、なんとか口を開いたのはリーザだった。
「マ、マイコ……? あんた今、状況わかってるのかい?」
「はい? 状況とは?」
米子を指差し、続いて話しかけたのはベニネコで、なぜか謎めいた表情を浮かべ言う。
「タマちゃんってサポーターでしょー? なんで抱き上げちゃってるの? 触れられないでしょ、普通。それにタマちゃん寝てたって……そもそも、ぬいぐるみとかって寝るのー??」
これを聞いたことにより、米子も漸く状況を把握できたようだ。
「あ、なんででしょ? 普通に触れますし、フワフワして柔らかいし、気持ちいいですよ?」
米子の興味深い発言によりベニネコとレイカは、タマを撫でたり抱いたり、ぐるぐる回したりと好き放題に弄び始めた。
「ほんとだ、触れるー! なにこれ、超フワフワして気持ちーじゃん!」
「…………(可愛い)です」
「なんだぉ? なんだぉ!? へ、ヘルプ! マスター!!」
ふたりの、やりたい放題にタマもタジタジ。そして涙目で助けを求め連呼するSOS。
「サポーターが実体化するなんて初めてだよ。……なんだか、今日は初めてばかりで頭が痛くなっちまうねぇ。――ふふっ」
リーザは頭を抱えながらも嬉しそうだが、その怖い笑みを浮かべ、自身が初めて知る情報に胸を踊らせる。
「とりあえず、マイコにはサポーターがいれば何とかなりそうだね? しばらくこの部屋を自由にしていいから、この先のことはゆっくり考えるといいよ。あたしも協力するさあね」
現実世界へ帰る事もできない米子。
そんな米子は、このEXで今後暮らして行かねばならない。
リーザの真意は「アイテムを無理に使わせた自分にも責任がある」と、想ってのことだろう。それを察する米子でも、リーザの言葉は嬉しかった。
「すみません、リーザさん。お世話になります」
米子は深く頭を下げ感謝の意を表す。
「世話とか、そんなんじゃないよ。あたしはこの店に、陽の当たるまでしか居られないんだよ。マイコは店番……みたいなもんだねぇ」
「ふふっ。分かりました、このわたくしにお任せを!」
これにより、暫し平穏な空気が訪れる――
――その直後だった。米子が頭を上げると同時に店内の方から聞こえる男性の声。
「あー 店のことすっかり忘れてたね。面倒くさいけど、いくかー」
「あ、それなら部屋とかお世話になりますし、わたしも手伝わせてください!」
「ん? あまりやる事ないけど、それで気がすむっていうなら着いてきな」
米子とリーザはタマを弄ぶ二人を後にし、店内へと向かう。
――――――
三人の会話をジッと待っていたが、なかなか終わりが見えず、リーザが痺れを切らしてしまう。
「あ、はいっ! 楽しくって……つい」
「そうだった! 今は盛り上がってる場合じゃないよね、ごめーん!」
「反省……です」
確かに、それどころでは無い
このババ――もとい、リーザが会話に割り入り、間が悪くとも三人は反省した様子、だ。
リーザは呆れ顔で一度ため息をつき、本題となる会話を再開してきた。
「ったく……。何はともあれログアウト出来ないって言うなら、この世界で住むしかないねえ。誰か仲の良い知り合いがいれば――」
「フレンドからも、マイコちゃん消えてるからねー。せっかくフレンド登録したのに」
「(悲しみ)……です」
米子がゲーム世界の住人となってしまったからには、この世界で暮らすしか方法はない。そしてフレンドシステムが使用できなくなったため、知り合いとの連携は難しくなり、万が一の時にもひとりで解決しなければならなくなる。
プレイヤーは一日二四時間ゲーム世界にいるわけではない。それを考慮すると、否が応でも単独行動となる時間は避けられないと言えよう。
「あ、そだそだ。マイコちゃんのサポーター……タマちゃんだったっけ? あのコは呼び出せないの?」
「サポーターか。まあ、この世界に詳しいから頼りにはなるだろうが……NPCにサポーターはいなかったはずだぞ?」
「まだ試してませんけど、ちょっとだけ期待しちゃいます。今までタマには、いっぱい助けてもらいましたから……なので、もう会えないのは淋しいです」
サポーターは姿が見えるだけで触れることは出来ず、会話するホログラムのようなものだ。戦闘に参加することはないが、戦闘のレクチャーからシステムの説明まで、事細かに説明してくれる。
米子がこのEXを始めてから約一年間、タマにはいろいろとお世話になり、時には日常会話などもしてきた。
この世界では、いつもプレイヤーのすぐ側にいる親友、又は相棒なのだ。
「物は試しですので、不安ですけど……呼んでみますね」
不安な気持ちと高鳴る鼓動。タマが消えてしまっていたらと思うと、不安と緊張感に包まれる。
米子は天井のいる何者かへ話しかけるように見上げ、その名を呼んだ。
「タ、タマ お願い! わたしの声が聞こえるなら姿を見せてっ!」
………………………………
……………………
……いぉ!
