七千億EXPのレアキャラ ~いらっしゃいませ、どうぞご覧下さいませ~

太陽に弱ぃひと

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【初級者 編】

孤独と固有

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 同日の夜――――

 米子は食事の準備を整え、ひとり淋しく夕食を行う。リーザはこの店の主人とは言え、現実世界での生活もあるのだから常時この店にいるはずもない。

 リーザは現在ログアウト中であり、それと同様にベニネコやレイカも現実世界だ。

 ダイニングの小窓から見えるのは夜景だが、街明かりや夜空を眺めていると、ここが仮想世界とは思えないほどリアルで自然。

 なんとなく自身の頬をつねってみる。

(――あ、痛ッ!)

 今まで感じたことのない痛み。

 プレイヤーだった頃の米子には、この痛みは無かった。風や雨、暖かさ寒さ……など、気候から感じ取れる感覚はプレイヤーにもある。

 痛みが無いからこそ死を恐れず無茶な行動も出来たし、死の直前で思うことはデスペナルティは嫌だなと考える程度であった。

 しかし今では違う。

(――痛みを感じるのなら傷つきたくはない。

 この世界で死を迎えたら、わたしはどうなってしまうのだろう?

 現実世界のわたしと、この世界のわたしは同一人物と言えるのだろうか……)

 米子の脳裏に浮かぶ様々な不安と疑問。
 この脳裏に浮かんだ思いが、本当のことなのかさえ分からなってゆく。

 そして幾ら考えてもその答えなど出て来るはずもなく、淡々と食事を進める。

(けっこう美味しく出来たな、このシチュー。あ、このパンも美味しいや……なんかメロンパン食べたくなってきちゃった)

 この世界での料理は現実世界のように調理して作成するのだが、普段料理をしない米子でも素材や調味料さえ揃えれば、ある程度は好みの食事がつくれる。

 加えて、商人系の職である『料理人』などを取得していれば、高級食材なども扱えるため料理の幅は広くなり、その美味しさも然り。

(あ、今日うちカレーなんだ? お母さんのカレーって美味しいんだよな。こんな事になるなら、お母さんに料理教わっておけば良かった)

 現実世界での米子も只今食事中で、美味しそうにカレーを頬張る姿を感じる。

 そう、”見る”ではなく”感じる”のだ。

 現実世界に起こる出来事は常に感じるのではなく、途切れ途切れに感じ取れるもの。この感覚は思い入れが深い事柄に反応するのだろうか、前回はメロンパンで今回は母親の作ったカレーだった。

 自分以外誰もいない部屋、静寂した空気、孤独感が襲い、瞳にはほんのりと涙が浮かぶ。

(なんか……淋しい、な)
 
 とは思うものの、なぜか大泣きするほどの感情ではない。確かに淋しいとの思いはあるが、その感情に反して溢れるほどの涙は出てこなかった。

 もしかしたら、米子はこの新しい世界観に何かを期待しているのかも。

 思いに耽る米子に足音が聞こえてくる。

 テクテクと――(ポテッ)うん、コケた。
 これにより聞こえた足音は紛れもなくタマだと知れた。
 
 米子は待たずしてタマは姿を現し言う。

「マスター、お店の戸締まりしてきたぉ」

 これをタマから聞いた米子は、タマが店の戸締まりに行っていたことを忘れていた様子で、ふと気づいたように応える。

「あ、そうだった。ありがとう、タマ」

 米子が忘れてしまったのも、タマがあまりにも作業が遅かったから。
 ただ戸締まりをするだけなのに、いったい何処まで行ってきたのかと思えるほど長かった。

「お任せあれ! おいらにかかれば、こんなのチョチョイのチョイだぉ!」

 タマは元気よく腕を振り上げ応えてはいるが、今後は自分で戸締まりをするべきと思う米子。

 このぬいぐるみは身体を動かす作業は苦手なようだ。

 そう確信した米子でも、タマを頼りにしていることは事実。それに現状の淋しさを和らげてくれるのも有り難い。

「あ、タマ。明日フィールドに出て見ようかと思っているんだけど、大丈夫かな? ちょっと怖いな……とか思ってて心配なの。それでも、このままリーザさんのお世話になり続けるわけにもいかないし、自分で生活できるくらいの経験値は稼がないとでしょ?」
「そうだぉ。でも、あまりオススメはできないぉ。今のマスターは、おいらでも倒せるくらい弱いからね」