今、確かに(タマ?)返事が聞こえた。
「え? いま、何か聞こえましたよね?」
「うん! 聞こえた、聞こえたー! 良く聞き取れなかったけどー」
「聞こえた……な? たぶん」
「……です?」
間違いなく何者かの声は聞こえたのだが、呼べば必ず主人の頭上に現れるはずの、サポーターの姿が見えない。その姿が見えずに返事だけ聞こえてきたのだから、空耳かと疑ってしまう。
「でも、タマちゃんいないよね? なんで?」
「わけがわからないねえ。普通ならフワフワと頭上に現れるはずなんだが」
「……ですよね。”バグ”とか、”不具合”とか、それとも”欠陥”でしょうか? も、もう一度呼んでみますね」
(((――マイコ、それ三つとも意味一緒じゃね?)))
プレイヤーの米子がNPCになったのだから、今更声だけのサポーターがいたとしても、騒ぎ立てるような驚きはなく一同は冷静だ――米子以外は。
ならばと、米子はこの状況を確認するためもう一度タマを呼ぶ。
「タマー! どこにいるの!? いるなら出てきて!」
……再びタマの名を呼んで数秒後、なぜか後方から返事とともに姿を現わすクマのぬいぐるみ。
「はいはいぉ! マスター何用?」
そしてテクテクと米子へ歩み寄り……あ、やっぱコケた。
「タマだー! 良かった! 消えてなかったんだね!」
米子は歓喜のあまり、すかさずタマへ駆け寄り抱き上げた。
「おいらが消える? 隣部屋で寝てたダケだぉ?」
「そうなんだ? 良かったあっ!」
米子はタマの両脇を掴みながら、落ち着きなく子供のように燥ぐ。
しかし――――
はしゃいで喜んでいるのは米子だけで、他の三人はびっくり仰天状態。そんな三人のうち、なんとか口を開いたのはリーザだった。
「マ、マイコ……? あんた今、状況わかってるのかい?」
「はい? 状況とは?」
米子を指差し、続いて話しかけたのはベニネコで、なぜか謎めいた表情を浮かべ言う。
「タマちゃんってサポーターでしょー? なんで抱き上げちゃってるの? 触れられないでしょ、普通。それにタマちゃん寝てたって……そもそも、ぬいぐるみとかって寝るのー??」
これを聞いたことにより、米子も漸く状況を把握できたようだ。
「あ、なんででしょ? 普通に触れますし、フワフワして柔らかいし、気持ちいいですよ?」
米子の興味深い発言によりベニネコとレイカは、タマを撫でたり抱いたり、ぐるぐる回したりと好き放題に弄び始めた。
「ほんとだ、触れるー! なにこれ、超フワフワして気持ちーじゃん!」
「…………(可愛い)です」
「なんだぉ? なんだぉ!? へ、ヘルプ! マスター!!」
ふたりの、やりたい放題にタマもタジタジ。そして涙目で助けを求め連呼するSOS。
「サポーターが実体化するなんて初めてだよ。……なんだか、今日は初めてばかりで頭が痛くなっちまうねぇ。――ふふっ」
リーザは頭を抱えながらも嬉しそうだが、その怖い笑みを浮かべ、自身が初めて知る情報に胸を踊らせる。
「とりあえず、マイコにはサポーターがいれば何とかなりそうだね? しばらくこの部屋を自由にしていいから、この先のことはゆっくり考えるといいよ。あたしも協力するさあね」
現実世界へ帰る事もできない米子。
そんな米子は、このEXで今後暮らして行かねばならない。
リーザの真意は「アイテムを無理に使わせた自分にも責任がある」と、想ってのことだろう。それを察する米子でも、リーザの言葉は嬉しかった。
「すみません、リーザさん。お世話になります」
米子は深く頭を下げ感謝の意を表す。
「世話とか、そんなんじゃないよ。あたしはこの店に、陽の当たるまでしか居られないんだよ。マイコは店番……みたいなもんだねぇ」
「ふふっ。分かりました、このわたくしにお任せを!」
これにより、暫し平穏な空気が訪れる――
――その直後だった。米子が頭を上げると同時に店内の方から聞こえる男性の声。
「あー 店のことすっかり忘れてたね。面倒くさいけど、いくかー」
「あ、それなら部屋とかお世話になりますし、わたしも手伝わせてください!」
「ん? あまりやる事ないけど、それで気がすむっていうなら着いてきな」
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