 米子が現在持っている経験値は【二】残念な戦闘力である。
 この数値は完全にリセット状態であり、ゲームを始めた初期と比べても同等、又はそれ以下。

 それ以下というのは、プレイヤーが選べる高位な種族ではないため、同じヒューマンでもNPCのほうが圧倒的に初期数値は低い。

 だが、クマのぬいぐるみ如きには負けないだろう。

 たまたまだが、宝玉を使用した場所が始まりの街だったこともあり、近郊のモンスターは弱め。それでも単独で狩りを行うのは危険だとタマは予想した。

 それでも、一歩踏み出さなければ先に進むことは出来ないのだ。

「うん、わかってる。けど、頑張らないといけないの。わたしは強くならないとダメなの」 
「マスターも知っての通り、おいらに戦闘はできないぉ? 街ではこの姿を保てるけど、フィールドでは同行することもできないぉ。でも、マスターがどこかの街や村などに行けば、おいらも姿を見せることができるぉ」

 タマの話によるとフィールドには同行できないが、街や村などではタマが自ら姿を現わすことが可能なようだ。可能というよりマスターである米子が何処かしらの街や村などに立ち入れば、タマの意思に左右されることなく、姿が具現化されるとの認識で良いだろう。

「そうなの? それじゃあ街からあまり離れないほうがいいのか……うん、わかった。次の村へ行けるまでは、街はずれとかで経験値稼ぐね」
「それがいいぉ。マスターはプレイヤーじゃないんだから、消えたら終わる。そこを理解して行動しないと、おいらもコマコマ困るぉ。マスターが消えたらおいらも消えてしまうのだから」

「あ、やっぱりタマもなんだ? ふふっ……わたしたち一心同体だね」
「笑い事じゃないぉ! 本当しっかりしてぉネ、マスター!」
「はあいっ!」

 マスターの米子がこの世界の死を迎えた場合、そのサポーターであるタマも消えてしまう。
 タマにとっては重大なことかもしれないが、米子はともに歩む感覚が心地よいとも思えた。

「それでね、タマ。わたしの種族って、? だったと思うんだけど、なんか他の種族と何処が違うのかな?」

「その辺はサポーターのおいらに任せるぉ。マスターが変化したとき、おいらのデータも書き換えられたからね。マスターの種族は特殊だけど、基本的にはヒューマンと変わらないぉ。魔法はプレイヤーのときみたいに使うことが出来るし、その気になれば武器も使用可能だぉ」
「へぇー それなら今まで通り回復でもいいのか。体力は……やっぱドワーフの時より全然少ないね」

 種族は違えど基本的にはヒューマン。
 それさえ分かれば、プレイヤーとして一年培ってきた知識があれば、ある程度の推測はできる。

「他の種族と異なるのは固有スキルだぉ。どのようなスキルが発動するかは、覚えてからじゃないと説明できないけれど……特殊なスキルになるとは思うぉ。固有スキルは種族に左右されるからね」

 固有スキルは使う武器や魔法でも変わるが、種族が最も重要視されている。

 それは魔力の低い種族が魔法系固有スキルを習得した場合、破壊力のあるスキルは覚えられないのだ。更に付け加えれば、魔力の低い種族は魔法系固有スキルを覚え辛く、覚えたとしても弱いスキルにしかならない。

「あ、だから回復特化にしても、なかなか覚えられなかったんだ? ドワーフは魔力低いからなー。それなら気にせず攻撃魔法も使っちゃおっと!」

「ひとりで狩場へ行くなら攻撃は必須だぉ。あと、マスターの種族で固有スキルを習得するには、JK特有のステータスを上げる必要があるぉ」

 流石にサポーターであるタマはこの世界に詳しく、米子の期待以上に大活躍。そして、ついに米子が待ち望んでいた固有スキルの情報に期待感はマックスだ。

(――しゃーッ! キタコレ、なにかな、なにかな? 魔力? あ、もしかしたら器用さとか? うっひょー! テンション上がってきちゃうな本当ッ! タマ……あなた今、最高に輝いてるんだからー!)

 こんなことを脳裏で思い浮かべながら期待感で顔も綻び、タマのことが偉大な学者様と勘違いできるほど冷静ではいられない。

「特有のステータスとかあったかな? まあいいや、そのステータスってなあに?」

 悩み続けること一年間、全く習得出来なかった固有スキルを習得するのは、米子の夢と希望と高鳴る鼓動。

 そしてタマは両手を振り上げ、判然と言った――――



 【それは、女子力を上げるぉ!!】

 

(はい? ナニ言っちゃてルノ、この
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